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世代論の危うさ
某社の新卒採用振り返りセミナーで、採用対象である「Z世代」についてお話しさせていただいている。
聴衆の1割ぐらいがZ世代だったりして、私のようなアラフィフのオヤジが若者に対して若者を説くという半ば地獄のようなシチュエーションだが、なんとか頑張っています。
それでも多少なりとも話す資格があると思うのは、四半世紀以上に渡り、新卒採用や若手育成に携わり20代を定点観測してきたので、変化がなんとなくわかるということ。
また、自分の会社は4分の3が20代で、日々20代マネジメントに悪戦苦闘していること。
そして、こんな連載やあんな連載をしているので、経験してきたことをいろいろ掘り下げて考えていることなどから、少しでもお役に立てる考えるヒントが提供できればと思っている。
しかし、講演の冒頭で必ず世代論の危うさには言及するようにしている。
・そもそも何百万人を十把一絡げにできない
・格差社会において個人差の方が大きい
・上の世代は下の世代がわからなくて不安なので、認知的不協和を解消するために悪く言う
・ある世代の特徴として言われていることを集めてみると矛盾だらけ
目の前にいる若者におじさんたちがレッテル貼りをして安心することを助長するのは避けたい。
個を考える時には、あくまで目の前の人をよく見て、よく話して、個別に理解すべきであり、既にあるフレームの中に整理するべきではない。
だいたい、採用面接などで「最近のやつはみんな同じことを言ってつまらない」と言っているような人は、その人が若者に対して先入観が強すぎて、解像度が粗過ぎるのだ。
実際の若者達は個性豊かでバラエティに富む存在であり、同じような人などいない。
こういうことは助長したくない。
ただ、一方で、「みんな違ってみんないい」とだけ考えているのも思考停止だ。いろいろあるということと、そこに何らかの多少の傾向があるということは両立する。
個への対応ではなく、採用や人事のポリシーを決めていくような際には、必ず「大体の傾向」「方向性」を認識していなければ、なんにも決められない。
だから、世代論は存在意義はあり、必要でもある。ただ、必要悪とまでは言わないが、上述のような陥穽があるので、極めて慎重に扱わないといけない。世代論は危険物であると認識すべきだろう。