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研修医がEpley法がうまくいかない理由

救急外来ではめまいを主訴に来院する患者さんは非常に多いですよね。めまいの原因で最も多いのがBPPV(Benign Paroxysmal Positional Vertigo;良性発作性頭位めまい症) 、起床時からのめまいで頭を動かすとめまいが...という訴えから想起することはできても対応に苦慮した経験がある方は多いのではないでしょうか。

BPPVであれば、後半規管型が最も多く(水平半規管型も多いですが自然治癒しやすい)、そうとわかればEpley法に代表される耳石置換法を行うわけですがなかなか上手くいかない..., 私もそうでした。しかし最近は成功率が上昇し、施行後速やかに帰宅可能な患者さんが増えたように思います。初期研修医と一緒に診療をしていると、私もそうであったようにうまくいかないのには理由があることがよくわかります。以下の4点(表1)を特に意識してみましょう。

①後半規管型BPPVではない

あたりまえですが、Epley法はBPPV、さらには後半規管型BPPVでないと効果がありません。BPPVであるか否かは、めまいの持続時間が非常に重要です。BPPVのめまいの持続時間は、臥位など楽な姿勢をとれば数十秒、長くても数分以内に治まり、嘔気は多少残存しても発症時に経験するめまい(典型的には回転性)は落ち着きます。また、眼振は誘発しない限り認めません。

BPPVの対抗馬となる前庭神経炎や脳梗塞に代表される中枢性めまいは安静時にも持続し、眼振も認める(フレンツェル眼鏡着用必須)ため、この時点で大凡の鑑別は可能です。1回1回のめまいの持続時間を確認し、眼振が安静時には認められないことを確認しましょう。

②頭を下げる角度が不十分

耳石を動かすためには、ある程度の角度を付ける必要があります。図1の②の姿勢(患側下懸垂頭位)の様な体勢をとることをお勧めします。

③それぞれの待機時間が短い

それぞれというのは、図1の②〜④の部分を指します。1つの耳石を元の位置に戻すのではなく、耳石は5μm程のものが無数に存在します。スノードームをイメージしてもらうとわかりやすいと思います。つまり、②の待機時間が短いと全体の75%は期待するべき場所へ耳石が移動しても、残りの25%はまだ到達しておらず、③へパッと移動してしまうと、元の位置へ戻っていってしまうのです。
②の姿勢をとり、患者の症状が再燃、そして落ち着くまでは大凡1分程度ですが、私はさらにそこから数十秒は待つようにしています。もちろん、眼振が消失していることもフレンツェル眼鏡で確認し先へ進みます。ここを焦っちゃいけません。急がば回れ、です。

④説明が不十分

なんのためにEpley法を行うのかを必ず説明し理解してもらいましょう。十分な説明無しにEpley法を行えば、症状を誘発しているわけですから、患者は途中で「無理無理」となにをしてくれるんだと言わんばかりに怒り、嘔吐することでしょう。私は、Youtubeで見ることができる動画を利用し、患者さんに対して病状を説明しつつ、Epley法を行う意義を説明し理解してもらうようにしています。これを行うと途中で中断することはありませんし、制吐剤が意味をなさないことも理解してくれます。

Epley法、上手くいかないとやる気がなくなってしまうかもしれませんが、一度成功すると患者さんも一気に視界が開け、スタスタ歩いて帰ることができ、非常に喜ばれます。ぜひみなさんもやってみてくださいね。そのうち、自身がBPPVに...なんてこともありますから。


表1:Epley法がうまくいかない理由


図1:Epley maneuver


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