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有事に備える危機心理&マインド強化

前提条件

喫緊のリスク

世界的に先行き不透明感が高まっている。

特に日本に住む身として気になることは、地震等の自然災害、そして台湾有事だろう。
少なくとも私はそれらを最も心配している。

もちろん自然災害は昔から常々心配されていることであり、実際起こってきたことである。そのため、今更感もあるかもしれない。ただし、寺田寅彦が言うように「天災は忘れたころにやってくる」ものであるから、本当に警戒しておかなければならない。

もう一つ重要なのが台湾有事である。これは別のnoteで詳述するかもしれないが、中国が実際に実行に移すかは別にして実際に計画が存在しているのは間違いないし、ひとたび発生すれば自衛隊の参加が不可避になる公算が高いといえる。
また、米軍にしても日本の基地を拠点とすることになり、必然的に日本本土にも戦火が及ぶ可能性が高い。

現状の問題点

さて、これらを前にして、私たちはもう少し強くなる必要がある。少なくとも、今のままでは大変なことになる。

強くなるというのは、別に物理兵器をもっと買えとか、改憲しろという意味ではない。政府は適切な行動をとる用意をする必要があるし、私たちもそれに備えた知識を身に着け、マインドを強化する必要があるということだ。

前提として、多くの日本人には従順な傾向がある。出た杭は打たれる、そんな言い方があるが、基本的に同調圧力と事なかれ主義の中で生きることを良しとしている。この傾向は平時にはある程度有効かもしれない、しかしひとたび有事など危機的状況に陥ると集団的パニックを起こし自滅のようなことになってしまいかねないともいえる。

危機状態における心理

危機状態のモード

さて、本題である危機状態における心理について述べよう。

危機的状況においては、人間の心理は Fight or Flight(闘うか、逃げるか)モードになることがよく知られている。単純に言えば、論理的思考能力が下がり、瞬時に本能的に行動できるモードになるということである。

例えば、野生動物に襲われそうになった時の私たちの先祖は、論理的に考えるより早く逃げ出しただろう。そうでなければ、逃げ遅れてしまい子孫を残せなかったはずだ。したがって現代人も危機状況下では自動的にこのモードに入ることになる。

このモードの問題点は一言でいえば論理的に思考できなくなることによる二次的被害を生む可能性があるということだ。関東大震災ではデマが流布して亡くなった方が多くいたし、東日本大震災では花粉を放射線と勘違いしてパニックになる人が出た。

CDCの知見

アメリカのCDC(疾病管理予防センター)は以前から、Psychology of a Crisisとして、危機自体における心理とコミュニケーションについて研究し情報発信してきた。基本的には、感染症対策中心の有事に対する考え方だが、その他の有事にも十分適応できるガイドラインが作成されている。

その最新版(2019年版)がこれだ。翻訳機にかけてでも、是非一読をお願いしたい。

これに基づくと、危機の時の人間は、不確実性、恐怖、不安に支配された心理状態になるといえる。また、現実を否定したくなることもありうる。
このような心理状態から何か特効薬となるような情報を探したり、ネガティブな状況を何度も自分の中で想像してしまったり、○○が悪いといったスティグマ(差別や偏見)にとらわれた行動をとることになる。無意味な反復行動をとることもある。

このようにネガティブな感情は有害な行動につながりうることがあるので、適切な発信を公的な機関が行うことは大切だとされる。

リスクコミュニケーションの重要性

その際は、リスクコミュニケーションの概念が重要だ。
リスクコミュニケーションが専門のPeter M. Sandman博士は、リスクについて次のように定式化した。

Risk = Hazard + Outrage (リスク = 物理的被害 + 精神的恐怖)

このOutrageの側面を無視してはならない、ということが大切である。物理的被害の発生はもちろん、リスクの大きな問題だ。しかし恐怖が必要以上に状況を悪化させ、さらにリスクを増大させることがある。したがって適切に情報提供を行っていくことが欠かせないのである。

まず原則として恐怖の存在を認め、祈り(願い)を表明し、人々にやることを与え、不幸をともに悲しみつつ、未来に向けてガイドしていくような情報提供が望ましい。

そして危機的状況のさなかにあっては先に述べたような心理状態にあるため、私たちは、メッセージをシンプルに解釈しがちであり(論理的思考が低下するため)、現在の思い込みにしがみつきがちであり、最初に受けたメッセージを信じがちである。また、常に追加の情報を欲している。

これに応え、シンプルで信頼性が高い情報を迅速に出し、その後も一貫性をもって情報提供していく必要がある。

その際には、不確実性の存在を認め、今わかっていること、わかっていないこと、今わからないことをわかるためにどのような取り組みを行っているかということを伝えることも重要である。

こういったコミュニケーションにより、不確実性、恐怖、不安に支配された心理状態、現実を否定したくなるような心理状態にある人々に、パニックや恐怖が引き起こす二次的被害を起こさせない、むしろ速やかな問題解決につなげていくことにつなげていくことが可能になるのである。

ただ、今の日本ではこのような適切な情報提供は望み薄だ。東日本大震災の際は、政府はメルトダウンの事実を早期に把握しながらなかなか情報提供を行わなかった。東京電力も含め、被害を矮小化しようとする方向に働きかけていた。もちろん、現場で死を覚悟しながら働いた方もいたが、上層部は基本的に事なかれ主義を堅持した。「想定外」を繰り返し、責任を負わない姿はリスクコミュニケーションとしては最悪である。

「想定外」の繰り返しは論外だが、「問題ありません」という繰り返しも逆に不安を増大させる。先ほど述べたように不確実性は正直に認めつつ、感情に配慮しながら、信頼できる情報を提供していくことがなによりも重要なのだ。

だが、日本におけるこのような風土は、現在でも変わっておらず結果的に危機的状況において公的機関が適切なリスクコミュニケーションをとるのは難しいと考えられる。

個人ができること

思考に自覚的になる

公的機関、発信があてにならないことを前提とすれば、各個人は不確実性や不安の中で適切な行動をとる必要がある。

有事の際にはまず、上記のような心理状態に自分や多くの他人があるということを認識することが大切だ。五感として、ネガティブな感情が湧いてくることだろう。

その際に自分の思考に自覚的になることが大切となる。メタ認知ともいえるが、
「「「何かを考える自分」を見て考える自分」を見て考える自分」
のように、階層を増やしていくということである。

思考そのものを再帰的に思考していくことで、単純な目の前の現実に感情を動かされ、状況悪化に繋がる行動を抑制できる。

抽象度を上げる

私のnoteでいつも書いていることだが、抽象度を上げることも重要である。再帰的な思考を行いつつ抽象度を上げていくことができれば、かなりレジリエンスが向上するといえる。

戦争的な意味での有事(特に台湾有事が日本のリスク)において、特に重要なのは、基本すべてが金のためだという事実である。

戦争というのは基本的に国家と国家の間で起こるものだが、その背後には確実にビジネスの要素が入ってくる。背後には様々な思惑がうごめいているものだが、それが国家の利益のためなどということは基本的にない。

あるとすれば、国家の利益を建前に、自分たちが儲かるために戦争を仕掛けている側が必ず存在するということだ。そうでなければ、どうしてわざわざ戦争を起こす必要があるのだろう?明らかに双方の国家に対してダメージがあることを起こす必要はないのだ。

簡単に言えば、個人の利害関係の追求が集団的に様々な作用を起こして結果的に戦争につながっているのだ。

だから、まず考えることは金のためでこんなことを起こすなんて阿保だな。と冷めた目で見つめることだ。

これが抽象度の高い思考の一つである。相手国の国民も含めて、扇動されているのだな、可哀そうだな、位の思考はできていた方がよいだろう。

もちろん一市民に止めるすべはないのだから、努めて冷静に危険地帯から離れるなどの行動を冷静にとるほかない。その際の思考は常に、理性的・論理的であることはマストである。

既に述べた通り、不安定な心理状態であることに無自覚であって、焦って扇情的な言動をしたり、デマに加担したりといったことはより状況を悪化させるということが懸念されるのだから、一人一人がそうしないという意識。そして、身の回りの人にそのことを周知徹底していく草の根的な活動が非常に重要となるのだ。

マインドの強化

最後に、冒頭に書いたマインドの強化ということについて考えてみる。

実はこの表現ではある意味で的確ではないかもしれない。なぜなら、マインド=心というのは実体があるものというよりはむしろ、動的な現象そのものといえるからだ。

すなわち、物理現象的に記述するのであれば、心理状態とは、脳のネットワーク構造とその時点での活性化状態に依存する。だから、マインドそのものを強化するというのは、実体のない現象そのものを強化するということで、それは意味をなさない。

今回の意味合いにおいては、「有事の際も脳内状態を平時と同じような活性化状態に保ち、理性的思考を行えるようにする」という定義が適当と考える。

ここまで思考に自覚的になり、抽象度を上げることについて述べてきたが、基本的にはこれがマインドの強化である。なぜなら、理性的、論理的思考それ自体が、脳をFight or Flightモードから取り戻すきっかけになるからだ(前頭前野側から大脳辺縁系の介入である)。

とはいえ、私たちも動物であり、より本能的に近い側面をもっている。したがって、上記のことを意識しようとしても、危機事態ではどうしても冷静になれないこともあるかもしれない。

そこで、それを抑え込むためのマインド強化法について一つ述べる。それは身体を大きくすることだ。といっても、情報的に、だが。

例えば、巨大ロボットの運転席に座ったイメージだ。そしてその巨大ロボットが自分の身体と一体化している感覚を味わうことだ。空想世界の話のようだが、これは本当だ。できるならば、これを瞑想のように行うとよい。

いきなり巨大化は難しいので、少しづつ服を厚着して身体が大きくなっていくイメージをしてみる、不思議の国のアリス的な感じでもよい。大きくなってくると、タワーに上ったような景色が見えてくるような感覚だ。

このイメージをすぐに取り出せるように熟達するまで訓練すれば、それがきっかけとなってマインドを強化した状態になることができる。これは一つのやり方に過ぎないが、最後は体感的に自分を強化することがマインドの強化につながっていくということだ。今回紹介した情報は一例であり、今後他の方法論も紹介していくかもしれない。NLP(Neuro Linguisitic Programing=神経言語プログラミング)的方法論や東洋の気を利用したような方法論もいろいろとありうる。ここについて重要なことは、科学的か否かというより、体感的に強くなることとそれによりもたらせる確信である。

論理的思考を保つ、そのための基盤として本能的・体感的なところにまで働きかけてゆくのが、本当に有事の際にも、危機状態における心理を克服し、適切な行動をとるために大切であるということを最後に記しておく。

このような知識を持った個人が増え、それを身の回りの人に草の根的に伝えていくことが、私たちのできる一番の備えなのだと考える。


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