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『有機農と自然農とパーマカルチャー何を学べばいい?』インテンシブファーミング、ナチュラルファーミング、ガーデンファーミングと「パーマカルチャー“持続可能な暮らしや社会を作るデザインシステム”」の違いとそれぞれの乗りこなし方。

自分にパーマカルチャーの世界のことを伝えてくれた飛騨の一人の先輩で「やさいくん」という名まえで活動していた人(今は、養蚕に携わっています。)の言葉で核心をついていた言葉があります。「自然は、それ自体で土壌を豊かにしていって、その時間の流れに人間が合わせてあげるのが自然農で、その時間を人間が働きかけて加速してあげるのが有機農」という風に彼は語っていました。

この言葉は、かなり核心をついていて、例えばあなたが野菜を売って生計を立てている農家さんであったとしたら、自然農の時間で生計を立てるためには、選んだ土地のポテンシャルやどういう歴史をたどってきたか、またそこに生態系ができて、だんだんと土壌が豊かになってきてというその場所の時間にあわせてあげなければなりません。その時に、自分の暮らしに必要なニーズを満たせるだけの作物や現金収入、時間が確保できるのかが問題となってきます。それが「土地の時間を早める」ことによって解決するのであれば、有機農という手段で土壌を肥沃にしていくことが、アプローチの一つとしてあります。

何が有機農でその目的なのか?有機農の目的は何か、という厄介な問いがそこにはありますが、これらを束ねる概念として、バイオインテンシブファーミングとナチュラルファーミングで対比するという方法をデイビッド・ホルムグレンは、レトロサボービアの中で提唱しています。介入を最小限にして、基本的に資材をいれずに、土を耕すことをせず、自然の時間で行うのがナチュラルファーミング、有機資材を入れることつまり生態系の資材を集中させることによって土壌が豊かになる時間を加速させるのが、バイオインテンシブファーミングとざっくりした理解で捉えてもいいと思います。

さて次に、ガーデニングファーミングとは何か?ということを定義しておくと理解が助けられると思います。基本的に「畑」という言葉をきくと、日本では住居と畑は分断されていて、「農地」と区画された独立した土地に畑があり、そこで生産活動を行うイメージが強いと思います。畑付きの家という言葉があるように、家、庭、畑は別物であるという概念がある身体感覚を私たちは持っています。ガーデニングファーミングは、庭それ自体が畑であるというような感覚であり、それはコンポストや水の再利用などを家や「私たちの暮らしとも直結する形での食料の生産活動」として把握することが良いのではないでしょうか。

さて、デイビッド・ホルムグレンがナチュラルファーミングとインテンシブファーミングを区分けしたのは、このようなイメージがパーマカルチャーについて先行していたからでした。「パーマカルチャーは、労働時間が少なく、生産性が上がって、資材も入れずに多くのものを作ることができる有機農業の魔法の杖を手にいれて、それを学べば楽に農的な暮らしができるらしい」というイメージです。パーマカルチャーが行った仕事の大きな成果の一つは、家、庭、畑と分断されていたものを、生態系の繋がり、またデザイン思考によって統合したデザインを書けるようになったことであり、その結果として作物の収量が上がり、今まで慣行農法の選択肢しかなかった世界に自然農の概念が持ち込まれて、資材の投入が少なくとも、労働時間に対して生産性が上がったりする効果が期待できるようになりました。

つまり「パーマカルチャー」というどこにでも適応できる魔法の農業のやり方が、収穫量や労働時間を変えているわけではなく、作物を育てるのは土壌と野菜の持つ力であり、その環境を整えてあげるのが人間であり、その人間の労働や環境を整える時間は、それぞれのおかれた制約条件や手に入る生物資源や持っている資本や繋がり、時間に制約されて生産性が決まってくるということは、変わりはないのです。

自然農・ナチュラルファーミングを学ぶ上では、自然農を行うことができる環境とリソースがすでにあり(ex収穫物に収入、食糧依存をしないで、長期的な時間をかけられるなど)生態系を豊かにしつつ、管理ができる人にとってはとても有用なやり方です。

バイオインテンシブファーミングを、学ぶ上では生計やある程度の食料を立てるだけの目的があり、構造物や資材を手に入れる手段や資本があること、また生活や動物との有機的な繋がりを含めて食料生産に取り組みたい人にとっては有効なやり方です。一方で、有機農というだけあって資材を投入する畑をやりたいだけではなく、家畜やぼかしづくりなどの有機的な繋がりをいろいろなものから作ろうという時には、構造物や家畜の世話、発酵などの手段やそのデザイン性が求められます。

ガーデニングファーミングを行う上では、住居の一角に構造物、もしくは畑を作ろうというためには、暮らしの場所の一部と生活習慣、導線など暮らし方や習慣に関わってくることが大きくなります。そのため、よりデザイン性やどのような収穫物を得られると自分が幸福であるのかということなど、棚卸ししなければならないことが多くあります。そのため、パーマカルチャーのデザイン思考を学ぶことによって、ゾーニングの概念や構造物がある中での日照、また水を得る手段や温室など考えなければならないことが増えてくる上に、それが日々の暮らしのクオリティを決めてくるので、より注意深い観察と丁寧な介入が必要になります。

以上ならべてみると、農業に関していえば、パーマカルチャーのデザインの力が発揮されるのは、畑以外の要素を多く含んだ有機農やガーデニングファーミングでその力が多く発揮されるということがいえるでしょう。これは「農業の手法を学ぶ上で」ということに限定したことです。一方で、むしろ私たちの暮らしのニーズや、仕事やプロジェクト、地域での活動の成否を決めてくるのは、必ずしも農業による生産物がすべてを解決してくれるわけではありません。ガーデニングファーミングを行う上でも、そもそも、ここにどれだけのガーデンが必要で、私が暮らしに求めているニーズは何だろうか?ということを深く問うこと抜きに初めてしまうこともよくあります。また、それがプロジェクトとして多くの人が関わることであればあるほど、なんとなく水を集めて生産できる場所があって、エコな手法で構造物をつくってということを私たちはしてしまいがちです。

このデザインは誰のどんなニーズを満たすのだろうか?本当に地球や人々をケアしていて、もっとケアが必要なものや人がいないか、本当にフェアな世界を多くの声明で分かち合い活かしあう繋がりを作ることに貢献して、私の本当の願いはかなうのだろうか?という問いに初めに深く向き合えているのか、ということがとても大切になってきます。

畑という要素を一つとっても、それは私たちの様々なニーズを叶える場所でもあります。食糧を食べることというニーズだけではなく、友達に分かち合うこと、自分が作業することによってこの場所に必要とされていると感じること、人と集う場所、誰かの仕事や楽しめる場所を作ること、自分自身の暮らし方の表現であることなど、多くのニーズが含まれていることがあります。一方で、同じ生産で切る場所を作ったとしても、一つのニーズがきちんとかなうためのデザインはほかのニーズを叶えないというトレードオフの関係にあるものも多くあります。例えば生産性を上げるように耕地を広げることによって、人が快適に集う場所を減らすなどのことが生まれてきます。

ここで大事なこととして深いニーズにつながっていることをきちんと言語化できることが必要です。これは、「コンセプト」ともいえるかもしれません。自分一人の場合でも、自分が何を望んでいるのか、言葉未満の感覚で捉えて何かをすることもできますが、プロジェクトやそれ以前に誰かに何かを頼む、一緒にやるなど他者がいるうえではコミュニケーションのツールとして「言語化」ができていた方が、ここは何であって何でないのかということがはっきりとして不要な暴力的なコミュニケーションが省かれます。

具体的な良いコンセプトを出すためには、知識や経験、身体知などが集まればより良いコンセプトがかけるようになってきます。以前のブログに書いた、コンテキスト、ハビット、エシックス、システム、エレメントなどの5つの要素を学ぶことによって、自分のニーズと土地が最大限かなえられることが引き出されるようになってきます。そこに集う人の理解やコミュティへの理解、また環境や地球への理解が深くなればなるほど良いシステム、場所、社会のデザインができるのだと思います。

UNITEDの扱うパーマカルチャーのプログラムでは、ナチュラルファーミング、バイオインテンシブファーミングの詳細な手法に関しては、そこまで時間を割きません。それは、ほかの多くの事業者や個人の学びでも、多くのことを学べることであり、またそれぞれの土地の文脈が全く違い、同じやり方を同じようにやってうまくゆくというものではありません。プログラムが終わってから個別の土壌、気候のケースで自分の場所をガーデニングファーミングの手法を伴走するのが一番いい形ではないかと今は考えています。

パーマカルチャーのデザインの理解もしつつ、むしろコンセプトの根っこを伸ばすようなことに時間を割くので、個人で例えば畑や土地が無くても、地域社会や仕事のプロジェクトなど有機的なものを対象とするとき、自然と関わって生きていきたいとおもっているとき、また自分の人生で大きな選択をするときに、パーマカルチャーを学ぶことによって、とても有効な学びを得られると思います。とはいえ、2024年の2月のプログラムでは、インテンシブファーミング、ナチュラルファーミングをコミュニティで行っているアジア学院を開催場所とするので、それらの詳細について深くつっこんで理解することも、もちろんできます。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

参加者まだまだ募集していますのでぜひご検討ください。

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UNITED 松村岳史
フリーランス、専業で活動していますが、パーマカルチャーの記事、書き物等、基本的に無料で公開しています。仕事に充てられる時間を削って執筆しているので、もし、活動に心を動かされた方がいたら、1000円から7000円のスケール型のドネーションでご支援いただけたらとても嬉しいです。

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