【読書感想文】「日本消滅」がトレンドワードになる時代の名著『世界少子化考 子供が増えれば幸せなのか』(毎日新聞出版)
「放っておいても子は育つ」
そう言う人は、おそらく子育てをしていない。
手塩にかけ、金をかけ、そのための金を稼いで、手間と愛をかけられないなら外で稼いだ金より安い金で外部に委託して、やっと子が育つ社会を生きている。
現代社会では、子どもを「ちゃんとした大人」に育てるためのコストと労力が増大し、親の肩に重くのしかかる。
子どもの笑顔を見る瞬間はきっととびきり幸せだろうけど、結婚にも育児にも年をとるにもコストがかかるし、教育資金のほかに老後の資金が2000万円だの3000万円だのあおられたら、キャリアプランを考えると不安な要素が多すぎる。ハードな将来を一緒に生きるための人生計画がピッタリと合致するパートナーなんてなかなか見つからないから結婚のハードルもあがる。
ゆえに少子化は止まらない。
日本だけでなく、韓国や中国ではさらなるスピードで少子化が加速している。
『世界少子化考 子供が増えれば幸せなのか』(毎日新聞取材班)は、そんな「少子化」を多角的に見つめる稀有な本だった。
東アジアの状況だけでなく、日本で育児する者にとって「理想」とされるような国が抱える問題に迫り、「地球環境」の観点からも少子化や人口増加について掘り下げる。
しばしば、育児を妻に全て任せきっているような国内外の政治家や、SNSの会社を”買収する・しないゲーム“をしているように見える海外の大金持ちは、少子化を「国家消滅の危機」のように扱う。
でも、本当に少子化って問題?
果たして、結婚適齢期の男女だけのこと?
育児前・育児中・育児後の「充実した人生」って地続きじゃないの?
で、結局、少子化っていいこと?悪いこと?
どの問題にも明確な正解はないし、「正しい」「正しくない」の持論は、いずれも極論になる。
1人1人が熟考して“論破”せずに耳を傾け合って、極論との折り合いをつけていく必要があるのかもしれない。