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プレイアブル 018『手に取った瞬間の感覚』
今日は、なぜかは分からないがとても弱い気持ちになっていた。理由もわからず心が揺れるということはどんな人にもあることなのかも知れないが、今日の揺れはここ最近ではなかなか小さくはない方だった。
職場である飲食店で、酔った若い女性のお客様が食べながら寝てしまっているのを見て、とても可愛いなぁとほっこりしていた。その隣り座っている彼女の母親らしき人が茶々を入れて愛おしそうに笑っていた。その関係性が素直にとても羨ましいなぁと思い、気づいたら涙がこぼれていた。マスクをしていたから多分女将にもバレなかっただろう。本当に助かった。
仕事終わりにふと本屋に立ち寄りたくなり、目当ての本を探していたのだがなかなか見つからず、ふと目に入った本を手に取る。内容は読まずとも、何か自分の中にヒントが立ち上がりそうな感覚だった。が、あと少し惜しいような感覚もあった。
その本の中に同じ著者の別の書籍を勧める小さな白黒の広告が入っていた。これにピン!ときた。しかし、似たような書籍なのに近くを探してもなかなか見つからない。
ぐるぐるとディスプレイを周回し、脇にあった本棚の1番下の段が何か臭う気がしてふと目をやると、目当ての本が2冊、寄り添って置いてあった。そのうちの1冊を手にした瞬間、何故か涙が止まらなくなった。著者の経歴を見てその理由が分かった気がした。私はこの本に出会うために、このもどかしくスッキリしない3年間があったのかも知れないと感じた。どうにもならない気持ちを一気に楽しみながら出力するために、今日の柔らかい感性があったのかも知れない。嬉しくて嬉しくて、その本を抱きしめながら、溢れる涙を抑えきれず、マスクの下で泣きながら帰宅した。
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