「若き才能が花開いたミステリー~『探偵はぼっちじゃない』~」【YA⑤】
『探偵はぼっちじゃない』坪田 侑也 著 (KADOKAWA)
2019.6.17読了
親からエリートへの道を強要されている中学3年生の緑川。
クラスでは明るいキャラを無理して装っています。
受験勉強と並行して彼が書き始めた演劇部脚本のためのミステリー小説。
それは、親とケンカして逃げ出した夜の橋の上で出会った、どうやら同級生らしい星野から、どうしても書いてほしいと頼まれたからでした。
星野は両親を亡くし、寺の住職である叔父の家の離れにひとりで住んでいました。
狭い部屋に、びっしりと積まれた本の山に驚いた緑川。
それから、緑川がストーリーを考え星野がトリックを考えるという共同作業にはいったふたりは、次第に仲良くなっていきます。
同じ中学校の、学園長の息子ということで職員室でも浮いている教師の原口は、校内マラソンコースの下見という役回りを教頭から押し付けられます。
いっしょにやることになった教師が、以前生徒が自殺してしまうのを止められなかったという理由で落ち込んでいる先輩教師・石坂でした。
そんな石坂と行動をともにしていた中、石坂が自殺サイトに匿名潜入していることを知った原口。
そのサイトで自分の中学校の生徒がメンバーとなっていることに気づいた石坂と原口は、急遽、自殺志願者を探してやめさせるのに奔走することになるのです。
しだいに自殺志願者の正体に近づいていく石原と原口は、まさかの事態に出くわすことに……。
緑川と星野、石原と原口。
それぞれに抱えるものを自身の中に持ちながら、悶々と過ごす日々。
バラバラとも思える4人がある場所で遭遇したとき、どんでん返しの展開を読者は見ることになります。
作者は15歳の夏休みに仕上げたというこの作品で、ボイルドエッグズ新人賞を受賞して作家デビューしました。(2019年現在 現役高校生)
すごい才能がどんどん出てくるこの出版業界に驚きます。
書くことが好きな子、創作することが好きな子がまだまだ多いことに、ある意味ほっとします。
この作品中も、小説中小説が物語と並行して綴られていきます。
まさに作者本人の経験からの賜物だと言えますね。
この物語のどんでん返しとともに、中の小説もなかなかのトリックを見せてくれ楽しめますよ。