【日本特撮ドラマ】ラブコメオタクが「ゼンカイジャー」にハマった明解な理由
世界中に感染症が広がってから、社会派ドキュメンタリーやサスペンスを見られなくなった。
新聞の社会欄の文字が涙でゆがみ、ラジオニュースで鼻の奥がツンとし、ノンフィクションを読んでむせび泣くくらいに知覚過敏に陥った心は、視覚から入ってくる苦しい情報を制限するようになってしまったのだ。
かくして2020年、私はラブコメマニアとなった。
日本、韓国、中国、タイ、アメリカ、ブラジル……。いろんな国のラブコメに触れ、それぞれの国のお決まりの「型」に安心感を覚えた。祖母や曾祖母が『水戸黄門』や『三匹を斬る!』を好んでいた理由がわかった気がする。日常は先が読めないから、せめて先が読めるものに触れていたい。
そんな日々を送る中、ラブコメマニアのもとに突如降ってきた「様式美コンテンツ」がある。
日曜朝、テレビ朝日で放送されている『機界戦隊 ゼンカイジャー』だ。
■平和な様式美「ゼンカイジャー」
戦隊の45周年の記念コンテンツは、毎週が祭りのよう。
「全力全開」が口癖の底抜けに明るい主人公と、「ヨホホイーイ」と踊る海賊と、キャラ立ちしたロボットたちが、マドンナ役のおばあちゃんが営む駄菓子店でワチャワチャやっている。
週替わりの敵は決まっておっちょこちょいで愛嬌があって、爆破するときにヘンな断末魔を絶叫して消えていく。
9時30分にスタートしたら9時33分頃に事件が起こって、9時50分頃に必殺技で敵を倒す。最強ロボで9時54分頃に巨大化した敵を爆破して大団円……という展開は「安全安心」の一語に尽きる。
敵と戦わずに延々バカンスを楽しんで終わる回もあったが、いつもたくさんの笑いを置き土産としておいていってくれる。
癒しと笑いだけを残してくれる戦隊なんて、これまでなかったかもしれない。
■過去作品とは異なる点も…
さらに付け加えると、今回の戦隊は性別役割的な視点から見てもいつもとちょっと様相が違う。
ざっとあげると以下のような点だ。
※主人公の「父ちゃん」と「母ちゃん」は2人とも学者
※登場人物がみんなで仲良く料理をして掃除をしている
※マドンナ役はおばあちゃん
※メインの敵は超絶美人(性別は男)
※社会の中でロボットと人間が役割を分かたずに共存している
これまでミニスカートやホットパンツを履いた若い女性の露出で一部の視聴者を“釣る”演出に違和感を覚えていたので、今回の戦隊はエポックメイキングだと思う。
というわけで、私はゼンカイジャーにハマり、オープニングダンスを完全暗記した(今年の踊りは例年より難しい)。「♪ヨホホイ、ヨホホイ」と歌いながら家事をしている。雑誌『てれびくん』を買って、子どもに全力全開で寝る前の読み聞かせもしている。
■シアターGロッソで「素顔の戦士」を見る
そんなふうにゼンカイジャーへの思いが募り、先日とうとう「ツーカイザー(海賊)」推しの息子を連れ、シアターGロッソに足を運んだ。
「子どものために」と言いながら、「自分のために」が90%だったと言っても過言ではない。出演の俳優たちがアクションをする希少な舞台「素顔の戦士」を見たかったのだ。
舞台の感想。
ぎゃー、かっこいい。
アクション、迫力すげえ
ステイシー君(悪役)が好きすぎる!
こんな感想を心の中で100回くらいぐるぐると繰り返しながら、心の中でギャーギャーと黄色い声援を送り、全力全開で拍手をした。
息子は敵が出てくると体を硬直させていたが、同じく全力で拍手していた。
「親子で戦隊好き」という条件がそろうと、親と子にとってこんなに「win-win」のコンテンツがあるなんて……!
この2年、地域の祭りが消え、イベントが消え、「ハレとケ」の境目がなくなっていたが、この日は私にとっては間違いなく「ハレの日」だった。
ハレの日があると、日常が一気に豊かになる。
いずれ、この平和な祭りコンテンツに最終回が訪れると思うと寂しくて仕方ないが、引き続き全力全開で視聴していこうと思う。
エンディングで悪役(ステイシー君)に悲劇が訪れたら私はたぶん泣くので、最後はみんな仲間になって欲しいと勝手に祈っている。