男の一人旅 高雄・台南・屏東🇹🇼編③
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台湾3日目は、高雄から少し足を伸ばして台南へ行ってみることにした。
朝食:果貿來來豆漿
まずは朝食である。台南に移動するのに少し時間がかかるので、朝食は高雄で取ることにした。
前日に行った興隆居のすぐ近くに、同じく朝食で人気の果貿來來豆漿という店があり、この日はここにすることにした。
このお店も毎日行列が出来ており、地元の人に愛されているのが分かる。
これといった名物が分からなかったので、高麗菜煎包、肉包、甜燒餅の3種類をセレクト。
高麗菜煎包は、具がぎっしり詰まっており、ニラやキャベツがシャキシャキして美味しい。また、現地特有の臭みが鼻に抜ける感じがあって、これも最高だった。
肉包はあまり記憶がないので割愛するが、普通に美味しかった。
甜燒餅はよくわからず手に取ったのだが、パイの中に甘くない餡と甘い砂糖が入っていて、日本でも食べたことのある京都のお菓子みたいな感じだった。どちらかというと、朝食というよりかはおやつに近い。そんな味だった。
高雄駅〜台南駅まで
朝食を済ませ、台湾鉄道高雄駅まで歩くことにした。
高雄駅に着くと、未だ大規模な工事をしているようで、都市開発も行われていそうな雰囲気である。
特に切符については考えもせず、EASY CARD を読み取り機にタッチすると改札が空いたので、そのまま通過した。最初、読み取り機の位置が分からず、あたふたしたのだが、前明石市長の泉房穂さんみたいな駅員さんに助けてもらった。
Google map によると Limited Express で約一時間とのことで、指示通りの電車に乗り込み、空いている席に腰掛けた。
僕は Limited Express を日本でいうところの新快速だと思っていた。なぜなら、台湾版新幹線はまた別にあるからである。なので、途中駅員が切符の確認をすることもなかったし、特に Reseved の表示もなかったので、僕は景色を楽しんでいた。
電車が間もなく台南に到着しようという頃、後ろから背の高い男性に声をかけられ、「そこ、僕の席なんで退いてくれませんか」と言われた。
僕は拍子抜けしつつ、やはりここは指定席だったのだなと思い、すぐに席を退き、残り10分くらいを車間の隙間で立って過ごした。
台南に到着すると、高雄とは都会のレベルが一つ上がった感じがして、人の数も交通量も増えた印象がある。また、高雄では滅多に見なかった欧米人がちらほらいた。
吳園藝文中心(Tainan Wu Garden)
そのまま歩いて、吳園藝文中心という庭園に向かった。
ここは台南の大商人、吳尚新が清代末期に建設した庭園で、池や亭台、築山が美しい調和となって、まるでビルの間のオアシスといった趣の場所のようである。
僕はここで、朝食を食べ過ぎたせいか、強烈な便意に襲われる。
タイのチェンマイでも強烈な便意に襲われたが、台湾も公衆便所がほとんどない。
息も絶え絶えで、入り口のおばちゃんに Google 翻訳したスマホを見せ、トイレの場所を聞く。すると、思いっきりの中国語で何を言っているのかさっぱり分からないまま、指さされた方角へ行く。しかし、すぐには見つからず、再度近くにいたおばちゃんに尋ねると、ようやくトイレを発見することができた。そして、間一髪事足りた。
赤崁樓(Chikan Tower)
続いて、赤崁樓に行った。入場料 70NTD。
赤崁樓は元は 1653年にオランダ人によって建てられた城で、プロビンシャ城と呼ばれていた。1662年にオランダを駆逐した鄭成功は、この城を承天府と改名し、統治の中心とした。その後、地震で楼閣が全壊するなど、移り変わる政権による改築や取り壊しを経て、今の姿になった模様。
番外編
臺南市美術館二館(Tainan Art Museum Building 2)
臺南市美術館二館は、台湾初の地方行政法人美術館。劇場も入る白い大きな建物は、展示室を互い違いに積み重ねるように設計され、上空から見ると、台南のシンボルでもある鳳凰花をイメージした五角形になっているらしい。
早速、中に入ってみると、入場ゲートというかチケットを購入する場所がない。受付の方に聞いてみると、料金はフリーと言われてしまい驚いてしまった。おそらく、何か特別な日だったに違いない。ラッキーである。
臺南市美術館二館は、絵画中心というよりかは、オブジェや現代アートが多かった。特に、将来に向けていかに持続的な地球を維持できるかというテーマに沿って、環境を意識した展示が目立った印象がある。個人的に非常に面白かった。
安平古堡(Anping Old Fort)
臺南市美術館二館を後にし、バスで安平という港町を訪れた。町の歴史は古く、17世紀にオランダ人が上陸し開拓された町で、いわば台南発祥の地と言われているらしい。
まず、オランダ人が建てた城堡の跡である安平古堡に行った。
安平は観光名所として有名なので、地元の小学生や欧米人がめちゃくちゃいた。
安平樹屋
安平古堡を出た後、どこかで昼食を取ろうと思いプラプラ歩いたが、一向に店を見つけることができず、結局コンビニでウイダーインゼリーを購入し 10秒チャージした。
安平古堡の近くには、安平樹屋という長い年月を経てガジュマルの木に覆い尽くされた倉庫がある。続いて、ここに行くことにした。入場料 70NTD。
安平古堡の人の多さに比べ、安平樹屋はほとんど人もおらず快適だった。あまり大した期待もしていなかったのだが、ガジュマルが建物を覆う迫力とその根の伸び方が美しく、途方もない年月の経過が感じられ、来て良かったなと思う場所だった。
また、無数の鳥が木に止まっており、その鳴き声に耳を澄ませながら、ベンチで休憩するには最高の場所だった。実際、ここで30分ほどゆっくりすることができた。
おみやげ:林百貨
再びバスに乗り込み、林百貨というデパートに向かった。林百貨は日本統治時代に営業していたデパート「ハヤシ百貨」を再現したショッピングセンターであり、第二次世界大戦中に閉店後、70年の時を経て2014年に再オープンを果たした模様。
林百貨に来た理由は、家族からお茶とドライフルーツを買ってきて欲しいと頼まれていたからである。
1階は台南の特産品売り場となっており、おみやげを買うには便利な場所である。
わけも分からぬまま商品棚を2周ほど眺めたが、結局直感を信じて下記画像のお茶とドライフルーツを2種類ずつ購入した。
帰国後、早速実食してみると、蕎麦茶に関しては飲んだことある蕎麦茶の域を超えなかったが美味しかった。
一方、龍眼花茶は今までに飲んだことない甘い味で新鮮だった。調べると、龍眼花茶はライチに似た果物である龍眼の果肉や花をお茶にしたもので、リラックス効果、疲労回復、美肌効果などもあるらしい。
僕はかなりお茶が好きなので、お茶分野を深掘りするのも面白いなと感じた。
散歩(林百貨→花園夜市)
お腹も空いてきたので、花園夜市という大きなナイトマーケットに行くことにした。林百貨からはかなり距離があるのだが、バスが来そうもなかったので歩くことにした。
台南の街を歩いていると、高雄でもそうだったが、歩道に段差が異様なほどある。店の敷居という意味なのか、でこぼこした地形なのか、それとも均す技術がないのか、真相はいかに。
また、高雄にはなかった金銀白金を扱う店がものすごく多かった。台南には富裕層が多いのかもしれない。
花園夜市(Tainan Garden Night Market)
30分くらい歩いて、ようやく花園夜市に到着した。花園夜市はかなり敷地面積が広く、車で来場する人がいるくらい大規模なナイトマーケットだった。
基本的には飲食物がメインだが、衣料品が売られていたり、スマートボールのようなゲームもできる様子だった。
テーブルや椅子もかなりの数が準備されており、家族連れでもゆっくり食事を楽しむことができそうだった。
巡回しながら、適当に美味しそうなものに目星をつけ、まずは豚の串焼きを食べた。ねぎまが最後にチョロっとしか入っていなかったのが残念だったが、味は普通にいけた。
続いて、屋台で牡蠣をオムレツに包んだようなものを焼いているおっちゃんに目が行った。何かは分からなかったが、明らかに美味しそうだったので、一つ注文し席についた。
調べると、台湾南部で人気のある「蚵仔煎(オアジェン)」という料理で、小さな牡蠣と卵、そしてサツマイモ粉(あるいはタピオカ粉)を混ぜて、鉄板の上で焼き上げたものようだった。
食べてみると、もちっとした生地の食感が前面に出てきて、その中からキャベツやもやしなどのシャキッとした食感もある。牡蠣も旨味があるのだが、たっぷりかかった甘辛ソースが食欲をそそり、平易な言葉で言うと絶妙なハーモニーを成していた。これは、かなり美味しかった。
その隣の屋台では、おっちゃんの息子と思われる青年が牛肉湯を売っていたのだが、暑さもあってか全然お客さんが寄り付いていなかったので、一つ注文した。
牛肉湯は、その名の通り牛肉を熱湯にさっとくぐらせるだけのシンプルなスープなのだが、これがやけに美味しい。肉も硬いものを予想していたのだが、意外と柔らかく、スープ自体も薄味ではなく、しっかりダシが出ていた。台湾料理おそるべし。
神農街(Shennong Street)
再び台南駅に向かって歩き始めた途中に、神農街という場所があったので寄ることにした。神農街は清代の面影が残る約300mの小路で、そのレトロで絵になる街並みから人気撮影スポットになっている。
それらしい写真は何枚か撮れたが、僕個人としては特に何とも思わなかったので、すぐさま台南駅に向かった。
帰りの電車にて
再び歩き出し、また30分くらいかけてようやく台南駅に到着した。
台南駅でも特に切符のことは気にせず、行きと同様に EASY CARD で改札を通過し、Google map の指示通りに Limited Express に乗車した。
乗車したのはいいものの、やはり自由席が見つからず、車内をうろうろしていると駅員さんがこちらに向かって歩いてきたので、Google 翻訳で「自由席はどこか?」と聞いた。
すると、50代くらいのおっちゃんの駅員さんの顔が途端に険しくなり、「この列車に自由席はない!全て指定席だ!チケットはどうしたんだ!」と強めに言われた。
僕は EASY CARD で乗車したことを告げると、おっちゃんが「それで乗車はできない!」とみるみる顔が怒っていく。
僕は謝りながら、ここで切符が買えないかと交渉すると、おっちゃんが「買えるは買えるが、ものすごく高いぞ?いいのか?」と聞いてくるので、高額な罰金を支払わされることも覚悟で料金を尋ねると、通常の 106NTD に加えて、53NTD 追加された 159NTD(約800円)と合計金額自体は安かった。
なぜ、おっちゃんが怒っていたのかは不明だが、おそらく僕のような EASY CARD だけで安く不正に乗る人が多く、僕もそういう奴だと思われたのかもしれない。
おっちゃんは、僕が切符を購入する意思があると分かると途端に優しくなり、「日本人なのか、ようこそ台湾へ」とか「実は台湾人もこのシステムを理解していない人が多いんだ」とかざっくばらんに話し始めた。
そこから 10分くらい談笑した後、「高雄駅で EASY CARD はタッチせず、レシートとカードを駅員に見せて処理してもらってくれ」と言われ別れたのだが、追加料金を払ったのにも関わらず、僕が購入した切符は指定席ではなかったことに笑ってしまった。
最後におっちゃんは「空いている席に座って、後から人が来たら退いて、また別の席に座って高雄まで行け」と言い残して去っていった。
夕食:南豐魯肉飯
切符のトラブルに見舞われながらも、何とか高雄駅に到着し、若い青年の駅員さんにカードの処理をしてもらい、改札を通過することができた。
ホテルに戻ると、午後9時くらいだったと思うが、お腹が空いたので、南豐魯肉飯という行きの飛行機で知り合った兄ちゃんが教えてくれた店に行くことにした。
もう歩くのはしんどかったので、バスを使ってスイスイと移動すると、遅い時間にも関わらず賑わっていたので驚いた。
席に着くと注文用紙があったので、魯肉飯(ルーローファン)と竹筍湯のところに記入し、入り口のおばちゃんの方へ行くと、指で指示されながら「こっちへまわれ」と言われた。
指示通りにあちら側に行くと、中国語で何かを要求されているが全く分からなかったので呆然としていると、ちょっと英語が話せるおばちゃんが登場し、「テーブルナンバー」と言われ理解した。
僕はこの時、たとえ外国人に対しても母国語で遠慮なく話して大丈夫なんだなと気づいた。台湾人はほとんど中国語でしか話してこないし、全く怖気づいていなかった。
僕も彼らを習って、ガンガン日本語で主張しようと思う。
注文後、10分も待たずに魯肉飯と竹筍湯が運ばれてきた。竹筍湯は文字通り、たけのこスープだったのだが、白身魚の肉団子が入っていた。スープの味はというと、コーンの芯を煮詰めたような甘いダシが出ていて、これが予想外に美味しかった。
また、待ちに待った魯肉飯の方は、ほろほろの豚が食欲をそそる甘辛ソースで煮込まれていて美味かったのだが、それに加えて現地臭のような臭み、店の適当さ、雑さがスパイスになっているような気がして、ここでしか出せない味になっているような気がした。
あくまで持論だが、綺麗すぎる店には個性がなく、汚い方が長年蓄積した残り滓がエッセンスとして効いてくるような気がするのである。何かそういう味を感じた。
また、店内を見回すとファンがたくさんいるような感じがした。食べ物屋さんに限らないが、人は何かを推したい生き物であるし、それがリピーターなのである。
この小さなファンを作るには、時間がかかる。
この世の全ては、丁寧に真摯にゆっくりと時間をかけることで上手くいくようになっているのではないか、そう感じた台湾 3日目の夜だった。
つづく