男の一人旅 高雄・台南・屏東🇹🇼編④
5719文字
台湾4日目は、高雄に隣接する屏東県の屏東駅周辺を訪れた。
朝食:興隆居(Xing Long Ju)
まずは朝食であるが、2日目と同様に興隆居に行くことにした。2日目には名物の湯包しか買わなかったので、今度は別のものを食べてみることにした。
割包は、豚の角煮や高菜の漬物などを白い蒸しパンのような「包(バオ)」に挟んだ食べ物。2日目に食べた湯包とはまた違ったもっちり食感があり、甘辛く煮込まれた豚肉と高菜の塩味がバランスよくマッチしていて美味しかった。台湾風のハンバーガーのような位置付けなのかなと勝手に感じた。
潤餅は、パリパリのクロワッサン風バターなしバンズに、もやし、薄くスライスしたリンゴやきゅうりを挟んだ食べ物。口に入れると、パリパリしたパイのような食感、シャキシャキした野菜の食感が連続し、野菜にかけられたドレッシングも相まって全体的にはさっぱりした味付けだった。個人的に不味くはないが、味付けが薄く物足りない印象だった。
レジに並ぶと、ドリンクも売っていたので手を出してみた。半糖という文字に下線が入ったドリンクは、豆乳ドリンクだった。豆乳といえば、たいてい豆のエグ味や雑味が気になるところだが、ここの豆乳は飲みやすく、湯包やパンなどと相性が良いように感じた。また、半糖なので程よく甘味もあって美味しい。
屏東駅
台湾鉄道高雄駅に到着すると、前日の失敗は二度としまいと、窓口のお姉さんに EASY CARD のみで屏東駅まで行けるか尋ねた。すると、時刻表を少し確認した後、行けるとの回答をもらえたので、そのまま改札を通過した。
駅のホームで待っていると、Limited Express とは明らかに座席が違うローカルな電車がやって来たので、安心して高雄駅を出発することができた。
車内で珍しく車両間を移動しようとしたのだが、扉がびくともしなかったので、一度は諦めたものの、近くのおばちゃんが親切にも扉の開け方を教えてくれる一幕があった。扉が開かなかった理由は、単純に扉がすこぶる重かっただけだった。
屏東駅に到着すると、駅内は日本の駅に似て、清潔な感じの様子だった。また、人もちらほらいて、大きくはないが小さくもなくという印象を受けた。
駅前に出ると、小雨が降り始めた。しばらく止みそうもなかったので、折り畳み傘を差し、勝利星村(勝利區)という観光名所に向かった。
駅前は高雄よりも一段と田舎感が増し、街並があるのみといった感じだった。
勝利星村(勝利區)
勝利星村(勝利區)は、日本統治時代に飛行場所属の軍人宿舎群であり、戦後は国民党の軍人らが住む「勝利新村」と呼ばれる軍人村となった。ここのように区画ごと街並みが残っている例は珍しく、「勝利星村」創窓生活園區というコンセプトで再生され、屏東の流行発進エリアとなっている。
僕が到着した頃は午前10時頃で、勝利星村(勝利區)の開店時間が11時からのところが多かったため、スタッフの方が軒先を箒で掃くなどの清掃中だった。そのため、観光客も一人もおらず閑散としていたが、普段は賑やかな場所らしかった。
個人的には建物自体に興味はなかったが、飛行場の面影が残る当時の遺構は歴史を感じられ興味深かった。
休憩:驛前大和咖啡館(Yamato Coffee)
勝利星村(勝利區)を後にし、再び歩いて駅前に戻ると、驛前大和咖啡館というカフェに入った。
驛前大和咖啡館は、日本統治時代の「大和ホテル」の建物をリノベしたカフェであり、当時の階段などをそのまま残したインダストリアルな雰囲気で知られているらしい。
店内に入ると、2人組の女性が接客してくれて、バスクチーズケーキとコーヒーを注文した。
席に着くと内装も雰囲気があるように感じ、当日は混んでいなかったが、近辺ではきっと人気の店なんだろうなと思った。
程なくしてバスクチーズケーキとコーヒーが運ばれてきたのだが、外は暑いにも関わらず、誤って濃縮タイプのホットコーヒーを注文してしまったようだった。
お目当てのチーズケーキとコーヒーの味は、まずまずといった感じだったが、その後店員さんがサービスで小サイズのアイスコーヒーを持ってきてくれた。
終始、愛想がよかったことが印象に残っている。
屏菸 1936 文化基地(Pingtung 1936 Tobacco Culture Base)
驛前大和咖啡館を出ると、続いてバスに乗って、屏菸 1936 文化基地というタバコ工場の跡地に向かった。
屏東のバスは、前からしか乗れない観光バスのような大型車だった。
前扉からバスに乗り込むと、何か運転手が僕に言ってきたので、勝手に「行き先はどこか?」と尋ねられたと思い、Google maps の画面を見せた。
すると、運転手も了承したような顔で後ろに乗れと指差すので、指示に従い着席した。
10分ほどバスに揺られ、そろそろ目的地に差し掛かった頃、高雄のバスような降車ボタンがないことに気づいた。ただし、乗車時に運転手と会話を交わし、降りる場所まで示したから大丈夫だと思っていたら、普通に通り過ぎてしまった。
しょうがなく、次のバス停に差し掛かった頃に、運転手の横の通路に座り込み、ここで降ろしてほしいことを何となく伝えると、見城徹のような強面の運転手が「危ないから、降車ボタンを押してくれ」と言っているように聞こえたのだが、僕は構わず運転席の隣に座りこんで譲らなかった。
少々大袈裟かもしれないが、無事自分の主張を押し通し、次のバス停で降りることができたのだった。
屏菸 1936 文化基地は、1936年に建てられ、2002年まで操業していたタバコ工場の跡地を転用したクリエイティブスポットである。2017年に屏東縣政府によって全エリアが歴史建築に登録された模様。
入場券を購入し、1階から見学しようとすると、ミュージカル女優の新妻聖子さんのようなスタッフに声をかけられ、やけに話し込まれた。
「3階→2階→1階の順番に見てください」とか「どこの国出身ですか?」とか色々話した。また、スタッフは階ごとに時間区切りで入れ替え制らしく、1階で会ってから2階でも会って話しかけられた。会話の内容は忘れてしまった。
屏東原民館
3階は、山間部に多く住む原住民族の生活文化について展示がされている。
展示品の多くは木彫りが多かったが、これだけ大きなものを手彫りで作っていると想像すると、何人がかりでどれだけの月日を費やしたのか容易に推し量ることができない。
また、すべて雑に作っているわけではなく、細部の意匠性や模様まで丁寧に彫られており、こんなものが普通に観れるだけでも価値ある展示に感じた。
会場の片隅にはアートが何点か飾ってあったが、どれも油彩鉛筆で描かれており、発色がすごく良いなと感じた。新たな画材を見つけた気がする。
屏東客家館
2階は、屏東エリアに住む客家の人々について展示がされている。
個人的に2階はあまり興味が惹かれなかったが、全体的にプロジェクションマッピングが施されていた。行ったことはないが、チームラボみたいな感じなのだろうか。映える写真を撮りたい方にはオススメである。
屏東菸葉館
1階は、たばこ製造の巨大な機械をストーリー仕立てで見て回ることができる。
いよいよメインのたばこ工場跡地であるが、おそらく過去に何かしらの工場に入ったことがある人は楽しめるはずだと直感的に感じた。
僕の場合はというと、建築用部材である合板やパーティクルボードの製造工場に何度も入った経験があり、何となく工場という器と中身について繋がりが存在している。
工場の面白さというと、まずは全体の工程を掴んでいくことにある。最終製品が原料からどういう道筋で形を変え、製造されていくのか把握していく過程が面白い。
また、工場の規模にもよるが、見たことない巨大なマシーンが規則正しく、荒々しく並列されている姿、それら全体が醸し出す迫力を体感するのも興味深い。
このたばこ工場では、当時働いていた人のインタビュー動画や写真の展示がされていたが、過去の人の痕跡を歴史を辿るのはしみじみとする。
僕は静岡県にいた際に一時期、今は亡き城跡を巡るという趣味があったのだが、何かそういうものに惹かれるというのは、僕の心の受容体がそういう形をしているからなのかもしれない。
特に期待していなかったのだが、自身の予想に反して非常に魅力的な場所に感じた。趣味に「工場見学」を追加してもいいかもしれない。
その後、屏菸 1936 文化基地を後にし、バスに乗り込み屏東駅まで戻った。これで事前に調べていた場所は周り終わったので、そのまま高雄まで戻ることにした。
番外編
昼食:港園牛肉麵(Gang Yuan Beef Noodle Restaurant)
ホテルに一度戻ってから体勢を整え、再び港園牛肉麵に行き、遅めの昼食を取ることにした。
話は少し脱線するが、台湾は街中の監視カメラが多いように感じた。そのせいもあってか、変な人がほとんどいなかった気がする。逆に、日本帰国後の地元の駅で「死ねー!クソがー!」と叫んでいる女性がいて、台湾とのギャップに驚いてしまった。
また、台湾は日本よりも違法駐車に厳しいように感じた。街中を歩いていると、警察官がバイクでやってきて、違反切符を切ったり、違法駐車しているバイクを撤去したりする姿を何回も見た。
話を戻して、港園牛肉麵に行ったのだった。お昼時はすっかり過ぎているにも関わらず、相変わらず店は混んでいた。
前回は汁なしタイプである牛肉半麺を食べたが、今回は汁ありタイプの牛肉湯麺を注文した。
今回は混んでいたせいもあってか、運ばれてくるのに20分くらいかかった。
待っている間暇だったのだが、同じ席に相席した韓国人カップルの会話を聞いていた。もちろん韓国語は分からないので、意味は不明だが、韓国語の響きがかわいいなと思った。「〜ッソ↗︎?」と女の子が男の子に言っていたのが、耳に残っている。
牛肉湯麺は、これまためちゃくちゃ美味しかった。それは画像でも十分伝わると思う。前日のナイトマーケットで食べた牛肉湯の出汁に近かったが、港園牛肉麵の牛肉湯麺は、醤油ベースだったと思う。それに牛の脂が浮いていて、あっさりかつ旨味がしっかりある。
麺はというと、やはりうどんに近い。醤油ラーメンの出汁でうどんを食べている感じと表現すれば、何となく味の輪郭は伝えられていると思うが、実際はまた少し違う。関西の肉うどんにもそれとなく似ているが、これは唯一無二の味である。高雄に行く人がいれば、ぜひ食べてほしい一品である。
おやつ:下一鍋水煎包
港園牛肉麵のすぐ近くに、下一鍋水煎包というお店があり、ここにも滞在中行きたかった。夕方前という時間にも関わらず、バイクで買いにきた地元の人で行列ができていた。
列に並び、目の前の人たちが中国語で注文していく中、僕だけスマホの画面を見せ、水煎包を一つ注文すると「10 minitues.」と英語で強面の兄ちゃんが返してくれた。
一時期の EXILE ASTUSHI を彷彿とさせる髪型だったが、普通に優しい人だった。
無事、水煎包を購入できたのだが、一つ 15NTD(約75円)と恐ろしく安かった。ここには食べるところがないので、歩いて移動し、愛河を眺めながら実食した。
食べた瞬間、どうして一つしか買わなかったんだと後悔するぐらい、とんでもなく美味しかった。底は鉄板に押し付けられているのでパリパリ食感で、生地はもっちもちだった。餡は特別変わったものが入っているわけでもなく、肉汁が溢れるわけでもなかったが、なんせ美味しかったという記憶が強く脳にこびりついている。
他には餃子なんかも売っていたので、近所の人は羨ましい。下一鍋水煎包は、港園牛肉麵とセットで行くことを強くおすすめする。
夕食:瑞豐夜市(Ruifeng Night Market)
ホテルに戻り、軽く昼寝した後、地下鉄に乗って瑞豐夜市に行った。瑞豐夜市は、観光客が多い六合國際観光夜市に比べ、ローカル民が多くリーズナブルで知られているらしかった。
到着してみると、確かに観光客はそこまで多いようには見えなかったが、人がめちゃくちゃいた。それにも関わらず、屋台間の幅が狭く、通路を通るので精一杯だった。
しばらくウロウロしていたが、特に食べたいものもなかったのだが、ゲテモノ屋さんが気になって店前で足を止めた。
すると、おばちゃんが声をかけてくれ、Google 翻訳を通じてやりとりをするのだが、あまり噛み合わない。それを見兼ねてか、おばちゃんの息子らしき青年が裏から出てきて、英語でサポートしてくれた。
おばちゃんからは、僕が韓国人に見えたみたいだが、ニューヨークでは中国人に間違われ、平たい顔族の日本人のアイデンティティーとは何たるか考えものである。
結局、おすすめされた鶏の手を買ってホテルに帰ったのだが、あまり食が進まず、ほとんど食べずに捨ててしまった。4日目の晩は、失敗してしまった。
番外編につづく