ビニールマルチを使わない理由と使う理由
<ビニールマルチを使わない理由と使う理由>
控えめにいって、農業界において最大の革命は化成肥料でも、農薬でも、F1種でも、遺伝子組み換えでもなくて「マルチ」だと思う。
よく畑で見かける黒いビニールマルチは特に優れもので栽培に関しては弱点らしいものは全くない。保温や保湿、泥はね防除などなどその効果は多いが特にありがたいのが雑草防除だろう。このおかげで、農家の仕事量は格段に減り、耕作面積を増やし、収量を増やしてくれた。
私が研修した先ではビニールマルチを使う自然栽培家は多かったし大規模かつビジネスとして成り立っている農家は100%使っている。
しかし私はこのビニールマルチを使わない。理由は簡単で1度きりの使い切りであり、ゴミにしかならないから。私は決して石油由来のものに対してアンチではないが、使うからには何度も繰り返し使えて、長く使えるかどうかを大事にしている。
ビニールマルチ栽培では、それができないばかりか綺麗に畑から取り除くことも難しくて、よく作業中にビニールの切れ端が出てくる。また、ゴミとなったビニールマルチは産業廃棄物としてお金を払って捨てなくてはならない。燃やしても毒性物質が出ないと言われているが、野焼きはもちろん家庭ゴミとして処理することは禁止されている。
放っておけば土に還ってくれるなら、きっと積極的に使うだろう。最近は土に帰る有機物マルチも売っているが、高すぎて家庭菜園では手が出せない。
それでは、自然農法家たちはどうしているのか。自然農は草を生やしているイメージがあるが草マルチといって刈った草を畝の上に載せることで雑草が生えすぎないようにしている。これを江戸時代の農書では「草覆い」や「刈敷」と紹介されている。不除草だからと勘違いして、全く草刈りをしないとほとんど育たくなるので要注意。
これはこれで確かに良いのだが、草刈りの労力は決して少なくない。特に夏の草刈りの作業を減らしたいのに、草マルチはあまりその効果がない。だからこそいろんなものを使いこなしてマルチを作ることをオススメしたい。
私は新聞紙や段ボールを積極的に使う。籾殻くん炭や落ち葉堆肥、水墨画の練習で使った和紙も。使うとしても最低限の範囲内で。
たくさん使えば良いというわけでもなく、草が全く生えない状況は天気次第では逆効果だし、畑の循環を止めてしまう。マルチは土中内の水分調整や地温調整の役割もあり、益虫たちの住処にもなる。また、有機物なら分解されることで野菜への追肥効果を生み、来年の栄養分にもなる。
草マルチは来年の野菜となるが、ビニールマルチは産業廃棄物にしかならない。誰かにとってのゴミは誰かにとっての宝物になるのが、この地球の循環だが、ビニールは残念ながらゴミになるとほとんど誰にとっても宝物にならない。
自然栽培家はただビニールマルチを使っているわけではなく、使うからには緑肥や耕耘などで一工夫もふた工夫もしている。それを理解していないと土はどんどん疲弊していってしまう。
マルチがなければ草刈りが多くなるが、自然循環を活かした無農薬無・肥料のメリットを最大限活かせる。逆にマルチを使えば草刈りが少なるが、無農薬・無肥料のメリットがなくなる。
マルチを使うべきかどうか、使うならどんなマルチを使うのか・・・
もうここからは主義や思想ではなく、どれだけ畑に通って草刈りができるか、を考慮して選んでいってほしい。あとは野菜との相性もあるし、季節に応じて使い分けることもあるし、あなたの好みもあるだろう。もちろん、簡単に手に入る資材かどうかも重要だ。