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2月の生き物 ミミズ


<2月の生き物 ミミズ>

生物学に、いや西洋科学に大きな分岐点を作ったチャールズ・ダーウィンが死ぬ直前に書き上げた大著のタイトルが「ミミズの活動による肥沃土の形成とミミズの習性の観察」だ。
なんとダーウィンは約40年間の観察を元に書き上げたという。そして彼は「地球の最も価値ある動物」と絶賛したほどだ。
そんなミミズの物語を紹介しよう。

ミミズを英語で言うとアースウォームという。「地球の虫」「大地の虫」とでも直訳することができる。
古くは「自然の鍬」、近年では「生態系の技術者」「土の健康のバロメーター」とも称される。

毎年畑を耕したり、自家製の育苗土を準備するたびに
小さな大小様々なミミズが顔を出す。

一言にミミズといっても種類は様々で日本では約100種ほど確認されている。
世界では約7000種も存在し、南米や東南アジアには体調が2m以上のものも、さらに南アフリカには7m近い巨大な身体を持つミミズがいたという記録がある。
村上春樹さんの短編小説「かえるくん地球を救う」に出てくる巨大ミミズももしかしたら実在するのかもしれない。

ミミズが食べているものも様々で、かつミミズを食べる生き物も様々だ。
ミミズコンポストに利用されるミミズはヒメミミズといって、
とても細く小さく赤っぽいのが特徴的だ。

ミミズはたいてい枯葉などの先を掴み、少し離れた巣穴に引きずり込む。するとその穴には全て入り切らないので蓋をするような形となるが、こうして捕食者から身を守りながらむしゃむしゃ食べる。
またミミズは土中内の植物の枯れた根や何かしらで埋もれた植物などを食べて、土を作る。
ミミズは人間でいると腸そのものだ。
ミミズの体内にも人間の腸内と同じように微生物が住んでいて、
彼らによって他の生物がほとんど分解できないセルロース(細胞壁の主成分)を有機酸に分解・消化してくれる。ミミズはその有機酸を吸収してエネルギー源としている。
私たちヒトの腸内に住む細菌もまた同じようにセルロースを分解する。ヒトの腸内とミミズの体内細菌は非常によく似ており、酸素が欠乏した条件で発酵を担う細菌が多い。現代科学において遺伝子レベルで証明されたこの事実を全く知らないはずの古代ギリシャの哲学者アリストレテスはミミズを「大地の腸」と名付けたのだから、すごい。

さらにミミズは粘土も一緒に体内に入れ、
そして、大腸と同じようにせっせとウンチを作って排泄する。
そのウンチがまさに団粒構造の土そのものなのだ。そう黄金の土。
ミミズの毎日はただ食べて、ただ動き回って、ただウンチと尿を出す。
それだけなのだが彼ら無くして現在の高等植物も動物たちも生きられてないのだ。
ダーウィンの調査では1年あたり2mmの土壌がミミズの働きによって作り出されていることを割り出した。1ヘクタールあたり1年で20~40トンの土を耕す。

これはイモムシのような形をした虫はすべて同じだ。
一般的に害虫と呼ばれるアオムシやハバチの幼虫、ネキリムシ、夜盗虫など。
確かに野菜の茎はを食べてしまう意味では害虫だが、最高の団粒構造の土を作ってくれると言う意味では益虫なのだ。
もちろん、どの虫も多すぎると野菜が育たずに死んでしまうのだが。

私たち人間がせっせとあれこれ混ぜたり、切り返したりして土を作らなくても
昆虫たちが少しずつだが、豊かな土を作ってくれる。
自然農はそのお手伝いをしている。

さて、元田んぼを初めて畑にするために開拓をすると、
ヒメミミズとはまるで違ったミミズに遭遇する。

また、長年慣行栽培をしていた畑を改善する際にも
やはり同じようなミミズに遭遇する。

いわゆる硬盤層と呼ばれるグレー色の冷たく硬い層にこのミミズは必ずといっていいほどいる。
この層にはミミズの餌となりそうな植物の根は少ないにも関わらず、だ。
これについては様々な説があるが、この層にいる嫌気性細菌と何かしらの共生関係を結んでいるのではないか、その嫌気性の微生物を餌としている、と考えられている。

さて、近年イノシシが荒らす被害が多発している。
このイノシシは実はこの太いミミズが大好物なのだ。
ヒメミミズのような小さいミミズよりも。

大地の再生でも、自然農でもこの硬盤層を改善するために穴を掘り、
有機物や炭などを入れる。
しかし実は、各所に穴を掘って硬盤層を空気に触れさせるだけでも
数ヶ月もするとこの硬盤層はほぐれ、フィールド全体の水はけを良くしてくれる。

不思議なことに、イノシシが太いミミズを食べるために開けた穴は
この作業とほぼ同じことをしてくれている。

土の中ではどうだろう。
似たようなことをモグラがやっている。
モグラはミミズが増えすぎたところに現れる。
すると、畑の水はけが良くなりすぎて、水不足に陥ることがある。

また、腐葉土など植物性堆肥をたくさん施す畑にはモグラがたくさん住み着き、
そのモグラの穴を利用するネズミが現る。
今度はネズミによる食害がはじまる。

あなたの畑にはいったいどんなミミズが、どのくらい住んでいるだろうか?
ミミズは多すぎても少なすぎても、畑にとっては良くない。

ミミズは「大地からのメッセージを伝える虫」なのだろう。

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