【読書】森田真生「数学の贈り物」
この著者はすごい。
僕と同い年。
同い年って、逃げ場がない。
言い訳できない。
いったいどうやって34年間過ごしてきたら、こんなふうに知性を磨けたんだろう。
著者は在野で活動する独立研究者。
数学者でありながら、その教養の広さったらもう!
「文系理系なんて関係ない」「教科を横断して」とかいろんな本に書いてあるし、
僕もその通りだと思うし、生徒にもそう伝えてるけど…
それをほんまに体現してる人にはじめてお目にかかった気分。
この人の前では、学問領域の区分なんて無いに等しい。
世界と、人と、自分とを、「知」があらゆる方向から繋いでいるような。
それでいて、生命に対するまなざしのあたたかさ。
智に働けば角かどが立つ。情に棹さおさせば流される。…とかくに人の世は住みにくい。
とは夏目漱石「草枕」の冒頭だが、
著者にとって「知」と「情」は二律背反ではなく、むしろ相乗効果を生み出しているように思える。
溢れる知性が生命への愛情を支え、生命への愛情が知性を育んでいる。
一言でいうと、最高に素敵な人だなと思いました。
この本は全19篇のエッセイ集です。
晩酌をしながら毎日1〜2篇ずつちびちび読んでいます。
至福。
基本的に僕は人に憧れるということを自ら禁じてきた。
「すごいなー」というのは「俺には無理だけど」を含んでいるようで、それは自分が成長しなくて済むための言い訳になってしまうように感じていたから。
でも、森田真生さんの文章を読んでいると、僕はただこれまで憧れる人物に出会ってなかっただけなのかなと思い始めた。
尊敬する人はこれまでもいたけど、やっぱりみんな僕より年上で、いつか追いつけると思える余地があった。(一方でこう思える自分が怖くも恥ずかしくもある)
でも相手が同い年となると話は別だ。
同じ歳月を生きてきたのに、ものすごい距離を開けられている。
これを自分に許すのか、おい!?