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はじめての『ZINE』について

Sep.2024

おひさしぶりです、海です。
すっかり秋の風が吹くようになって、穏やかなひかりを感じる季節になりました。


読書の秋とはいいますが、わたしは本を読むのがとても遅いです。今月も1冊くらいしか読めなかったな… と落ち込んでいたのですが、数えると6冊ほど読んでいました。

普段は友人から貸してもらったり、図書館で借りたりすることが多いので、本が手元に残ることがないのです。そうしてすぐに忘れてしまうので、ちゃんと記録にのこしておくことは大切だなと思いました。


そうしてずっと「書きたい」と思いながら書けていなかったことを、書くチャンスがやってきました。友人が、「一緒に本を作らない?」と誘ってくれたのです。

彼女は 直島で出会った、同じ年の友人でした。
「本を作る」なんて まったく想像ができなかったのですが、尊敬する彼女がわたしの文章を信頼して持ちかけてくれたことに、応えたいと思いました。そしてわたし自身も、自分の作品をつくってみたいと思ったのです。


彼女と本を作るなら、" 自分たちにしか書けないもの " を作りたい。はたしてそれは何だろうと考えたとき、それはわたしたちが出会い、ともに過ごした「 直島 」のことだろうと思いました。

わたしがこの島で過ごしたのは9ヶ月。二年前の誕生日にこの島へやってきて、一年後の誕生日に別れるまでの日々を、彼女と二人で綴りました。


『 直島往復書簡 』 B6 / フルカラー / 64p


瀬戸内海の、アートの楽園での日々。東京をはなれてはじめてやってきたその島は、わたしにとって理想郷のように美しい場所でした。

けれどそこからは、まるで抗えない " なにか " に流されていくように、次々といろいろなことが起こりました。自分の力だけでは、どうしようもできなかったこと… 運命というものがあるとすれば、こういうことなのかもしれないと思えました。


直島にやってきてから、毎日書いていた日記。見開きのノートが文字でいっぱいになるほど、幸せだった日のことも、抜け出せないとさえ思えたつらい日々も、どんな日にも毎日綴ってきたことで、あのころの記憶を思い出すことができました。

わたしの日記と、彼女と送りあった往復書簡をとおして綴った、直島での日々を綴じ込めた一冊です。



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「 自分で 直島の本を作るとしたら、どんなものにしたいだろう?」と考えたとき、「この美しい風景を、本を手にとってくれた人に届けたい」と、強く思いました。

この島の美しさを語ろうと思ったときに、いくら言葉があってもたりませんでした。はじめは文章でそれを伝えられれば… と考えていたのですが、どのようにしたらいちばん伝わるだろうと考えて、" 写真を散りばめたエッセイにしよう " と 決めました。

 
 『 海のあわい 』  A5スクエア / フルカラー / 54p


noteであれば かぎりなく綴ることができても、それが本になったとき、すべてを書くことはできないと気がつきました。ページ数が決まっているからです。

だったら、これが「本」であることの魅力が伝わるものにしよう。ページをめくる楽しさを感じてもらいたい。

「この島で暮らした自分だからこそ、きっと撮ることができたのだ」と感じられるような表現を探しながら、すこしずつ、写真と文章を散りばめていきました。


誕生日に出会った猫、はじめて訪れた島のカフェ、しんどいと思ったとき、癒された銭湯のこと… たくさんの大切な記憶のなかから、ふっと思い出したいと感じたことを、ひとつずつ綴りました。

大好きな美術館のことも書いているのですが、書きたいことをすべて書くのではなく、ときには " あえて書かない " という選択した部分もありました。そのほうが、映しだされたものの魅力が伝わると感じたからです。


ふだんは文章を書くときに、写真は挿し絵のようにそっと使っているのですが、この本では「 写真の力を信じてみよう 」と決意しました。自分の文章だけで描くのではなく、写真に託す。お互いがいちばん惹き立つ表現で、この本を作ろう。

自分にとってはじめての試みでしたが、納得のいくものができたとき、はじめて自分の作品が生み出せた、と思いました。そして自分は文章と同じくらい、写真を撮ることが好きだったのだと、この本をとおして知ることができました。


この本を作ったとき、なにが起きるのか、まったくわかりませんでした。けれど目に見える " かたち " となったこの本を、たくさんの人たちが受けとってくれました。
ひとりの人間として、たったひとりの大切な人と、向きあえた喜び。 

この本が、素敵な出会いをくれたこと。
そしてこれは ただの物ではなく、まだ見ぬ だれかと出会うための、ひとつの橋だったのだと気がつきました。


 遠くの方にも届けられるように、お店を開きました。
 もしご興味のある方は、覗いてみてください。

 この島がくれたもの。ずっと憶えておきたいこと。
 それを だれかに手渡すことができたなら、
 こんなに 嬉しいことはありません。

 みずからの 大切なものを 明け渡してゆくように、
 これからも 文章を綴っていきたいと思います。


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◇  海と石  zine shop


 2025年 2月9日  [ 文学フリマ広島7 ] に参加します。
 サークル名 『海と石』

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𝚜𝚎𝚎.
お読みいただきありがとうございました。頂いたサポートは、エッセイ・本を制作するために使わせていただきます。素敵な日々になりますように。