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「わたなれ」の感想と、好かれる主人公の話

※本稿は「わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)」4巻までのネタバレを含みます。あらかじめご了承ください。

はじめに

 こんばんは。今日は創作論と感想の中間地点くらいの話を書いていきたいと思います。

 これ、ずっと書きたいと思っていたんですけど、まとまり切らないわ、そもそもどういう形で出せばいいか分からないわで大分悩んでいました。
 それを「取り合えず書いてみよう」ということで今ワードを開いてカタカタとやっているという訳です。
 ちなみにこの形式に至るまでに創作論として筆をとって、数千字の文章を没にしています。四万字近いとこまで書いて未公開の小説もあるからセーフ。何がセーフなのかは不明。

 今回書いていくのは「わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)(以下「わたなれ」)」の4巻までの感想なんかと、この作品を見た上で改めて考える「優れた主人公」って何よっていうことに対するちょっとした自分の仮説みたいなものです。長くなると思いますが、最後までお付き合いいただけると嬉しいです。ちなみに「わたなれ」を読んでくれるともっと嬉しいです。 

 それでは、秩序の無い話になるかとは思いますが、よろしくお願いいたします。

「わたなれ」との出会いから3巻を読むまで

 「わたなれ」との出会いは友人から勧められた、ということでした。その時は正直「言っても俺よりもハードルが低いでしょ?俺がハマるかどうかは分からないと思うけどな~」と思って余り気が進みませんでした。
 昨今のラノベに関しては正直諦めているところがあるので仕方がないといえば仕方の無い反応。
 だけど、しきりに勧められたことと、「3巻が良かった」という評価を聞いて「取り合えず1巻は読んでみるか……」と思い、買いに行き、読み進めました。

 先に結論から言うと、この時点では「当落線上」でした。ラストのまとめ方は結構好きで、その部分は個人的には気に入ってるんですけど、道中の部分は割と「読むのを続ける」と「やめる」を反復横跳びするような感じ。いわばボーダーライン上をずっと綱渡りしているような状態の話でした。
 だけど「これを起点に三巻が面白いっていうのなら、読んでみるかなぁ」と思い、2巻と3巻を購入して読み進めました。

 流れが変わったのは2巻です。この内容を見た時自分は「おっ」となりました。自分の評価で言えば「Aランク」。つまり、割と高評価に値するレベルの話だったのです。

 正直当初の予想では「2巻くらいの話」が3巻で展開されると思っていたので結構驚いたのと共に、3巻への期待感が高まりました。これと比較して「3巻が良かった」というのであれば、期待が出来るぞ、と。そう思いました。

 結果から言えば、その見立ては正解でした。

 3巻はここ数年でも上から数えて数番目くらいの最大瞬間風速で、同じくらいの衝撃があった作品と言えば「かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜」の19巻と、「竜とそばかすの姫」くらいでしょうか。
 それ以外だとかなり遡ることになるくらいで、大分上の方。それを見たこともあって、近々発売予定となっていた4巻への期待も高まりました。

「わたなれ」4巻という評価の難しい巻

 待望の4巻。発売日には購入が出来なかったものの、翌日には購入。その日のうちに読了。

 そして、意外なことが起きました。「わたなれ」を勧めた友人と、自分の評価で、自分の方が高評価なのです。
 基本、ここ2人は自分の方が辛口になることが多いため、かなり意外……いや、下手をすれば初めての出来事でした。

 内容に関しては細かくは述べません。ですが、主人公は最終的に「ラブコメ主人公としてやってはいけない選択」をします。
 その選択が割と「物議をかもしそう」なのは作者も分かっていたようで、あとがきでそのような旨を書いています。

 もちろん、「あの選択」が全てのラブコメで許されるかと言えば大間違いです。普通のラブコメで主人公が「あの選択」をしたとなると、恐らく叩かれます。評価なんて駄々下がりで当たり前だと思います。

 けれど自分はそういう評価を下さなかった。何故か。それは「れな子(主人公)ならこの選択をしてもおかしくないし、悩んだ末なら責めることは出来ない」と思えるから。
 そして、それがヒロインたちを悲しませない選択肢でもあるというのが分かるから。

 シナリオの説得力というのは「キャラクター」が納得をするかどうかです。
 れな子がした選択に、ヒロインたちが皆、抵抗感を示す可能性が高い。そういう「キャラクター」が説明されていれば、れな子の選択で良い感じにまとまるのはただの「ご都合主義のクソシナリオ」だと思います。

 けれど、「わたなれ」の4巻。最後のあの展開全員が「そういう行動、反応をするだろうな」というのがそこまでの話から納得が出来る。
 だからこそ「ラブコメ主人公としてはありえない行動」でも「間違ってるとは言えない」という評価になって、自分の評価も「個人的には好き」かつ「今後次第だと思う」という好意的な保留になったんだと思います。

甘織れな子から見る「優れた主人公」

 自分は、優れた主人公というのは「こいつがハーレムを形成するのは当然だよな」と思えるキャラクターだと思っているところがあります。
 その定義で自分が「こいつならモテるよな」と思ったのは2人。「ソードアート・オンライン」キリトこと桐ケ谷和人と、「カミカゼ☆エクスプローラー!」速瀬慶司です。
 そして、「わたなれ」甘織れな子ここに並べる存在なんじゃないかと思っているのです。

 理由は正直ぼんやりとしたものです。だけど、彼女を見ていると「ああ、そりゃ好かれるよね」というのがよく分かるのです。例えば3巻の瀬名紫陽花視点のパートを見ると「なるほどね」となってしまう。

 でも彼女は完璧ではありません。上にあげたキリトや速瀬慶司(特に後者が顕著)は、基本的に無敵です。作中では「こいつなら絶対に何とかしてくれる」という安心感が持たれている。そんなキャラクターです。

 ではれな子はどうでしょうか。正直、そういう「万能感」はありません。
 成績も恐らく作中の中心人物の中で一番下で、中学生時代までは引きこもりの陰キャだったことを考えると対人コミニュケーションスキルも高くない。FPSは得意ですが、それ以外で特別なスキルを持っているわけではない。

 要素だけを並べると割と「ポンコツ」寄りのれな子。その彼女が好かれる理由はなんなのか。正直に言って、色々な理由はあげられるし、それらも一面でしかないのかなとは思います。

 けれど、あえて一つあげるのであれば「頑張っているところ」なのかなぁと思っています。

 ジャンプの三大原則は「友情」「努力」「勝利」だと言います。それらは今、そこまで叫ばれていないなんて話も聞きますが、この中で「主人公単体でなし得る可能性が一番高いもの」である「努力」がキーになってくるんじゃないかと思うのです。

 れな子は割と自分に甘いところはあります。でも、友達を傷つけまいと必死に悩みます。
 引きこもり陰キャだった自分も何とか変えようとして、結果トップカーストに所属するという結果を得ているという過程があります。

 これが巻き込まれただけの人間だとどうでしょうか。恐らくれな子ほどの好感度は無かったはずです。ハーレムとしても「そういうもの」として感じる可能性が高いです。

 上記の2人に話を戻すと、キリト原作2巻で努力の過程を覗くことが出来ます。速瀬に関しては割となんでも出来るものの、決して問題の解決を諦めず、試行錯誤する姿が随所にあります。
 ……まあ彼に関しては「恋愛に関しては子供」という部分が主人公としての魅力を出している気もしますが、今は置いておきましょう。

 きっと、優れた主人公像に結論はないのだと思います。けれど、れな子の持っている「努力している/していた姿」というのは主人公としての魅力を高めるのに効果的なんじゃないかと思ったりもするのです。

優れた主人公は可愛い

 「わたなれ」には複数の魅力的なヒロインが登場します。その中でれな子は正直スペック的には劣っているという表現をされがちです。

 だけど、あの作品で一番可愛いのは誰だろうと首をひねったときに頭に浮かぶのはれな子なのです。

 それで思うのです。優れた主人公というのは可愛いと感じる要素を持っているのではないかと。

 もちろん。男性が男性主人公に「可愛い」とは思わないかもしれません。
 だけど、よくよく思い出してみると、魅力的とされる主人公が何故か総受けとなる二次創作が多いことに気が付きます。あれらも「魅力的=可愛い」という証左なんじゃないかと思ってしまいます。

 自分は読み手であり書き手です。そして、主人公についてはずっと悩み続けてきました。
 それは特徴をつけすぎると嫌われる。けれど特徴をつけないと魅力がない。そのバランス感覚です。

 だけど、れな子を見て思うのです。もしかして「可愛いと思えるならそれは優れた主人公なのではないか」と。
 実際自作でも、自分が可愛いなと思える(TSFなので心の方は男ですが)主人公は、割と評判が良いです。

 それが一体何の証明になるのかは分かりませんが、主人公に魅力的な特徴をつけるにはどうしたらいいのか。その答えがれな子にあったような。そんな気がしています。あまり褒めすぎるとれな子は調子に乗るのでこの辺にしておきますが。

おわりに

 と、いう訳で「わたなれ」の感想と、優れた主人公についての話でした。

 ぶっちゃけこの文章は何を言いたかったのかと言われると「さあ?」となってしまうくらい自分の中でもまとまりのないものです。

 一つだけ言えることがあるとすれば「わたなれ」は面白いぞ、ということくらいでしょうか。
 今後4巻の選択がどういう結末につながるか次第では評価も動くとは思いますが、3巻は必読だと思っております。
 あれを見るまで紫陽花さんみたいなキャラクターは正直魅力を感じていなくて、自作でも出さなかったのですが、あれを読んで以降は「あ、こういうキャラもいいよね」となりました。

 キャラクター性癖の劇的ビフォーアフターが起きる作品は自分の人生でも2度目。1度目は「月に寄りそう乙女の作法」で今回が2回目となります。

 それくらいの作品ですので(1、2巻を読む必要がありますが)よろしければどうぞ。という感じで。 

 それでは、また。感想を書く時があればお会いしましょう。


「わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)」

原作

漫画版

※全て電子書籍版です。リンクから紙媒体を選ぶことも可能です。

その他参考作品

※カミカゼ☆エクスプローラー!のみ公式サイトに飛びます。


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