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Les Ponts Tricolores
絶景のまち
長崎市の北西部に位置する外海(そとめ)地区は絶景のまちです。標高1000メートルを超えるものはありませんが数百メートルの山々が連なり、海に向かって断崖が続いています。
長崎市中心部から海沿いを北上する国道202号線も坂道の連続です。斜度はきつく、繰り返されるアップダウンに、慣れない人はとまどうかもしれません。パワーのない車だと、急で長い上り坂はエアコンを切りたくなるほど。
その半面、最高の景色と出会えます。
緑の切れ間に現れる海、さまざまな広葉樹が織りなす緑のグラデーション、海へと向かう下り坂、さらにその向こうに輝く夕日。
国道を走るだけでも風景は変化に富み、感嘆の声が止まりません。
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外海とフランスのつながり
長崎市中心部から西海(さいかい)市へ向かって国道を行くと、青・白・赤の3色に塗り分けられた橋を通過します。
2005年、外海地区は長崎市と合併し、西彼杵(にしそのぎ)郡外海町から長崎市へと名を変えました。旧外海町と姉妹都市として提携していたのが、フランス・ノルマンディー地方にあるヴォスロール(Vaux-sur-Aure)村です。(参考サイト:長崎市)
外海は潜伏キリシタンの里であり、映画「沈黙 - サイレンス - 」の舞台となりました。(参考サイト:映画オフィシャルサイトはメンテナンス中 → 代わりに ソニー・ピクチャーズエンタテインメント)
明治時代、外海に宣教師、マルコ・マリー・ド・ロ神父がやって来ます。平野が少ないため耕作地に恵まれず、長期間に渡るキリシタン弾圧で貧しく疲弊した人々の魂と肉体、生活を救おうとさまざまな社会福祉事業に私財を投じたそうです。
今でも外海にはド・ロ神父にゆかりのあるものがたくさん残っています。前回の「江戸時代から残る石積み文化」に登場する「ド・ロ壁」もそのひとつ。
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まちをつなぐ3色の橋
そのド・ロ神父の出身地がヴォスロール(Vaux-sur-Aure)村です。1978年に旧外海町とヴォスロール村は姉妹都市提携を締結、その10年後、フランス国旗の3色をまとった橋が誕生しました。
自由を意味する青色をした四谷河内(しやごうち)橋、平等を意味する白色の荒川橋、そして博愛を意味する赤色で塗られた新神浦(しんこうのうら)橋です。
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外海は角力灘(すもうなだ)の向こうに見える池島と、西彼杵半島に位置する黒崎、出津(しつ)、神浦(こうのうら)の4地区から成っています。黒崎、出津、神浦にはその名を冠した川が流れていて、それぞれ四谷河内橋、荒川橋、新神浦橋が架かっています。
3つの橋は河畔にできた集落を結ぶ役割も果たしているのです。
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私の大好きな「水曜どうでしょう(※)」の「四国八十八ヶ所シリーズ」の中で、八十八か所を回る険しい道筋を評して「絶景の国」と呼んでいました。(※ 1996年に放送開始した、まだ大学生だった大泉洋ちゃんが出演した北海道テレビのバラエティ番組 → 公式サイトはこちら)
初めて外海を訪れたときも、そう深くはないあちこちを見て回っている今も「ここも絶景の国だわ」と思わずつぶやいてしまいます。
世界遺産の構成資産であるとか、美しい夕日、季節ごとに色を変える棚田など、外海には見どころがいくつもあります。でも、ただ走るだけでもおもしろい。それもまた外海の魅力のひとつだと私は思います。