104. 熱中症とマスク
ミュージカル好き救急医の独白 vol.104
- The Monologue of a Musical-Loving Emergency Physician -
はじめに
連日とにかく暑いですね. 救急外来で働いているとこの暑さに比例して増えるのが熱中症です. 暑い中作業していて具合が悪くなったという方から, 自宅で意識障害を認め搬送され, 最終的に熱中症と診断される方, 路上で何らかの原因で倒れ, 熱中症も伴っている方など様々です. 最近では, コロナの可能性も考えつつ感染対策を行って対応する必要があることから, 救急隊のみなさんも大変です. 長袖長ズボンにマスク, アイガードをつけて, 暑い屋外, 高齢者の自宅などを一日の内に何度も行ったり来たり, 本当に頭が下がります.
マスクは現在あたりまえのように身につけるようになりましたが, 熱中症になってしまっては大変です. 今回はその辺りのお話を.
今回のミュージカル
THE MUSICAL CONCERT at IMPERIAL THEATRE(2020.8.14〜25)
本日もこちらから. Program Bの魅力も多々ありますが, アッキー率いるジャージー・ボーイズのメンバーが揃っているというのがスゴいですよね. ジャージーもLIVE配信があり, 私も1講演観劇しましたが, 同役が2人などコンサートならではの素晴らしさがあり楽しめました. 今回の帝劇コンサートは, 中川・海宝・藤岡・福井さんという4人ですから, 舞台をより観たくなりました. 仲が良いのが歌っている姿を見ているだけで伝わってきてコンビネーションバッチリ, こちらもhappyな気分になります.
いっくん(山崎育三郎さん)クリス, 笹本キム, アッキーヴォルフガングのナンバーもあり…
コンサートの間のトークも普段なかなか聞くことができないので嬉しいですねぇ.
救急外来あるある
42歳男性(BUさん)が, 頭痛, 倦怠感を主訴に救急外来を受診しました. マスクを着用しながらランニングをしていたようです.
Dr.S:「今日はどうされたのですか?」
Pt.BU:「最近はずっと家にいるもんで, 身体がなまっちゃうなと思ってランニングを再開したのですが, なんだかかったるくなっちゃって...」
Dr.S:「久しぶりに走ったのですか?」
Pt.BU:「そうですね. いつもは大丈夫なんですけど, なんだか今日は頭も痛くて.」
Dr.S:「マスクはつけたまま走っていたのですか?」
Pt.BU:「はい. なんだか周りの目も気になりますしね.」
Dr.S:「どれくらい走っていたのですか?」
Pt.BU:「いつも1時間くらいで, 10kmを目標に走っているんですが, 今日はどれくらいだろう…」
Dr.S:「朝食は食べました?」
Pt.BU:「いや, 水だけちょっと飲んで, 走り終わってから食べようかと思って.」
Dr.S:「なるほど…」
マスクによる影響
みなさん最近は外出するときにはマスクを着用していると思います. ミュージカルなど舞台も必ずマスクの着用が求められ, 前方の席の場合にはフェイスシールドまで付けることを指示されることもあります(これは善し悪しはあると思いますが, 主催者側の配慮だと思って受け入れていますが, ちょっと苦しいですよね, 色々な意味で).
実際に, この時期にマスクを着用し外を出歩くと誰もが感じるとは思いますが, とにかく口鼻周りを中心としてムシムシしますよね. 実際にマスクの影響で1-2℃は余計に顔面の温度は上昇するようです.
付ける必要が無いところでは, 適宜外すことが重要です. 予防のためにあれもこれもと足し算で物事を考えると, そのうち大変なことになるため, 引き算的考えを持つことは大切です.
ランニングなどをする場合には, まずは暑い時間を避けましょう. そして可能な限り人が少ないところがよいでしょう. 皇居など人気のスポットではどうしても密を避けられないため, これを機会に新たなランニングコースを探してみることをお勧めします. 3密が回避できる状態であれば, 走っているときにマスクはいらないと思いますし, そのような方を遠目から見て非難することはよろしくありません.
新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた熱中症予防に関する提言
日本救急医学会, 日本臨床救急医学会, 日本感染症学会, 日本呼吸器学会の新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた熱中症診療に関するワーキングループから, 以下の提言が出されています. 非常に大切な事ですので頭に入れておきましょう.
①屋内においては, 室内換気に十分な配慮をしつつ, こまめにエアコン温度を調節し室内 温度を確認しましょう.
②屋外においては, マスク着用により身体に負担がかかりますので, 適宜マスクをはずし て休憩することも大切です. ただし感染対策上重要ですので, はずす際はフィジカル・デ ィスタンシング(密にならないこと)に配慮し, 周囲環境等に十分に注意を払って下さ い. また口渇感に依らず頻回に水分も摂取しましょう.
③体が暑さに慣れていない時期が危険です. フィジカル・ディスタンシングに注意しつつ, 室内・室外での適度な運動で少しずつ暑さに体を慣れさせましょう.
④熱中症弱者(独居高齢者, 日常生活動作に支障がある方など)の方には特に注意し, 社 会的孤立を防ぐべく, 頻繁に連絡を取り合いましょう.
⑤日頃の体調管理を行い, 観察記録をつけておきましょう. おかしいなと思ったら, 地域 の「帰国者・接触者相談センター」や最寄りの医療機関に連絡・相談をしましょう.
簡単に言うと, 3密(密閉・密集・密接)が回避できている状態で, 発熱や咳嗽などなく自身の体調が問題ない場合には, マスクは外してOKです. そして, 予防できる熱中症を回避するために, 換気はしつつも温度・湿度を適切に保つことを心掛けましょう. 特に高齢者など体温管理が難しい場合には, 家族や介護職員を中心に, 環境の調整や適度な水分摂取を促しましょう.