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夢のはなし

喉がぐーーっと詰まるような感覚から始まって
じわじわと視界が明るくなりはじめる

「そこの部屋だよ、
角を曲がった先の」

宙に両手を泳がせ 水を掻くように左右に動かすと
本当に空気がぬるま湯のように肌を撫でていく感触がする

暗めにした部屋に僅かに灯しただけの電球の灯りが
注意を向けた途端に 水平線に沈む夕焼けの強さで
部屋中の空気を 黄金のさざ波のように揺らし出す
光の粒が目の前を流れていくのが分かる

試しに香を焚いてみると
その香りは想像の100倍豊かに鼻腔を濡らし
深く吸い込むと
脳の中にまで香りが満たされるかのように感ぜられ
そしてその香りを構成する 香料のひとつひとつまでもが
主張し合いながら嗅覚をくすぐり、まとわり付くのが
鼻の中で触感として知覚される

ろうそくの炎を見つめていると
蝋自体が全て液状化したようにうねり
対流するかのように絶え間なく動きながら
それでもろうそくの形を保っているのを
不思議〜と思いながらも視線が離せなくなる

ああそうだ、音楽、と
何気なく再生した電子音で構成された旋律は
文字通り空気を伝う振動として
腕や背中をさすっていく
肌で音を聴いてる!と感激する

目を瞑ると、宇宙
目を開くと、黄金の粒子の流れの中

全てが目に見え、肌にぶつかっていき
音も香りも増幅されて
でも全てが柔らかく、痛みは生まない

目の前で誰かが口にした言葉を
ああ、たった今、私も同じ事を言おうとしてたのに。と思う


そうか、これが
人間の使っていない脳の90%の知覚可能な世界か


なんて思っていたら唐突にとてもお腹が空いてきて
手近にあったのり塩のポテトチップを貪る
なんだこの食べ物は、と思う程美味い
え、芋っておいしい!青海苔の香りが!ああ、しょっぱいなぁこれ!しょっぱいよ!


なんて言ってたつもりでいたら目が覚めた

後にも先にも同じようなシーンは見たことがない
真夏の夜の 夢でした

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