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スマホを凝視しながらそばをすする客vsそばを盛大にぶちまける私
冬の蕎麦屋が好きだ。瓶ビールと天ざるを注文して文庫本を開く。軽めのエッセイ集。
ヱビスで喉を湿らして、お通しのかまぼこをつつく。ああ至福。蕎麦焼酎のそば湯割りまでいきたいところだが、人に会う用事があるの小瓶1本でガマン。
昔ながらのテーブル席ではなく、カウンター席がある蕎麦屋。店はほぼ満席で、私の右側には一人で来てる男性、左側には老夫婦。
ソロ男性は左手に持ったスマホを片時も離さない。私は文庫本。老夫婦は手ぶらで会話もなくぼーっとしている。仲は良さそうだし無言が苦にならない関係って素敵だなと思った。
私は「蕎麦屋でスマホにかじりついてるのは無粋ですなー」「ここは時間とコスパ重視の立ち食い蕎麦じゃないんだけどなー」なんてことを思っていた。
ちらちらと右側を観察すると、LINEの返事を打って、Instagramをみて、なにかのページをスクロールして、動画を再生して、ずっとセワシナイおじさんだった。歳は50代だけど、のび太の子孫かもしれない。
1分間のうち55秒くらいはスマホ画面を凝視して、のこりの5秒でそばを食べている感じ。なんならすすっている時も視線はスマホ。私が蕎麦職人だったら悲しいだろうな、、
「はい、お蕎麦でーす」
カウンターの向こうから店主がざるを手渡してくれる。よし、私は自分の蕎麦に集中しようと思ったその瞬間
がしゃーん
蕎麦をぶちまけた。おつゆが倒れた。あーあーあー わーうーをー
いちばん無粋なのは私だった。平謝りするしかなかった。