本を作って学んだこと
個人的な思い出が詰まった本。20代前半から書き始め、20代後半に印刷できた。数年間にわたる記録を初めての本にすることに私はわくわくした。
紙選びをはじめ、レイアウト、印刷、和紙漉き、製本まで全ては新たな試みでありつつ、何より自らの手で作ろうという意欲が盛んだ。印刷は残酷だった。写真の色が想像した通りに再現できなかったときは涙を押さえきれず、数えきれないほどのミスが印刷されたときは終わりだと感じた。自分のクセが生々しく本に反映されてしまった。いくら一貫性を持つようにして、人々に助けてもらっても良いものを仕上げられなかった悔しさ。あらゆることに全力を尽くしても、結果として中途半端になったという学び。二ヶ月前まで、本を思い出すだけで涙を呼び起こされた。普段はめったに泣かないのに、それはなぜだ。
爆発させた感情。日本を離れることをまだ多くの友人に知らせておらず、最後の一秒まで成田空港で本作りに熱中した。なぜこれまで執着したのだろう。本にするプロセスの中で、これらの体験は自分にとってどれほど大切なのかを気づいた。道の中、巡り合った嬉しさ、怖さ、悲しさ、戸惑い、感動など様々な感情が一気に迫ってきた。転職した際に人と人の距離感をしみじみ感じた平日。リサーチのために友人と会えなかった週末。家族から離れた3年間。最も脆い時期から書き始め、私に深く影響を与えてくれる方々に返事をもらい、諦めずに進むように励まされた。時間のあるかぎり、もう少し良くしたいという気持ちが込められたのだと思う。
行動で幼い頃の物作りの感覚が蘇り、作るのが好きだと分かるのに10年もかかったのだ。
自分のために書いてきた文章を公開することから、尊敬する編集者に読まれるという猛烈なストレスを戦い、海外のブックフェアで通りすがりの人にめぐってもらうまでに至った。
もし不器用なところを晒せば、何が起るだろう?
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