伝統と革新を融合した漆工芸「大下香仙株式会社の商標登録事例」
東京商工会議所が紹介する「知恵を『稼ぐ力』に ~100社の舞台裏~」では、日本の企業が独自の知恵や工夫を活かして成長している事例が紹介されています。その中の一つが、石川県加賀市に拠点を置く漆工芸大下香仙株式会社です。
この企業は、伝統的な漆・蒔絵の技術を活用しつつ、新たな価値を創造しています。特に、適切にブランド名を商標登録することで自社ブランドを保護しつつ、事業展開を進めている点が注目されています。
漆工芸大下香仙株式会社の歩みと商標登録の重要性
1894年に創業(2022年法人化)した漆工芸大下香仙株式会社は、代々受け継がれてきた漆・蒔絵の技術を活かしたアクセサリーの製造・販売を行っています。現代表である5代目の大下正之氏は、従来の漆器や和装小物だけでなく、現在の主力製品であるアクセサリー事業を展開。伝統と革新を融合させた新しいビジネスモデルを生み出しました。
事業の拡大に伴い、大下氏はブランド展開を進める上で商標の登録が不可欠であることに気付きました。自社ブランドを守るため、国内だけでなく海外でも商標登録を行いました。これは、ブランドを模倣から守り、安心して事業を拡大するための重要な一歩となりました。
商標登録への挑戦とその背景
漆工芸大下香仙株式会社は、4代目の時代から「Classic 香(クラシック コー)」というブランドを使用していました。このブランド名は、「時代に左右されない」という意味の「Classic」と、代々継承されてきた雅号「香(こう)」が組み合わされたものであり、独自性が強調されています。
当初、大下氏は、別のブランド名を検討していました。しかし、その名称が既に他人に商標登録されていることを知り、新たなブランド名の検討の結果、生まれたのが「Classic 香(クラシック コー)」です。また、これが大下氏が知的財産権を意識するきっかけともなりました。
大下氏は、事業の成長とともに商標の登録を考え、石川県産業創出支援機構(ISICO)のサポートを受けながら、手続きや書類作成を進めました。国内商標を登録するだけでなく、海外展開に向けて、中国でも「Classic Ko」商標を登録したことは、今後の国際展開を見据えた大きな一歩となっています。
また、中国での商標登録にあたり、国内商標の見直しを行ったことにも着目すべきです。現在は、国内も「Classic Ko」ブランドで統一されているようです。
Classic Ko\香
Classic Ko
東京商工会議所が注目する理由
漆工芸大下香仙株式会社の事例が東京商工会議所で紹介されている理由は、次世代経営者が商標登録を通じてブランド保護と事業拡大を実現した点にあると思われます。多くの企業が商標登録を行わずに事業を展開している中、同社は早い段階で知的財産権の重要性に気付き、積極的にブランド名を商標登録しました。これにより、自社ブランドを模倣から守り、事業の安心・安全な拡大を可能にしています。
また、商標登録の取り組みは、ブランド価値の向上だけでなく、将来的な海外展開や事業変更にも柔軟に対応できる体制を築くものであり、他の中小企業にも強いメッセージを発信しています。
まとめ
漆工芸大下香仙株式会社の事例は、伝統を大切にしながらも革新を追求し、知的財産権を活用して新たな価値を創造している成功例です。特に、ブランド展開を行う際に商標登録がマストであること、そして海外展開や事業拡大際には知的財産権の見直しと事業範囲をカバーする手当が必要であることが分かります。
このような商標登録の取り組みは、ブランド価値の向上だけでなく、将来的な事業展開の礎を築くものとなっており、他の中小企業にも強いメッセージを発信しています。
中小企業や若手経営者にとって、漆工芸大下香仙株式会社の事例は、ブランド保護や海外展開を考える上で大いに参考になるでしょう。商標登録を通じてブランドを守り、事業のさらなる発展と未来の可能性を広げてみてはいかがでしょうか。