「活撃 刀剣乱舞」の第2部隊の全セリフをテキストマイニングを使って分析した。~前編~
※冒頭から最終話の内容に関するネタバレが含まれます。予めご了承ください。
■はじめに
TVアニメ「活撃 刀剣乱舞」と、そのコミカライズ版であるマンガ「活撃 刀剣乱舞」は、ほぼ同じストーリー展開をします。
ですが、主人公の和泉守兼定は、最終話で三日月宗近にある問いを投げかけられた時、アニメとコミックで全く違う結論を出しました。
ほぼ同じストーリーなのに全く違うキャラクターが確立したように見える。
どういうことだろう?これって統計的に説明できたりしないかな?
…というわけで「活撃 刀剣乱舞」の全セリフをデータ化し、
主人公チームである「第二部隊」に属する
6振りの刀剣男士(和泉守・陸奥守・堀川・薬研・蜻蛉切・鶴丸)について
セリフの特徴を見つけ出し、比較し、物語内で果たした言葉の役割について考察してみようと思います。
前編である本稿では、
各キャラのセリフ内における頻出語ランキングと、
データの偏り(アニメ版にしか出ない言葉、コミック版にしか出ない言葉)についての調査結果を発表します。
■免責事項
この記事は「活撃 刀剣乱舞」のいちファンである筆者が、
TVアニメ「活撃 刀剣乱舞」(以下、アニメ)と、
そのコミカライズ版であるマンガ「活撃 刀剣乱舞」(以下、コミック)について、テキストマイニング的な観点で分析および考察したことをまとめたものです。
第1弾の「映画 刀剣乱舞」の分析時と同様、
今回の調査でも、計量分析ソフトウェア「KH Coder」をメインウェポン、
オンラインツール「ユーザーローカルテキストマイニング」をサブウェポンとして使用しております。
いずれも学術的研究にも使われているものですが、筆者が算出したデータやその解釈について、学術的な妥当性や、公共的な信頼性は一切保証いたしかねます。あくまでも、いちファンが趣味の一環でまとめた感想考察として受け取っていただけますと幸いです。
文章の性質上、本編の内容に関するネタバレが大いに含まれます。お気を付けください。
■今回の分析対象について
・TVアニメ「活撃 刀剣乱舞」全13話
・コミック「活撃 刀剣乱舞」全25話
活撃 刀剣乱舞1 (2017,原案:「刀剣乱舞-ONLINE-」より/著者:津田穂波,集英社)
活撃 刀剣乱舞2 (2018,原案:「刀剣乱舞-ONLINE-」より/著者:津田穂波,集英社)
活撃 刀剣乱舞3 (2018,原案:「刀剣乱舞-ONLINE-」より/著者:津田穂波,集英社)
活撃 刀剣乱舞4 (2019,原案:「刀剣乱舞-ONLINE-」より/著者:津田穂波,集英社)
活撃 刀剣乱舞5 (2019,原案:「刀剣乱舞-ONLINE-」より/著者:津田穂波,集英社)
アニメとコミックにおける全てのセリフを文字起こしした後、
分析対象の6振りの刀剣男士のセリフを抽出しました。
仮名遣いはコミックでの表記、そして原作ゲーム「刀剣乱舞-ONLINE-」のセリフ表記に準拠する形で、可能な限り統一しました。
なお、アニメの次回予告のセリフは、本編に直接影響を及ぼさないものとみなして除外しました。
■使用ソフトウェア・オンラインツール
・KH Coder(ver.3.Beta.01g)
・ユーザーローカル テキストマイニングツール
・日本語品詞分解ツール(ver.3)←New!
@koni様の開発によるオンラインツールです。主に陸奥守のセリフの品詞分解に使わせていただきました。
分析は全て64bit版のWindows10上で行っています。
■補足
分析にあたり、データに処理を施しています。
こちらは「映画 刀剣乱舞」の時と同様の処理になります。
・助詞、感動詞、擬音など、単体で意味をなさないと思われる単語は除外
・「刀剣男士」など、一般名詞ではないが作品特有の固有名詞は、分析対象となるように設定する
・「和泉守」「兼さん」「和泉守殿」「和泉守兼定」…など、同義語は1つの語として分析されないようにする
・データ抽出時に混ざる可能性が高い「命(いのち)」と「命(メイ)」は
別々に分析されるように設定する
そして、今回は2つ新しく処理を加えました。
①デフォルト設定では分析対象から除外されている
ひらがなのみで構成される副詞、形容詞、名詞(「どうして」「もし」「なぜ」etc...)のうち、出現頻度が高いものは分析対象として強制抽出する
ある日、データを作っていた筆者は思い出しました。
今剣という刀剣男士はセリフの9割9分がひらがなであるということを…!
つまり、ひらがなのみで構成される語も、キャラクターの特徴語になり得るということを…!
…というわけで、ひらがなのみで構成される単語の一部も分析対象に設定しました。
なお、ひらがなのみで構成される動詞は、今回のデータを確認した限りでは特徴語にはなり得ないと判断したため、分析対象から除外しました。
②デフォルト設定では分析対象から除外されている代名詞(「俺」「僕」「わし」「おまん」「君」etc...)は分析対象として強制抽出する
代名詞も分析対象に組み込んでみました。
これは堀川のセリフにおける、とある予想と仮説を立証するためです。
その結果は後述の「分析結果③」で示します。
なかなか興味深い結果が出ましたよ…(ΦωΦ)フフ…
■裏話など
今回で第2弾となる「刀剣乱舞×テキストマイニング」ですが、
実は今回の「活撃 刀剣乱舞」が第1弾、「映画刀剣乱舞」が第2弾になる予定でした。アイディアを思いついたのは活撃の方が先だったのです。
ですが…活撃はテキスト量が尋常じゃなかった。
30分枠のTVアニメ×13本+コミック5冊。
文字数にして8万字超。
アニメ活撃は戦闘シーンがほぼ毎話数あり、雄叫びなどアドリブと思しき部分も非常に多いのです(特に和泉守)。
さらに、陸奥守の土佐弁なまりのセリフは音声入力上で品詞分解することが極めて困難でした。シナリオブックが存在しないので、聞き取れなかった語は分析にかけることはできません。注意深く何度も見返し、聴き直しました。
「映画 刀剣乱舞」の記事でも書きましたが、Googleドキュメントの音声入力には頼れなかったので、ほぼほぼ手打ちでデータを作りました。
作業を始めたのは確か3月頃だったのですが、終わりがあまりにも見えず、
記事を書き始める前に私のパッションが尽きそうになりました。そのため、努力を無にしないためにも先にデータが完成していた「映画 刀剣乱舞×テキストマイニング」を記事にまとめ、第1弾として公開したのでした。
第1弾の記事は、たくさんの反響と好評をいただけました。お読みくださった皆さま、感想をくださった皆さま、本当にありがとうございます。お陰様で活撃の記事も公開することができました。
それでは、さっそく結果を見ていきましょう!!!
■分析結果① -「語」の多さと「語彙」の多さ-
ここでは「どのキャラがよく喋っていたのか」
「どのキャラの語彙が豊富であったか」について見ていきたいと思います。
アニメ、コミック共に総抽出語、異なり語の数が最も多いのは和泉守兼定でした。
発言数と、それに伴う語彙も一番多いということですね!さすが主人公!
和泉守はアニメとコミックの総抽出語の数値に極めて大きな差が生じていますが、これは非言語的な音声の有無によるものです。
役者の芝居の特徴によるものか、スタッフの指示によるものかはわかりませんが、アニメの和泉守は「ん…」「ん」「っ…」「ふ…」みたいな吐息の芝居が多いんですよ。
あと、和泉守は戦闘シーンでよく叫んだり吼えたりしますので、それも影響しているのではないかと思います。
逆に、総抽出語、異なり語がもっとも少なかったのは鶴丸国永でした。
彼はこの中で唯一、5話からの登場したキャラです。それを鑑みると納得の結果と言えますね。
鶴丸に次いで総抽出語、異なり語が少ないのは薬研藤四郎でした。
薬研は1話から(コミックでは2話)の登場だったにも関わらず、この数値。鶴丸とほぼ変わらないですね。確かにクールで寡黙な印象はありますが、そんなに喋らなかったっけ…?
アニメの映像を確認してみると、薬研は他のキャラに比べて、カメラに映り込む機会が少ないように思います。
画面に映っていないところで作戦行動を取っていることもありますね。
(アニメ4話で単身軍艦に乗り込んだりしているのとか)
また、彼はカメラが回っているところでも発言せずに佇んでいたり、他キャラの会話の様子を見守っていたりします。
劇中で「隊長の指示には従う」と言うことがあるのですが、まさにそれを地で行っている感じですね。
なお、薬研は、異なり語の割合が最も大きいキャラでもあります(僅差で鶴丸が2位でした)。
「異なり語の割合が大きい」とは、どういうことかというと、
同じ言葉を何度も使わない傾向にあるということです。
今回のテキストマイニングは頻出語に注目して調査をしているので、薬研と鶴丸は思ったような結果が出にくいかもしれませんね…気を付けてみていきたいと思います…
さて。
アニメとコミックを比べてみると、アニメよりコミックの方が総抽出語、異なり語の数が全体的に低くなる傾向にあります。
この数値の差は何か?
データを確認してみたところ、どうやら戦闘シーンの数、尺の長さと、それに基づいたアドリブのセリフの数が大きく影響しているようです。
アニメにあって、コミックには無い戦闘シーン…
…ありますね。1話からありましたね。
和泉守が枯山水の庭で時間遡行軍と戦うシーン(筆者のお気に入りシーンでもあります)は、コミックの方にはありませんでした。
なお、唯一の例外が鶴丸です。
総抽出語、異なり語ともにコミックの方が多いです。
鶴丸はコミックで出番が増えているので、単純にそれが数値にも現れたのだと思います(たとえば、アニメでは和泉守&堀川が見回りをしていたシーンは、コミックでは鶴丸&堀川になっていました)。
■分析結果② -アニメ・コミック 頻出語ランキング-
キャラのセリフの中で、どういう言葉が多く使われていたかを確認します。アニメとコミックの比較もしてみました。
▼②ー1.和泉守兼定
アニメのランキングでは、刀剣男士の使命に直結する語「歴史」が1位に。
対して、コミックのランキングでは、相棒である堀川国広の呼称「国広」が1位になりました。
■1.名前呼びと「お前」呼び
アニメのランキングで「陸奥守」が「蜻蛉切」よりも下位だったことが意外だったので、元データをもう少し詳しく確認してみました。
アニメのランキングに注目してください。
「お前」という語が入っています。
これは、和泉守が主に陸奥守、堀川、薬研に呼びかける時に使っていた語です。
つまり、この「お前」呼びと名前呼びを合算すると、和泉守が誰にどれくらい呼びかけたか、その回数をより正確に知ることができます。
堀川が最も多く58回、次いで陸奥守29回、その次が蜻蛉切で14回…でした。
したがって、アニメの和泉守は陸奥守に対しては「陸奥守」呼びではなく「お前」と呼ぶことが多い…ということがわかりますね!
名前に関する結果ということでこれも書いておきたい。
第二部隊以外の刀剣男士で、和泉守との間に意味深な関係性を持つキャラがいました。「三日月宗近」です。
しかし彼に関する語はコミックのランキングにのみ入りました。アニメの和泉守は三日月の名前を3回しか呼んでないのです…ちょっと意外でした…
三日月宗近は平安時代より伝わる古刀。対して土方歳三佩刀の和泉守兼定は江戸時代に作刀された比較的新しめの刀です。和泉守が土方歳三の腰にあった時、三日月は徳川将軍家にいたはずで、この二振りは歴史上で直接出会ったような記録は無い…はず…
…だから、この二振りの間に何か関係性があるとしたら、それは活撃の独自設定に由来する可能性が高いのですよ…!
なんだろう…三日月は第一部隊でも一目置かれているし、皆の相談役的な感じなのかしら?三日月と和泉守が師弟関係だったとしたら面白いですね…!
活撃は未だ明かされていない世界観設定が多々あるように思いますので、劇場版でその辺りを知ることができたらいいなぁと筆者は思っています。
■2.刀剣男士以外の語
護衛対象である「坂本龍馬」や、勝海舟が参画していた「会談」よりも、和泉守の元の持ち主である「土方歳三」に関する語が上位に来ています。
土方歳三に関する語がどの辺りから増えたのか?については後編にて発表予定です。
■3.「どう」と「そう」
そして、個人的に活撃の和泉守は「どうする…?」と自問自答したり、
「そうだな」と相手の意見を受け止めたり、賛同したりする印象が強かったので「どう」と「そう」を強制抽出するように設定してみました。
(※「そう」は「そうか」「そうだ(な)」「そうじゃ(ねえ)」で区別)
…そうしたら、2つともランキング上位に入ったので、ちょっと興奮してます…
「どう」と「そう」が物語のどの辺りで使われていたか?については、後編にて発表予定です。
▼②ー2.陸奥守吉行
■1.「刀」と「銃」
陸奥守のランキングにおいて個人的に気になっていたのが「刀」と「銃」がどの位置にランクインするか、ということでした。
日本人として当時いち早く拳銃を手に入れ、実戦でも使用した坂本龍馬のエピソードは、刀剣男士「陸奥守吉行」のキャラクター性にも組み込まれています。刀剣男士ながら「銃は剣より強し」って言っちゃう。強烈ですねぇ。
…ですが、頻出語TOP30のランキングに「銃」は入りませんでした。
分析データを確認してみると「銃」って2回しか言ってませんでした。むしろ「船」の方が多かったです。
「銃」は、活撃・活コミの陸奥守吉行の特徴語にはなり得ない可能性が出てきました…
■2.「どう」する…?
活撃の陸奥守も、和泉守と同様に自問自答しているシーンが見られます。
「こんな時、和泉守ならどうする…?」みたいなことを、ちらほら言っている気がするなぁと思ったので、確認してみました。
そうしたら、上のような結果に。
和泉守はアニメ・コミックともに「どう」が上位に入っていましたが、陸奥守は大きな差が出ていたんです。この違いは、後編で詳しく分析したいと思います…!
▼②ー3.堀川国広
先ほど、筆者はこのようなことを書きました。
「代名詞」も分析対象に組み込んでみました。
これは堀川のセリフにおける、とある予想と仮説を立証するためです。その結果は「分析結果②」で発表します。
その結果がこちらになります。
見てください…!堀川が和泉守へ「兼さん」と呼びかけた回数を…!
堀川がいかに「兼さん」ファーストであったか…!
■1.「兼さん」
一人称は頻出語の上位に入ることが多い気がしていたのですが、
堀川の場合は「僕は―――」よりも「兼さん、―――」というセリフの印象が強かったので、もしかしたら「兼さん」が最頻出語になるのでは?と思い、分析してみた次第ですが…その通りでした…
いやはや……
この結果が出たその瞬間、色々な思いがこみ上げて頭を抱えました…
堀川は他のキャラと比べると、頻出語上位に並ぶワードがかなり似ているようですが(「どうして」「もし」「ごめん」の並びが胸に刺さります…)、
アニメで上位にあった「龍馬」は、コミックではかなり下位になっており、また刀剣男士「堀川国広」のアイデンティティの1つたる「相棒」「助手」というワードは、コミックではランキングに入りましたが、アニメでは圏外でした(確認したところ、「相棒」は3回、「助手」は2回という結果。かなり少ないですね…)
■2.「嬉しい」
「嬉しい」はコミックのランキングのみに入りました。
コミックの堀川は自分の感情をストレートに言い表すタイプなのかな…1話の初陣から「兼さんと一緒で嬉しい」って言っています…これはアニメには無いセリフです…
■3.「守る」
和泉守と堀川は「守る」というワードもよく口にするのですが、アニメとコミックで比較すると、その頻度に大きな差が出ているのがよく分かるかと思います。コミックだと「守る」と言う頻度がかなり下がっているのです…
なぜ頻度が下がっていたか?
そして、二振りは何に対して「守る」と言っていたのか?
後編の分析ではこの辺も掘り下げられたらいいなぁと思います。
薬研、蜻蛉切、鶴丸の結果においては、
出現回数の度数が3以上の語のみランキングとして掲載します。
(度数2の語まで拾ってしまうと掲載する語の数が膨大になり、またそのような語は頻出語とは言えないのではないか?と思うからです)
▼②ー4.薬研藤四郎
薬研は、1話(コミックでは2話)から登場したキャラクターのわりに発言数が少ないです。しかし、語の出現回数においてはかなり明確な結果が出ました。
活撃では1位タイだった「和泉守」が活コミではランキングギリギリの位置まで下がっており、逆に「堀川」が圏外から4位に入りました。
同じ刀派である骨喰藤四郎(=「骨喰兄」)がランクインしました。
個人的に、薬研は任務遂行に重きを置いているようなイメージがあるのですが「歴史」が上位に入らなかったのは興味深いです。
薬研は、主君である審神者のことを「大将」と呼ぶ刀剣男士なのですが、結果を見る限り「大将」と同じくらい「主」という言葉も使っているようです。
よくよく確認したところ、審神者と直接話すときは「大将」と呼んでいるのですが、審神者がいないところで審神者の話をする場合は「大将」と「主」どちらも使っています。
(なお、以前の自分の持ち主の話をする時は「前の主」と言っていました)
これがストーリー展開と関係あるものかどうか、後編の検証で分かったらいいなぁと思います。
▼②ー5.蜻蛉切
「活撃 刀剣乱舞」で誰かを「〇〇殿」と呼びかける刀剣男士は基本的に蜻蛉切です。
(※稀に鶴丸も「隊長殿」と言います。詳しくは分析結果③で示します)
ですので、蜻蛉切の結果表においては「○○」+「殿」で1つの単語となるようにしています。
蜻蛉切の結果において目を引くのが「大太刀」そして「槍」。
敵の「時間遡行軍」には刀剣男士と同様にいくつかの刀種がありますが、中盤のボス、そして蜻蛉切が乗り越える壁として設定されたのが「大太刀」です。それを意識している語が蜻蛉切のセリフの中には多く見られました。
「槍」というのは蜻蛉切自身のことを指す語として用いられていました。
「天下三名槍」とか「本多忠勝の槍」とかね。活撃の蜻蛉切は「自身が何者であるか」ということを意識しているし、自らに言い聞かせるために口にも出す個体なのだと筆者は見ています。
▼②ー6.鶴丸国永
活撃の鶴丸は「おい」って呼びかけている記憶が妙にあったんです。
ですので、強制抽出して分析に含めてみることにしました。
まさかこんな結果になるとは思わなかったです…こんなに言ってたんですね…
ちなみに他のキャラが「おい」と言っている数もカウントしてみたのですが、和泉守6回、陸奥守3回、薬研4回…ということで、やはり鶴丸が圧倒的に多いです。
ランキング上位で注目したいのが「驚く」というワード。
刀剣男士「鶴丸国永」を語るにあたって外せない単語です。
アニメのランキングでは「坂本龍馬」「和泉守」とともに2位タイですが、
コミックの方ではいずれも3位以下になっていました。
逆に、コミック版で出現頻度が上がっているワードもありますが、その中でも注目したいのが「堀川」。
鶴丸と堀川が会話するシーンは実はコミックの方が多いのです。そのことが関係ありそうですね。
この後、データの偏りの調査結果を発表しますが、鶴丸はどうやらアニメとコミックでセリフに含まれる語の違いがかなり大きいようです…
もしかすると、鶴丸は2作品の間で大きく異なるキャラクター性を持っているかもしれません。要注目です。
「だけ」という言葉がランキングに入っていますが、鶴丸はこの言葉を用いる時、かなり特徴的な使い方をしていました。
「〇〇しただけだ」…など、自分は大したことはしていない、というようなニュアンスで使っていたのは、作中では鶴丸だけでした。
■分析結果③ -アニメ・コミックそれぞれにしか登場しない言葉-
ここでは「アニメのセリフで使われた単語」と「コミックのセリフで使われた単語」の偏りや違いについての検証結果を示します。
▼③ー1.和泉守兼定
※青が名詞、緑が形容詞、赤が動詞、グレーが感動詞・その他です。
和泉守のセリフでは「がる」「てめぇ」「くれる」「ちまう」などの品詞分解がうまくいっていないですが、そのまま掲載しています。
■アニメのセリフのみに登場する語
騒々しい:ったく…騒々しい奴だ
2話。蒸気船にはしゃぎながら宿を飛び出していく陸奥守に対して。
こら:…て、こらあ!
3話。陸奥守との口論にて。陸奥守が新撰組を貶すような発言をしたのでカッとなった。
懐かしい:懐かしい?
4話。懐中時計を持つ和泉守へ「懐かしいね」と言う堀川に対して。
辛い:会えば辛くなるだけだ
10話。土方さんに会いたい?と問う堀川に対して。
苦しい:お前も苦しかったんだな、国広
13話。刀剣男士としての使命と元の主を救いたいという想いのはざまで苦悩する堀川と、「新撰組の副長」としてあるべき姿と1人の人間としての感情のはざまで苦悩する土方歳三とを重ねて
□コミックのセリフのみに登場する語
気難しい:まぁまぁ、そんな気難しそうな顔すんなよ
1話。和泉守の相方が経験不足の自分でも大丈夫なのか憂う堀川に対して。
騒がしい:…たく、騒がしい奴だ…
2話。蒸気船にはしゃぎながら宿を飛び出していく陸奥守に対して。
イイ:別にイイけどよ
2話。蜻蛉切からの謝罪を受けて(※時間遡行軍と間違われ槍の御先を向けられた)
秋田:秋田、薬研はいるか?
15話。本丸にて。馬当番をする薬研を探して秋田藤四郎に尋ねる。
凛々しい:土方さんは任務に忠実で凛々しかった
18話。梅園で土方と偶然会ってしまった直後。動揺しつつも使命の為に自らを奮い立たせ、堀川にも言い聞かせている。
恥ずかしい:見てるこっちが恥ずかしいぜ…
18話。薩摩屋敷の中での龍馬とお龍のやりとりを見て。
ありがと:…ありがとよ
19話。堀川の捜索に付いて行くと言ってくれた陸奥守に対して。
▼③ー2.陸奥守吉行
土佐弁の品詞分解がうまくいかなかったのですが、これもひとまずそのまま掲載しています。赤い四角で囲んでいる単語が土佐弁の言い回しに関わってくる単語です。
■アニメのセリフのみに登場する語
甘い:甘い…甘い、甘い甘い!!!
3話。人命は救いきれなかったが、歴史を守れた、という言葉で慰めようとしてきた和泉守に対して。
ぞうくそ:ぞうくそが悪い
3話。廃寺での偵察任務時のシーン冒頭のぼやき。ぞうくそとは土佐弁で「心持、縁起」などの意味がある。
奴等:遡行軍の奴等が自分等の目的のために残虐行為をしゆうがが、わしは許せんがじゃ
3話。廃寺での偵察任務時に、遡行軍の目的や自らの使命、主張について堀川に語っている。
しわい:しわいのう
4話。江戸付近の山中において現地民の追っ手を撒いて隠れた時にこぼしたセリフ。しわいとは土佐弁で「しつこい」という意味。
正しい:そりゃあ まっこと正しい
8話。第二部隊の隊長が交代する可能性を示唆した和泉守へ。皮肉めいているが本心は如何に。
捜索:どうするんじゃ?龍馬を追いかけとったら、堀川の捜索はできん
11話。第二部隊の隊長として坂本龍馬の護衛任務を続行しようとする和泉守へ、堀川の捜索に向かわせようと背を押す言葉。
甘い:土方歳三は新撰組副長…もし箱館戦争終結の後、生きちょっても捕まって打ち首か、甘く見ても牢獄行きじゃ。
11話。堀川の捜索中、和泉守との会話の中で。
チッ:チッ、こんな時に…
12話。堀川が離反し、和泉守が茫然自失となっている状況で、頭上に時空の歪みが現れたのを見て。
□コミックのセリフのみに登場する語
おう:おう!
何らかの掛け声に対しての応答。
後ろめたい:何を後ろめたそうに。これも調査ぜよ!
3話。好奇心が勝って蒸気船を見に来たものの、どことなく罪悪感を覚えているような蜻蛉切に対して。
奪う:わしはただ時間遡行軍によって奪われる命は歴史通りやないから許せんのじゃ!
3話。蜻蛉切と蒸気船を見ているシーン。和泉守との仲たがいを心配する蜻蛉切に対して、自らの意見を主張する。
きつい:和泉守にもきつく当たってしもうちょった
5話。堀川と共に浪士達の後を追っているシーン。和泉守に当たり散らしたことを反省している。
うんうん:あぁ~ えいがじゃ あいつは放っちょけば うんうん
11話。蜻蛉切の見舞いに現れない和泉守を心配するこんのすけに対して。
捜す:わしは元の主と踏ん切りつけたんじゃ こっちに残って堀川を捜す
20話。任務の続行と堀川の捜索という選択の際に、和泉守に告げた言葉。
▼③ー3.堀川国広
■アニメのセリフのみに登場する語
ありがと:うん、ありがと
1話。自分たちの行いで歴史が守れたかどうか考えこむ堀川。励まそうとする和泉守の言葉に対して。
お疲れ様:お疲れ様
4話。港の偵察から戻ってきた和泉守と薬研に対して。
第二部隊:第二部隊のこれが本当の意味での初陣だね
4話。宿での作戦会議が終わった直後。決意を新たに和泉守へ声を掛ける。
ほんと:ほんと良い出来
8話。本丸敷地内の菜園の様子を見て。
暗殺/大政奉還:もし、龍馬さんが寺田屋で暗殺されてたら、大政奉還が行われてないってことなのかな?
10話。薩摩屋敷の中での龍馬とお龍のやりとりを見て。
人生/大政奉還:もし、龍馬さんが死んで、大政奉還が成されず新撰組が存続すれば、土方さんの人生はあんな辛いことにはならなかった
10話。梅園で龍馬の護衛をしている最中のモノローグ。
(※堀川が発する「人生」というワードは、すべて「土方歳三」に関わる文脈で使われていました)
□コミックのセリフのみに登場する語
前回:前回の積荷奪還作戦では見てることしかできなかったし…僕に何かできることあるのかなって
1話。川向こうの宿屋にて。和泉守に自らの不安を吐露する。
狙い:お城が真の狙い…そんな事分かるんですか?
2話。時間遡行先に現れた審神者の発言を受けて、驚きながら。
命(メイ):兼さん!僕は主さんの命(メイ)とか部隊長だからだけじゃなくて「兼さん」だからだよ!
4話。陸奥守との口論の後で和泉守を元気づけようとしている。
(※コミックにおいて堀川が「命(メイ)」と言う時、その「命(メイ)」を否定するようなセリフになっています)
怪しい:ここまで何も起きてないのも怪しいよね…
6話。西郷隆盛と勝海舟の会談の最終日、終了時刻が近づいてくる中で、襲撃が起きないのをいぶかしんでいる。
鶴:わぁ!? 鶴!?
10話。本丸の自室にて。意識を取り戻した矢先に鶴丸に驚かされて。
出陣:ねぇ兼さん、あれから出陣の呼び出しとかあった?
15話。本丸内の河原にて。自分がまた第二部隊として出陣できるのかどうか思い悩んでいる。
捨てる:歴史を守るということは何かを捨てなきゃいけないということ…なのかな…
15話。本丸にて。療養中の蜻蛉切を元気づけに行こうとする和泉守と歩いている時のセリフ。
※のちのちこのセリフが堀川が部隊を離反する時のセリフに掛かってきます。何気にキーフレーズ。
怖い:怖い…?
16話。陸奥守が坂本龍馬に会わなくていいといったのは、本心ではなく「怖い」からでは?という和泉守の言葉に対して。
▼③ー4.薬研藤四郎
■アニメのセリフのみに登場する語
倒す:時間遡行軍を倒したら、浪士達はどうなる?
3話。浪士達の隠れ家を見張りながら、今後考えられる未来を和泉守に訊ねている。
どく:どいてくれ。俺が診る
3話。外国船の爆発で負傷した民衆。止血がうまくできずにいる蜻蛉切へ。
忙しい:今日これから大事な会談だってのに、その前から仕事とは忙しい
4話。海釣りをしているふりをして勝海舟を見張りながらの一言。
捨てる:持ち上げて海に捨てられりゃあ良いんだが って無理だな
4話。軍艦の上で時間遡行軍と戦っている時の独り言。
えぇ:そんなに大砲が欲しいか!? えぇ!?
4話。軍艦の上で時間遡行軍と戦っている時のセリフ。
了解:了解という意味だ
8話。本丸にて。第二部隊の一員として共に戦ってほしいと頼む和泉守へ。
亡くなる/救う:土方歳三が亡くなるのはまだ3年も先のこと…救うにしたって流石に早すぎやしないか?
11話。離反した国広の目的が「土方歳三を救う」ことに対して考えを述べる。
救う:元の主を救いたいという思いは俺達にだってある
11話。堀川が行方不明になった後での第二部隊内の会話で。
□コミックのセリフのみに登場する語
おかしい:俺が主の命(メイ)以外で動くのがおかしいか?
4話。現地民の手当てを始める薬研。それを驚く蜻蛉切に対して。
戯れる(じゃれる):馬が戯れてきた。それで何か用か
15話。本丸の馬小屋にて。薬研の風貌がボロボロになっていることに驚く堀川に対して。
忘れる:忘れてはいないよな
15話。蜻蛉切の見舞いに陸奥守を誘うのを忘れた、と言う和泉守に対して。
変:…変だな 坂本はこの道を無事に通ったはずだ
17話。坂本龍馬が本来の歴史と違う逃走ルートを使っていることに対して。
思い出す:昔を思い出しただけだ
20話。龍馬にひっそりと別れの言葉を告げる陸奥守に、自分の過去を思い返して。
慌てる:慌てて出たわりに荷物が多くないか?
20話。焼け落ちる薩摩藩邸から非難する龍馬たちを見て。
ずぇりゃ:ずぇりゃ!
24話。箱館の一本木関門にて。骨喰藤四郎との連携して戦う時のセリフ。ちなみに原作ゲームの戦闘セリフと同じ文言です。
▼③ー5.蜻蛉切
この表を作っている時に改めて確認したのですが、
大福を食べた時、蜻蛉切は「美味い」じゃなくて「旨い」という語を使うのですね!
■アニメのセリフのみに登場する語
ふむ:ふむ、なるほど
2話。蒸気船の仕組みを陸奥守から教えてもらって。
(※余談ですが「ふむ」という単語は、蜻蛉切よりも三日月宗近のセリフによく見られました)
薄い:1人でやり合うには力が段違いなのだ。むやみに戦っても勝てる見込みは薄いと思った方が良い
4話。遡行軍の大太刀と出くわした時に、その手強さを堀川に説明した。
申し訳ない:申し訳ない。自分がきちんと見張っていれば
10話。坂本龍馬を見失った直後のセリフ
任せる:ここは自分達に任せてもらえんか
11話。任務の続行と堀川の捜索の間で板挟みになっている和泉守へ
可能性:可能性の話だ。堀川殿が何かをすると決まったわけではない
11話。堀川が舞台から離反し、坂本龍馬を狙っているのでは?という話題に対して。
□コミックのセリフのみに登場する語
いや:誰かの言葉に対してのレスポンス。(「―――いや、時代の移り変わりというのはこんなにもあっという間なのだと思ってな…」)
(蜻蛉切以外では、和泉守、陸奥守、薬研、三日月、髭切、骨喰、まれに鶴丸も使いますが、いずれも誰かの問いかけに対し、それを否定するニュアンスで使用しています。
蜻蛉切のみ、相手の意見を否定するというよりは「大したことではないのだが」というようなニュアンスで使っていました)
失敬:これは失敬!
2話。「薬研の獲物」を取ったことを咎められて。
怪しい:―――怪しい人物…?
4話。「蒸気船の爆破があった後怪しい人物を見つけて追跡した」というこんのすけの言葉を受けて。
物悲しい:260年守られてきた徳川の時代が終わると思うと…少し物悲しくてな
6話。江戸の街を見やる蜻蛉切。こんのすけに声かけられて。
歴史:歴史を守り、皆で本丸に帰る!
6話。西郷隆盛と勝海舟の会談を狙う時間遡行軍が姿を現した時の決意の言葉。
あやつ:…あやつ、勝海舟を直接狙わなかった
9話。時間遡行軍が勝海舟を直接襲撃しない様子を目にして、会談が襲撃されなかった訳を得心する。
(※コミック版の三日月宗近も「あやつ」という言葉を使う)
微笑ましい:微笑ましいな
18話。薩摩屋敷の中での龍馬とお龍のやりとりを見て。
▼③ー6.鶴丸国永
■アニメのセリフのみに登場する語
嫌な:あぁ、嫌な感じだ
5話。戦艦の遡行軍を倒し、砲撃を止めたのちに、また新たな戦艦が現れたことに対して。
会談:審神者からの言伝がある。『時間遡行軍の狙いは、西郷隆盛と勝海舟の会談を中断させることであろう』
5話。第二部隊へ審神者の伝言を伝える。(鶴丸のセリフというより審神者のセリフ)
逝く:逝ったのは二体。まだまだお前等の方が数じゃあ有利だ。考えて向かって来いよ!
5話。船の上での戦闘時に時間遡行軍に対して。
隊長殿/タマ:隊長殿もこの程度でくたばるタマじゃねーよな
(cf.第二部隊は和泉守が隊長なんだろ?)
6話。負傷して意識が無い和泉守を手入れ部屋に運ぶべく、背中にしょって走っている時のセリフ。
痛い:痛え! 何で俺だけ!?
6話。本丸での検分時にこんのすけに叩かれて。
たんだい:で、君はどうだったんだい?
任務:初めての任務だったんだろう?
6話。本丸の食堂にて。堀川に初任務の感想を促している。
(※「~~~たんだい」はアニメのみの言い回し、コミックでは「~~~たんだ」という言い回しでした)
マシ:ここよりマシかな?
8話。本丸にて。第二部隊で共に戦ってほしいという和泉守に対して、菜園の畑仕事よりマシだとおどけている。
面白い:いやぁ、面白いものを見せてもらったぜ
8話。蜻蛉切の部屋にて。陸奥守に対して素直になれずにいる和泉守と、いらいらしている陸奥守とのやりとりを見て。
死ぬ:坂本龍馬の護衛か。そいつ、死んだのか?
9話。倒れている三好を見つけた時のセリフ。
狙う:奴等、身を隠してまで何を狙ってやがる
10話。第二部隊が撃ち漏らした時間遡行軍の目的を考えている。
誘惑:気持ちは分かるがな…現にその誘惑に駆られたわけだろ?堀川は
11話。堀川が歴史を変える(土方を救う)はずがないと自らに言い聞かせる和泉守に対して。
コミックのセリフのみに登場する語
おーい:(※離れたところに居る味方に話しかけるときに使う)
すまん:すまんすまん
10話。意識を取り戻した堀川を驚かせたことに対しての謝罪。
(なお、活コミ内で「すまん」と最も言っているのは陸奥守でした)
大丈夫:主が看てるんだ。大丈夫さ
10話。治療中の蜻蛉切、和泉守、堀川のことを思う薬研に対して。
守る:俺も薬研も今まで他の奴と組んだりして多くの時間を越えてきた。でもな、全てを守る事は難しい
10話。犠牲者が出たのに歴史を守れたといえるのか思い悩む堀川に対して。
暴く:俺欲しさに墓を暴いたり神社から取り出したりは感心できないよなぁ
18話。堀川と二振りで見回りをしている時。堀川へ自分の来歴を語る。
なるほど:なるほどなぁ
18話。堀川と二振りで見回りをしている時。土方と和泉守は自分の憧れだという堀川に対して。
任せる:一体は俺に任せてくれ
19話。梅園で時間遡行軍との戦闘時。土方の姿を見て動揺する和泉守と堀川に対して。
潜む:時間遡行軍もどこに潜んでいるか分からないしな
20話。行方不明の堀川を心配して。
任せる:ここは俺達に任せろ!
21話。箱館にて。堀川と和泉守の背中を押すために。
■おまけ~アニメ活撃のセリフ以外を語る~
この項では、テキストマイニングでは分析できない、アニメ活撃の視覚的情報について、筆者が考察をしたり喧伝したりします。
前編では、現在「刀剣乱舞-本丸博-2020」で展示されている、
アニメ活撃の蜻蛉切の原画についての解説をします。
※免責事項※
この解説は筆者の経験と知見に基づいて書いたものであり、個人的な考察・研究の域を出ないものです。正確性についてはくれぐれもご注意ください。
①蜻蛉切の原画(刀剣乱舞-本丸博-2020)について
2020年1月に「刀剣乱舞-本丸博-2020」東京会場で展示された「活撃 刀剣乱舞」の作画素材です。(※写真撮影許可は得ています)
本編5話Bパート。
蜻蛉切が時間遡行軍の大太刀を倒した直後のシーンの作画素材です。
紙の左上に「C271」とあります。
これはカットNo.を示していると思われます。「カットNo.271」ということですね。
この作画素材は「原画作監修正(ゲンガ サッカン シュウセイ)」と呼ばれるものである可能性が高いです。これは私の体感ですが、黄色い修正用紙は作監修正の紙に使われることが多いですね。
「作監」とは作画監督の略称です。
「作画監督」というのはアニメーターの役職の1つです。
原画を描くアニメーター(原画マン)は複数人いますが、全員が全員、キャラクターデザイナーと同じ絵柄で描けるわけではありません。
たとえば、アクションを描くのが得意だけど、キャラの顔をキャラクターデザインに似せて描くのは苦手…という人もいます。
作画監督は、さまざまな原画マンのさまざまな原画を監修し、修正して、絵柄を一定に保つ…という仕事をします。
「活撃 刀剣乱舞」は、日本のアニメ業界の中ではかなり珍しい作り方をしていた作品です。
まず、メインキャラである第二部隊の刀剣男士1人につき、1人のアニメーターがキャラクターデザインを担当しています。
そして、各キャラクターデザイナーは、全話数で自分がデザインしたキャラの作画監督をしています。
(※上記は2017年5月に徳島県で行われたイベント「マチ★アソビ vol.18」のトークショーで捕捉した内容になります)
つまり、何が言いたいかと言うと、
上記の蜻蛉切の作監修正は、アニメキャラクターデザイナーの塩島由佳さんご本人によるものなんです!!!
そして。
注目していただきたいのが、紙の右上にある
「原画として使用」
…という文字です。
通常、原画作監修正をそのまま原画として使うことはまずありえません。ですが、何らかの理由で原画として使われたことを明示しています。
(※なお、このことは現場では「直原(チョクゲン)」と呼ばれることが多いです。「直接原画」の略です)
つまり、何が言いたいかと言うと、
上記の蜻蛉切の作監修正は、キャラデザ本人による画で、そしてこの画は、まるっとそのまま本番用素材として使われたということです…!!!
塩島さんは、大典太光世のアニメキャラクターデザインも担当されています。本丸博では大典太の原画作監修正も展示されていましたが、これも直原でしたよ…すごかった…
そして、上の作画素材の右側に「003_fire」という赤い文字が書かれているのが見えると思います。
これは「カラーモデル」の番号を示しています。
アニメの作画素材の色は「色彩設計」という役職が作成します。
(※色彩設計とは、簡単に説明すると色に関するセクションの監督です。「活撃 刀剣乱舞」では、松岡美佳さんという方が担当されています)
デジタルペイントで作画素材の色を塗る時、色彩設計が作成したカラーモデルの指示通りに「仕上げ」という役職の方々がペイントしていくのですが、この蜻蛉切は「003_fire」というカラーモデルの「003_005_01」で塗るよう指示されているんですね…!
(これは筆者の予想なのですが、
ノーマル色「001_normal」、夜のシーン色「002_night」からの
炎の光受けの色「003_fire」ではないかな…と思います…!)
以上です…!
筆者は塩島さんの線画がめちゃめちゃ好きなので、実にありがたい展示でした…!
■後編について
後編では各キャラの特徴語、関連語、その変遷をまとめて分析していきます。
・「活撃の〇〇」「活コミの〇〇」
…のアイデンティティ、核、性質を探ってみようか!
・キャラのセリフが物語進行にどんな影響を及ぼしたか探ってみようか!
という内容になる予定です。現在絶賛分析中です。
数字やデータを扱う文章はかなり集中力を使いますので、まとまるにはまだ時間がかかりそうです…
しかし、最大の山場であるデータ作成は既に終わっておりますのでね!
たぶん年内には後編もWEB公開できるんじゃないかな…気長に待っていただけますと幸いです。頑張ります!(^ω^)
■感想、エール、質問などはこちら。いただけると物凄く励みになります!
(返信は筆者のTwitter(@soubi422)に書いています。返信不要な方はその旨をお書きください)
■今後の予定
後編の記事と並行して進めているものがこれら。
①「ミュージカル刀剣乱舞 歌合 乱舞狂乱 2019」と古典芸能との比較検討
②共感覚の定義と種類 ~音楽を聞くと色が見える人間の視点から~
③「ミュージカル刀剣乱舞」×テキストマイニング
④「鶴丸国永」×テキストマイニング(※2021年秋予定)
いずれもnoteで公開予定です。
④についての補足をします。
今回の活撃の分析で、アニメとコミックの鶴丸のセリフにかなりの違いが生じていたのが目に見えて分かり、それがとても面白くててですね…
各メディアミックスの「鶴丸の個体差」について、セリフをベースに分析したいなぁ…と思いました。
・アニメ「活撃 刀剣乱舞」の鶴丸国永
・コミック「活撃 刀剣乱舞」の鶴丸国永
・アニメ「刀剣乱舞 花丸」「続 刀剣乱舞 花丸」の鶴丸国永
・「舞台 刀剣乱舞」の鶴丸国永(演:染谷俊之)
・「舞台 刀剣乱舞」の鶴丸国永(演:健人)
・「ミュージカル刀剣乱舞」の鶴丸国永(演:岡宮来夢)
取り上げるのは、上記のメディアミックス作品の鶴丸のセリフ。
来年公開の「映画刀剣乱舞」第2弾で鶴丸が喋ることがあったら、それも分析対象にする予定です。
あとは「ミュージカル刀剣乱舞」か…
鶴丸が出た本公演は現時点で「葵咲本紀」1作しかないため、2021年秋上演予定の「静かの海のパライソ」のセリフも分析対象にしたいですね…
刀ステのテキスト量が大変えぐいので、もしかすると、めちゃめちゃ大掛かりな調査になるかもしれません。ですが、せっかく思いついたので最後までできるといいな…保て私のパッション…
③についても補足します。
「共感覚」ってなんのこっちゃと思われる方もいるかもしれません。
認知心理学領域の単語なのですが、実はそれについて書くきっかけをくれたのはミュージカル刀剣乱舞でした。
刀ミュに「決戦の鬨」という曲があるのですが、
これを唄っている和泉守兼定(演:有澤樟太郎)の歌声は琥珀のようだよ!有澤さんは歌の上達と共にとても綺麗な色の歌声を魅せてくれたよ!
小越勇輝くんと阪本奨悟さんが演じる堀川の歌の色もきれいだよ!!!
…っていう話をTwitterで呟いたところ、予想外に反響をいただきました。
音楽を聞くと色が視える、ということや、共感覚現象、そして心的イメージ全般に対して様々な質問をいただきましたので、
共感覚を持つ当事者、そして一時ですが研究に関わった人間として一度まとめてみようかなと思います。
上記とは別に、日本刀そのものに関する調査にもチャレンジしています。
刀剣書とか、あと裁判に関する記録とかをね、いろいろ収集して調べております…
いい感じに記事にできそうな所まで持ちあがったら、もう少し詳しく紹介します。
それでは、またお会いしましょう!
普段はTwitterに(@soubi422)おりますので、お気軽にお声掛けください!
■参考文献
・社会調査のための計量テキスト分析【第2版】内容分析の継承と発展を目指して(2020,樋口耕一,株式会社ナカニシヤ出版)
・DMM GAMES,「刀剣乱舞-ONLINE-」,2020(http://games.dmm.com/detail/tohken/)
・Masanori Takata,「南国市付近の方言」,2013(http://ma-takata.c.ooco.jp/tosaben.html)
・「活撃 刀剣乱舞」関係者記念本(2018,ユーフォ―テーブル有限会社)