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秋冬野菜の定植とマルチの工夫
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<秋冬野菜の定植とマルチの工夫>
はじめて島根県に移住した年に、移住の先輩から「関東から移住した人は冬に精神的に病むよ」と忠告をしてもらったとき、全国各地で暮らしてきた私はタカをくくっていた。
日本海側の冬はどんよりとした天気が続き、週間天気予報には雨と雪マークがびっしりと並ぶ。代わって生まれ故郷の太平洋側(出身地は千葉県)は冬の間は晴れ間が続く。そのギャップに私は忠告どおりに気分が閉ざしていき、つかの間の晴れ間に勢いよく外に出て太陽光を浴びたものだった。
日本の秋冬は夏と違って地域によって気候の違いあるのは太平洋側と日本海側どちらにも住んだ経験があるヒトなら分かるだろう。日本海側は大陸から吹く季節風が温暖な日本海を通るときに湿り、山間部に大量の雪を降らせる。そのため日本海側の山間部の雪はまさに雪国のごとく白銀の世界に変わる。日本海側ではこの時期に布団や布製品がカビてしまうため湿気対策が必須となる。山間部に大量の雪を降らせた季節風は太平洋側に来る頃には乾いた風となり、太平洋側は逆に乾燥対策が必須となる。
これは野菜に取っても同じだ。日本海側では日照時間が少なく、湿りがちとなり、場所によっては雪に埋もれてしまう。そのために冬の間も高畝にして水はけを良くし、限られた太陽光をしっかり受け止めて、マルチを工夫し、寒冷紗やビニールトンネルの設置も検討しても良いだろう。雪が多く降る地域ならソラマメやエンドウ豆などをあまり大きくしすぎないように配慮するか春蒔きにする。
太平洋側では秋冬野菜はよく育つが、放射冷却対策としてマルチを工夫は必須だ。また、東日本や西日本の一部では火山灰土で見られる霜柱の対策も必要となる。一般的に放射冷却対策と同じとなる。
山間地は地域によって湿りがちになるところと乾燥が強くなるところ、雪が多く降るところ降らないところに分かれる。数年も住めば微気候が読めるようになるが、はじめのうちは周りの人たちに話を聞いて、畑の様子を観察しよう。
秋から春にかけては夏の雑草と違って背丈が大きくなるものは少なく、成長スピードも遅いから雑草対策を怠りがちになる。しかし、地下茎で広がる雑草は冬の間にも根が張り、秋冬野菜の自立根圏内に潜む。夏野菜の定植の時と同じように草削りと中耕をしっかり行いたい。
冬の間のマルチとして万能なのが籾殻薫炭マルチと落ち葉マルチである。とくに籾殻は秋に大量に手に入るので、自作するのもオススメだ。ホームセンターで販売されている籾殻薫炭は細かくなりすぎていて土壌改良剤には良いが、マルチとしては使いづらい。自家製なら形を残すことで風に飛ばされない程度の重さでマルチに使いやすくなる。
秋冬野菜にはアルカリ性を好む野菜が多く、籾殻薫炭と相性が良い。灰もアルカリ性だが水を含むとベチャベチャしてしまい、泥はねの心配もある。使用する場合は籾殻薫炭との併用がオススメだ。
落ち葉マルチ使い勝手も良い。広葉樹の落ち葉はこの時期に大量に手に入るし、落ち葉の布団と表現するように寒さ対策にも効く。また雑草抑えも強力で、多くの昆虫と微生物の住処となる。春の初めに山間部の道路を通ると落ち葉の隙間から野草が顔を出している光景をよく目にするだろう。まさにそれを畑で再現するのだ。
自然農では「木は木に返し、草は草に返す」のが基本だが、里山を観察してみると森林と草地のエッジに多様な野草が育っている様子が観察できる。あくまでも師匠の教えは唯一の絶対正解ではなく、ひとつのアイデアであり、お手本は自然そのものだということを忘れないようにしよう。
秋冬野菜の育苗では真夏に始まるため、どうしても専用の育苗施設がないと徒長してしまいやすい。葉物野菜は茎葉を食べるため、栄養分を吸う側根の成長を促し、栄養成長を促すことが重要となる。そこで徒長してしまった胚軸を横植えか斜め植えにして植えてしまおう。徒長していなくても葉落としをして胚軸部分を埋めてしまうのがオススメだ。深さはトマトやサツマイモの定植の時のように、畑の状態に合わせて選ぶ。
アブラナ科は菌根菌との共生をしない植物の進化の最先端を行く植物だ。彼らは根から多くの有機酸を出して、土壌内のミネラル分を溶かして吸い上げる。そのため微生物の活動が弱まる寒い季節でも成長することができるし、貧相な土でもよく育つ。アブラナ科野菜がよく栽培される地域がヨーロッパや中国内陸部であることを考えると納得がいく。
アブラナ科野菜を野菜マルチとして利用するのもオススメだ。メインの作物の成長に合わせて間引いていくことで空間時間の隙間を埋めることができる。また二十日大根のように短い期間で育つ野菜を利用すれば、春や秋の端境期にも収穫を増やすことができる。
ルッコラやカラシナは害虫除けにもなるので夏野菜の近くで栽培するとコンパニピンプランツにもなる。ダイコンはセンチュウを引きつけてくれるので、輪作として積極的に利用したい。またアブラナ科植物の葉にはセンチュウ除けの成分が含まれているので土中内にすき込むこともできる。もしセンチュウの被害があった場合は次の作物の栽培3~4週間前までに行いたい。
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