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スーパーマンみたいな先生に救われる親子。

ぴぃさん、中学校生活も3週目に入り、理解ある優しくて力強い先生を味方につけ、たくましく登校しています。

学校に行く、毎日通うということだけで、どれだけエネルギーを使っているかと思うと、もう帰ってきてからのことで、あーだこーだ言う気にならない。

「制服はシワになっちゃうから、脱いだらかけてよ。」

「提出物や持って行くものがあるなら先に言ってね。」

そう思ってはいるが、「全部は無理」と思って耐える。

放課後、部活に行ってから帰ってくるぴぃさん。

4時ごろ帰ってきて、iPadと携帯を抱え、自分だけの別世界へ。

ぴぃなりのクールダウンタイムなんだと思う。

なんとか、そうしてバランスをとってはいるものの、否応なく心身は消耗しているわけで、途端にわずかなことで不安に襲われる。

7時近くなって、やっと現実に戻ってきて、あれをやらなきゃ、これをやらなきゃ。


ある日、宿題をやろうと思ったら、お友達にもらったお気に入りのシャーペンがペンケースに入ってないことに気づきパニック。

忘れたかもしれない、いや、捨てられてしまったかもしれない、いや、盗まれたかもしれない。

かもしれないことに囚われ、呼吸が荒くなる。

不安を受け止め「絶対に学校にあるよ。」と言っても収まらない。

最近までのぴぃはこれぐらいの不安は乗り越えられるようになっていた。

でも、今は厳しい。もう、その不安を踏ん張って耐えるエネルギーは、学校で使い切った。

乗り越えさせるのも一つの成長と思ったが、今は「全部は無理」。

ぴぃの担任の先生は、ベテランの女性教師で、ありがたいことに考え方がとても柔軟で理解が早い。

噂によると、いい意味で雑で無駄がない、いい意味で。

すでに、入学式後の保護者会で、「なんでもいい、いつでもいい、学校を介してたら遠回りだから、なんかあれば直接連絡ください。」と、自分の携帯番号を公表していた先生。

思い立って先生に連絡する。

私「先生、今学校にいらっしゃいますか?」
先生「もういないの。どうしました??」
私「ぴぃがお気に入りのシャーペンを学校に忘れたかもって・・・」
先生「どんなシャーペン??」
私「白地に青のプリントがしてあります。」
先生「お母さん、この携帯に折り返しで大丈夫?」
私「はい」
先生「すぐにかけ直すわね、待ってて。」
・・・数分後
先生「お母さん、まだ学校いる先生に探してもらった。教室にあったわよ。もう大丈夫!!」
私「え?あ、はい!!ありがとうございます!」

何も聞かない、余計なことも言わない。

瞬時にぴぃの不安を察知し、今こちらが求めていることを秒速で行動に移し、問題解決。


また別の日、美術の課題の続きをやろうと思ったら用紙がカバンに入っていなかった。

ぴぃは「ママ、やばい、これはぴぃ泣くやつだわ。なかったら泣くやつだ。耐えられない。」と言いながら泣き出した。

ぴぃ「絶対に学校にもない。落としたんだ。無くしたんだ。ちゃんとカバンに入れたのに。無くしたら怒られる。」

私「それは不安だよね。でも、この前のシャーペンはちゃんと学校にあったんだから、それも絶対学校にある。提出期限はまだ先だし今日焦らなくても大丈夫だよ。」

こんなんで落ち着くはずはないとわかっていても、今回は先生に連絡するという手段は避けたいという思いから、言わずにいられなかった。

でもぴぃは、「先生に連絡して、学校になければ諦めるから」と言った。

私「先生、何度もすみません。まだ学校にいらっしゃいます?」
先生「すみませ〜ん、今日もいないわよ〜。どうしました??」
私「ぴぃが美術の課題の用紙がないと・・・」
先生「ぴぃちゃん、泣いてる?」
私「はい・・・」
先生「電話代わってください。」
・・・スピーカーに切り替え、泣いているぴぃの横に携帯を置く。
先生「ぴぃちゃん泣いてるのー?」
ぴぃ「はぁい・・・」
先生「美術の用紙、絶対学校にあるわよ!明日先生と朝探しましょう。」
ぴぃ「なかったら怒られちゃう・・・」
先生「大丈夫よ〜ぴぃちゃんがんばってるの先生知ってるんだから〜。課題はどこまで進んでる?」
ぴぃ「あと色塗りです。」
先生「もうそんなとこまでやったの?すごいじゃない?がんばってるじゃない!大丈夫、絶対学校にあるから、ね?提出は明後日だから、まだ一日あるからゆっくりできるわよ。今日はもう何にもしなくていいから、好きなことだけしなさい。いい?」
ぴぃ「はい・・・はい・・・はい・・・」
先生「泣かないでよ〜先生を信じてほしい!ね?絶対大丈夫だから。」
ぴぃ「はい、ごめんなさい。はい。」

ぴぃの声が落ち着いていくのがわかった。

そしてぴぃが、私に部屋から出て行くよう促す。

部屋を出たものの、スピーカーから出る先生の声とぴぃの地声は大きく、時々もれ聞こえる2人の声。

会話の内容まではわからないけど、私が部屋から出た後、ぴぃは何かを先生に訴え、もうひと泣きし、そこからは2人の笑い声。

20分ほどの通話を終え、ぴぃが笑いながら私のところにきて携帯を差し出す。

私「もしもし?なんかすみません。」
先生「お母さん?どうかしら?大丈夫そう?」
私「はい。ありがとうございます。」
先生「もう課題の件には触れない方がいいわね。気を紛らわせたから、あとは好きなことさせてあげて。あと今日は早く寝なさいって言っといた。」
私「なんかもう言葉にならないです。本当にありがとうございます。」

押し付けもない。必要以上に心配もしない。無駄な会話もしない。

ただ、欲しいものだけくれる先生。

まだ入学して1ヶ月も経っていないのに、この調子で先生に甘えきってしまって大丈夫だろうか。

そろそろ、厄介だなと思われないだろうか。

先生にとって業務時間外の大切な時間を奪ってるんじゃないか。

いろいろ考えたけど、今は「全部は無理」、ここに行き着く。

ぴぃに私の「大丈夫」が伝わらない今、先生の「大丈夫」に甘えよう。


スーパーマンみたい。

何を隠そう、救われてるのはぴぃだけじゃない。

私からは救えない角度からぴぃを救ってくれ、もろとも私も救われてる感じ。

絶対そんなことはないんだけど、なんとなく、心のどこかで、1人で戦ってる気がしてた。

それはきっとぴぃも同じ。

うまく表現できないけど、かつてない心強さを感じている。

スーパーマンみたい。あ、スーパーウーマンか。

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