三つの土と質
<三つの土と質>
あなたは絵を描くときに土を何色に塗るだろうか?ほとんどの人が茶色だろう。黒く塗った人はおそらく北海道、東北、関東、九州などの黒ボク土の上に住んでいるだろう。灰色なら水田の近くで、黄色や白に近い色なら西日本の砂質の畑だろう。これはあなたが育った土壌質の違いだ。
しかし、アフリカの子供たちは土を赤く塗り、スウェーデンの子供達は白く塗り、中国の子供達は黄色を塗る。実は世界には大雑把に分類すると十二種類になる。それぞれに色が違いそれぞれに特色がある。土だけで絵を描くことだって可能だ。
日本ではさらに細かく十七種類ほどに分類され、それぞれに適した作物が農学分野で紹介されている。土質の選別は見た目が八割で、あとは匂いと感触で判断できる。
もし農業による経営を考えているなら、栽培する畑の土を正しく見極めて作物を選択し、適した技術を用いることがオススメだ。土の性質に応じて作物を選ぶことは作業量の節約と堆肥の節約につながるため、効率的に生産量を増やすためにはまず土を知ることが必要だ。
しかし、家庭菜園でしかも多種多様な作物を栽培したい場合は最低でも三種類のどれに当てはまるかを理解する必要がある。
日本の農書は出始めた頃は「土の性質」に関する記述がほとんどで「肥料」は少なかっが、時代が下るにつれて土よりも堆肥に関する記述が増えていった。土壌質は変えることができないが、堆肥は人工的な技術で作ることができるため、土の性質を乗り越えることができる。多種多様な作物を育てる家庭菜園では思い切って資材を投入することも考えても良いだろう。だたし一度入れたものは簡単に取り除けないから、その計画には慎重になったほうがよい。
・粘土質
触ってみてネチネチとし、細いこよりが作れる。子供の頃に粘土で遊んだことがある人ならすぐに分かるだろう。赤いことが多いが灰色や青灰色の場合もある。
たいていの田んぼはこの粘土質の土であるように、保水力が高い。そのため野菜は病気になりやすいので気をつけたい。
植物にとって必須な微量元素であるカルシウム、マグネシウム、カリウムなどは水の中で陽イオンとなるが、粘土は陰イオンを帯びており、それらを引きつける。
同じくリン酸は陰イオンを帯びているが、鉄さび粘土や腐食は陰陽どちらのイオンも保つため、リン酸イオンも引きつけることができる。そのため保肥力が高い。
1グラムの粉末粘土の表面積は畳500枚ほどにもなる。
生命の起源の一つの説に粘土の表面説がある。
・砂質
触ってみるとザラザラしていて、こよりが作れない。子供の頃に砂場や砂浜で遊んだことがある人なるすぐに分かるだろう。色は黄砂と呼ばれるものがあるように白から黄色。
排水性が非常に良いおかげで野菜は病気になりづらいが、その分保肥力が低いため積極的な堆肥や緑肥の利用を検討したい。
・壌土質
触ってみるとしっとりとしていて、太いこよりが作れる。
農家たちは山の土と呼ぶ。土壌質は粘土質と砂質の間と考えたらいい。そのため万能で、比較的自然農がしやすい。森林が発達している地域の森林褐色土や東日本に多い(西日本にも一部の地域にはある)黒ボク土がこれに当たる。
田畑の他に大規模な果樹園にも利用されている。
・腐食
相反する二つの性質がある。撥水機能と吸水機能だ。
突然の雨が土の中に染み込まず河川に流れてしまう理由が撥水機能であり、一度見ずに馴染んでしまえばどんどん吸水し、保水するのが吸水機能だ。そして、少しずつ地下へ流していく。それゆえ森林の土は緑のダムと呼ばれる。
腐食の半分は炭素から構成される。
陸上の土壌中に含まれる炭素量は大気中の二酸化炭素の約二倍、植物中に存在する炭素の約三倍になる。腐食を多く含む黒ボク土は炭素を多く含んでいる。
古い腐食は数千年~1万円前の植物の遺体由来のものもある。つまり縄文時代に生きた植物の可能性がある。もしかしたら、縄文人が焼畑のような形で開墾したときに生まれた炭が混ざっている可能背がある。
不思議なことに黒ボク土の腐食は分解され尽くしてしまわないのかはまだ研究者でも説明できない。
・鉱物
理想的な土は飽和%としてカルシウム67%、カリウム2~5%、ナトリウム1%未満である。カルシウムとマグネシウムのバランスが保水・保肥能力を決める要因。植物が健康的に育つためにはカルシウムとカリウムのバランスが重要。
・ph
降水量の少ない草原や砂漠の土は中性からアルカリ性を示すが、森林が発達した地域は雨が多いため、土は酸性になる。日本の土も酸性のことが多い。大気中の二酸化炭素が溶け込んだ雨水のphは5.6で、弱酸性の微炭酸になるからだ。しかし、酸性雨以上に強い力で土を酸性に変えるのが実は植物たち。
ほとんどの野菜はph6.0~6.5の中性を好むが、植物たちは陽イオンを多く吸収するために代わりに水素イオンなどを放出する。さらに微生物は有機物を分解すると酸性物質を放出する。これによって土壌が徐々に酸性によっていく。
phが4~5まで酸性になると、土に含まれる粘土が破壊され、アルミニウムイオンが溶け出してしまう。これが植物に対して毒性を示し、根の成長や養水分の吸収を阻害してしまう。
アルミニウム耐性を持つ植物(小麦、トウモロコシ、サトイモ、大豆、大根など)は根がアルミニウムイオンに接すると根からリンゴ酸やクエン酸、シュウ酸のような有機酸を分泌する。これら有機酸はアルミニウムイオンと結合して、根から吸収されなくなる。またソバは吸収したアルミニウムイオンを葉でシュウ酸との結合物に変えて無毒化する。チャはフェノール物質との結合物を作って無毒化する。そのため、これらの植物は他の植物が成長しづらい酸性土壌でも優勢を保つ。
それ以外の仕組みももちろん備わっていて、土が極端な酸性に寄らないのは昆虫などの動物やシダ植物などがフンや死骸を通して、大地を中性に戻してくれるからだ。もちろん、その過程に微生物たちが関わっている。
酸性度やphの測定はある程度役に立つものの、誤解を招きやすい。バランスのとれた土のphは約6.5だが、それが必ずしもバランスが取れているわけではない。重要なのは生物多様性が育まれていて、栄養バランスが整っていることである。日本ではあまり難しく考える必要はなく、過去に極端な肥料や農薬が使用されていなければ、必ず自然遷移の法則に沿って土はバランスのとれた豊かな団粒構造となる。もし一年目に大きく酸性に傾いているようなら有機石灰や籾殻薫炭を、アルカリ性に傾いているならピートモスなどで調整するもの良いだろう。
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