人事院に聞く!ソトの力を得やすくするための取組とは?<中編>
こんにちは!ソトナカプロジェクトの西川・吉井です。
本日は、こちらのポストの第2弾をお送りします!
前編では、採用期間を短縮して、公務組織が専門性を持つかたを機動的に採用しやすくしたことを中心に伺いました。今回は、民間経験のある方の給与に関することを中心に、伺っていきたいと思います!
今回対応してくださったのは、国家公務員の給与に関する制度を担当している「給与局」の益田さん、田坂さん、長谷川さん、宮下さんです!
取材へのご協力、ありがとうございます。
民間経験の「価値」をめぐって
ソトナカ:こんにちは!今日はよろしくお願いします。早速ですが、まずは、私たちソトナカプロジェクトの提言にも書いた、「民間での就業経験の換算」に関して教えてください。
これまでの中途採用では、民間での就業経験が過小評価されるケース、例えば、民間での就業経験が例えば10年あったとしたら、それが8年分に換算されるケースがあると聞きました。こちら、現在もまだ、そのような運用がなされているんでしょうか?。仮にそうだとすると、公務を志す人は二の足を踏んでしまいますよね。また、自分のこれまでの経験を評価してくれないのか、、、とも思って、非常に寂しくなってしまいます。
益田さん:民間から公務を志していただくかたにとって非常に大切なポイントについての質問、ありがとうございます。この問題、誤解されがちなのでまず申し上げたいのですが、従来から、決して「どんなケースでも必ず、民間経験10年分を8年分に換算しなければならない」という仕組みではないんです。
一方で、「公務での職務に直接役立つかどうか?」という観点で、民間での経験年数を換算する仕組みがあるのですが、各府省からは、この「職務に直接役立つかどうか」の判断が難しいとの声をいただいていました。
そこで今回、人事院から各府省に、「民間でのこのような経験は、『職務に直接役立つ』ものだと考えていいのですよ」ということを分かりやすく周知しました。人事院の立場からすると、今までの運用を変えたというわけではないのですが、各府省がさらに運用しやすくなるよう、改めて取扱を示した形です。
ソトナカ:なるほど。具体的には、どのような経験であれば「職務に直接役立つ」ということを示されたのですか?
田坂さん:府省それぞれが担当している分野に限らず、各府省共通の職務に役立つ汎用的なスキル(説明能力、調整能力、企画能力等)を活用して従事していた職務であっても、「職務に直接役立つ」として大丈夫ですよ、と示しました。
※下図のⅠの1の部分。
ソトナカ:非常にわかりやすいですね!それに、企業勤めのかたのほとんどは、説明能力、調整能力、企画能力等を活用して仕事をするでしょうから、公務への転職にチャレンジするに当たって、自分の民間経験が処遇面で尊重されないのでは?という懸念は、もはやないと言ってよさそうだということがよく分かりました。これから公務を目指す多くの方にとっての不安材料が払しょくされたように思います。この点の改善について提言したソトナカプロジェクトとしても、とても嬉しく思います!
田坂さん:その他にも、経験者採用試験で採用されたかたの給与額については、これまでも柔軟に決められる仕組みではあったのですが、前職の給与も考慮していいのですよ、ということを明示しました。
ソトナカ:なるほど。具体的に示されていればこそ各府省も運用しやすくなるでしょうし、中途採用者としても、前職の給与水準が考慮されるとわかっていれば、転職後に給与が激減してしまい、生活が維持できないかも?という心配が和らぎそうですね。
複雑化・高度化する行政課題への対応のために
ソトナカ:加えて、特に高度な専門性を持ったかたへの、いわば臨時ボーナスのような手当の支給について、手続きの見直しを行ったと聞きました。
宮下さん:はい。例えば弁護士のかた、公認会計士のかたなど特に高度な専門性を持つ「特定任期付職員」のかたが、入職時には想定しなかったほどの優れた業績をあげられた場合には、いわゆる月給の1か月分を「特定任期付職員業績手当」として支給できる仕組みがあります。今回、これをより機動的に支給できるようにしました。具体的には、予め基準を示すことで人事院への協議を不要として、各府省が、各府省の判断のもとに支給できる仕組みとしました。
ソトナカ:高度化・複雑化が著しくなるなかで、極めて専門性の高い人材を柔軟に処遇するニーズはかなり高まってきていますよね。その意味で、時機を捉えた取組ですね!
実は柔軟な昇格の仕組み
ソトナカ:昇格についても柔軟な運用ができるように改めて周知されたと伺いました。
長谷川さん:はい。先ほどからご説明してきたことと同じように、昇格についても、従来から柔軟な仕組みではあるのですが、いまひとつ各府省に知られていないという状況も見えてきたこともあり、各府省向けに周知をしました。
「在級年数」という制度、ご存じでしょうか。これは、簡単に言うと、上の等級に昇格するために、現在の等級で、最低何年間取り組む必要があるか、ということです。こちら、勤務成績が特に良好であるときは、在級年数を半分まで短縮できることを改めて示しました。例えば、通常は4年間従事することが必要である級なら、成績が特に良好であれば2年間でよいといったイメージです。
さらには、今般、抜てきを行う場合には、在級期間によらずに登用できる枠組みも整備したところです。こうした取組によって、各府省でのさらなる柔軟な登用を支援していきたいと思っています。
ソトナカ:そんなに柔軟な仕組みを用意していることがとても意外です。一方で、肌感覚としては、まだまだ年功が色濃く残っているようなところが多いのかな…という印象もあります。制度が柔軟なだけではなく実態としても「適材が早く昇格することが当たり前」な組織になると良いですね!
それが、ひいては新卒か中途かに関係なく、職員全体のモチベーションアップにつながるのではないかと思います。
制度担当者の皆さんから
ソトナカ:最後にお一言ずつお願いできますか?。
益田さん:今回、様々な取扱について通知で再度周知を図りました。今後、関連するQAなども充実させていきますし、担当者の異動が生じても問題ないように、定期的にこのような情報を発信し続けるといったことをしていきたいと思います。また、各府省の給与担当者への研修資料にも反映させていくといった方法も検討していきたいと思います。
また、あくまで個人的な思いですが、「民間人材」というのは、前提として「生え抜き」の存在があるから使われる言葉だと思っています。一昔前ならそれでもよかったかもしれませんが、今は色々な人の力を借り、結集させていかないとならない時代だと思います。人事院にも民間から来られた人材がいますが、その方々と意見交換をすると非常に多くの気づきを得られている実感があり、「これが混ざり合うということか」と思っています。将来的には、「民間人材」とか「生え抜き」とか、そういう属性をあまり強調しすぎないようにすることも大事だと思っています。
田坂さん:他省庁の人事担当部局のかたと話をしていると、どのような仕組みを用いれば円滑に民間人材を採用できるか、ということへの情報提供を人事院として行っていく余地はまだまだあるように感じます。
また、戦略として民間人材採用をどう考えるかというところは各府省ともまだこれからという段階かと思いますので、人事院としても、状況に合わせた支援をしていけたらと思っています。
長谷川さん:今後さらに様々な属性の方が働く時代になってくると、現場マネージャーの方の負担も増大したりと、色々なチャレンジが生じてくると思います。非常に難しいことですが、引き続き、公務全体で考えていくべき課題は多いと思っています。
宮下さん:民間人材を採用した後の対応が課題だと思っています。日々の業務で手一杯になると、民間人材のかたにどう接していくか、必要な情報をどのように提供していくかといったことまでなかなかケアできないことも生じると思います。定員などとの関係もあり、なかなか解決策が見つからない難しい問題もありますが、引き続き、考えていきたいと思います。
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給与局の皆さん、大変丁寧な対応、ありがとうございました!
後編では、人事院に昨年10月に設置された、「民間人材採用サポートデスク」などの取組を紹介します!
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(編集後記)
今回、給与に関する様々な取扱について通知を発出されたことを伺うなかで、担当者の皆さんに共通して「制度があまり知られていない」という問題意識をお持ちだったのが印象的でした。人事院が柔軟な制度を設計していても、各府省はとても細かい規則や通知を熟知しきれていない場合や、知っていても判断に迷う場合がまだまだあるのかもしれません。
今回対応してくださった給与局の皆さんをはじめ、人事院の皆さんからは、そこを明示して各府省を後押ししていこう、という積極的な姿勢を感じました!ソトナカプロジェクトとしても、こうした動きを引き続き応援していきたいと思います!