補いと自家製液肥
<補いと自家製液肥>
自然農では肥料の代わりに「補い」といって米ぬかや油粕を利用することがある。しかしあくまでも補いであって、常時するものではない。
補いの考え方は、まだ土ができていない時や野菜の生育が思わしくない時に地力を高めるためだが、初心者はこの見極めが難しく、さらに資材の使い方が分からずに失敗しがちだ。
「自然農は米ぬかを使っても良い」と言って、たくさん撒く人がいるが、そのせいでカビ菌や虫の発生のリスクを高めてしまう。畑に一度入れたものは簡単には抜けない。
米ぬかや油粕を使用する場合は必ず有機物と一緒に利用しよう。直接畑の上にも中にも撒かないようにする。雑草やワラ、落ち葉などをマルチとして利用し、その上にパラパラと固まりにならないように気をつけ、うっすらとかけるだけ。撒くところも自立根圏の際だけにしておこう。それに向かって根が伸びてくれる。根元近くだと腐敗した場合に野菜も一緒に巻き添えにしてしまう可能性が高いからだ。水捌けがもともと悪いところには籾殻薫炭の上に撒くか、混ぜて一緒に使うことでカビ菌発生のリスクを抑えてくれる。
米ぬかなどを利用するのはあくまでも土の養分を補うためであって、米ぬかで育てるためではない。だから有機物の分解を早めて、土着菌を育てるために撒く。雨に溶けた米ぬかが追肥となり、土着菌や虫たちが分解した養分がさらに追肥もしくは団粒構造の土となる。
米ぬかなどは水を含むとべちゃべちゃしてしまうので、乾燥が好きな野菜には4月~5月上旬ごろまでに、水分が好きな野菜には5月下旬ごろまでに使用し、梅雨入り以降に使うのは避けよう。
梅雨は豊富な雨があるから、基本的に補いについては考えなくて良い。それよりも水捌けと通気性を良くすることに意識を集中しておく。
代わりに梅雨明け以降は水が足りなくなる可能性がある。特にキュウリやナスなど実をつけるのに水分が必要な夏野菜にとっては辛い。そこでオススメなのが自家製の液肥だ。
4~5月にかけてヨモギや雑草の新芽を使って仕込む天恵緑汁は韓国の自然農法発祥だ。雑草の新芽に付着する乳酸菌を増やし、カビ菌を食べてくれるばかりか豊富なミネラルとチッソを与えてくれる。また米のとぎ汁で作る乳酸菌液も同様な効果が期待できる。また味噌汁を10倍に薄めるのも簡単にできる。一番手っ取り早いのは米のとぎ汁をそのまま液肥として使うことだろう。パーマカルチャーの実践者たちの中ではコンフリーから作る液肥が簡単で人気がある。また米ぬかや油粕と水、ペットボトルだけでも液肥が簡単に作れる。
これら液肥は根元根圏を外して、自立根圏内に撒くが、葉面散布も即効性が期待できる。
自然農では基本的に液肥を利用することはないが、狭い面積で生産量を増やしたい場合や生育が思わしくない時に使う資材としては、リスクが少なく扱いやすいのでオススメだ。材料となる資材も手に入りやすいし、コツを掴めば簡単に制作できる。ほかの有機質堆肥と違って労力をあまり必要とせずに、持ち運びも容易だ。米のとぎ汁なども捨ててしまうのがもったいないくらいの有効なので、積極的に利用したい。これらの液肥は養分が特に必要な秋冬野菜の葉物類や玉ねぎなどにも有効だ。