【サラの心の旅】ノベルセラピー作品
さおり著
主人公の名前はサラ。
人間で、ちょうど5歳です。
サラはいつも、シンプルだけどお金をかけたいいものを着ていました。
ブランド物のカチューシャをつけて、ピンク色のふわふわのドレスを着たりもしていました。
髪の毛はきちんと整えられ、クルンと巻き髪を作ることもありました。
サラは物静かでどこか軸の強さを感じられる雰囲気がありました。
自分の考えをしっかりと持っているタイプです。
弱い子にも目を向けられるし助けてあげられる性格です。
サラが住んでいるのは大きな街につながっているグレース島。
島には庶民的な人からお金持ちまで様々な住人がいました。
魔女の宅急便に出てくるような街で、大きな街にも繋がっていたため賑わっていました。
サラの家は丘の上にある立派なお屋敷でした。
お父さんお母さんとおばあちゃん、そして身の回りのお世話をしてくれるメイドのおばさんと、ドアマンや送迎をしてくれる雇われおじいさんと一緒に住んでいました。
中でもメイドのおばさんは、サラの話を聞いてくれたり相談に乗ってくれたりする頼れる存在でもありました。
グレース島の海辺ではいつも子供達の笑い声が聞こえてきました。
島のゆるくおおらかな雰囲気の中で、みんなは自由に遊んでいます。
でも、サラは入っていくことができませんでした。
サラが立派な家系の子であることから、周りのみんなが気を使うこともあり、だんだん馴染めなくなってきたのです。
本当はもっと自分らしく自由に遊びたい!サラは寂しくもどかしい気持ちでいました。
そんな思いはいつもメイドのおばさんに聞いてもらいました。
島の庶民的な家系であるメイドのおばさんには子供たちがいて、サラとの違いもよく理解できました。
また、サラの両親がサラを立派な家系にふさわしい子でいるように話していること、代々伝わる家系を守ることを大切にしていることも知っていました。
しかし、5歳のサラには、私は他とは違う。という心の葛藤が生まれていました。
どういう自分だと葛藤のない自分でいられるんだろう。どういう自分だと楽でいられるだろう。
今はまだそれが分からないけれど、「こうありたい」と思う自分の心を探しに行きたい!
新しい体験や新しい出会いを経験したいと思いました。
サラはメイドのおばさんにこの想いを話しました。
すると、「今度島の子供達が集まってパーティが開催されるんだけど、こっそりおいでよ」と誘ってくれたのです。
「私、行きたい!パーティに参加しい!」
でも、どうやって家を出れば良いのでしょう。島の子供達はサラが立派な家系の子だということを知っているし、楽しめるかどうかも心配でした。
そんな様子を隣の部屋に住んでいる祖母が聞いていました。
実はこの祖母は、この家に代々伝わる魔法の薬を持っていました。自分とは全く違う人に変身できるのです。
祖母は自分の子育てにも悔やむことがあり、孫にこの薬を使わせてあげたいと思いました。
ついにサラはパーティーにこっそりと参加できることになったのです!
別の人間に変身してパーティーに参加したサラは本当に楽しい時間を過ごしました。
本当はこんな風に自分をさらけ出して楽しみたかった。本来の自分の姿を知ることができました。
パーティーが終わりサラの姿に戻って過ごしていたある日、祖母が代々伝わる薬を使いサラがパーティーに行ったことがバレてしまいました。
すぐに両親はこのパーティーに誘ったメイドさんを辞めさせてしまいました。
サラはそんな後でも、変身することなくあのパーティーの時のような自分でいたい。そういう生活がしたい。と強く思うようになりました。
そして、一人でメイドさんの家に行く決意をしました。自分の力で自分を変えて、勇気を持って歩いて行く!
サラは綺麗に整えられた長い髪の毛を自分で短くバサバサと切りました。上品なスカートも短く切りました。薬を使わずに、自分でなりたい自分になってメイドさんの家に行ったのです。
メイドさんの家に着くと、子供達がパーティーの時のあの子だ!と気づいたのです。
そこでメイドさんは子供たちをよんで、サラの話をしました。
サラもみんなの前で、自分がどうしたいのかを話しました。
「島のイベントが近々ある。そのメインの出し物のメインの役をサラにやってもらい、両親に見せよう!」
庶民的なイベントのため、サラの家は参加したことがありませんでした。
そして、自分の思いを両親に伝えなければなりません。
それからサラは一生懸命メインの役の練習をしました。
イベント当日、見事に役を勤めることができ、両親にも見せることができました。
そして、自分の気持ちをしっかりと両親に伝えることができたのです。
一緒に見ていた祖母が一言「許してあげなさい」と言いました。
その日以来、両親は少しづつ変わっていきました。
サラは自分の心の中で押さえつけられていた宝物を見つけました。
宝物は自分の心の中にあったのです。
それは自分が勇気を持って行動し、そしてハプニングによって気づかされました。
サラはとても嬉しく感謝の気持ちでいっぱいでした。愛にあふれた気持ちでした。
サラは今、自分がこういう自分でいたい!という自分になり、本来の自分を取り戻して暮らしています。
両親は家系を守ることに必死でしたが、祖母が「それはもういい。あなたたちも自分の心を大切にして」と言いました。
そして両親もまた、自分の宝物を探しはじめています。
メイドさんはそんなサラの家を温かく受け入れ、サラの家は島に溶け込んでいくことができました。
おしまい
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