見出し画像

【妖珈琲物語】第5話「水とコーヒーの関係」

【妖珈琲物語】

おは妖ございます。妖店長です。
コーヒーが飲めるようになって「半年」で、自家焙煎・販売までたどり着いた「自家成分焙煎 妖珈琲店」店長の珈琲物語を連載しております。
宜しくお願い致します。


【2023年1月】

「水とコーヒーの関係」


2000年頃、幼少期に飲んだインスタントコーヒー(ロブスタ)が苦く、トラウマになりブラックコーヒーを遠ざけて生きてきた妖店長

2022年11月4日「スタバ リザーブ」のバリスタさん(現役看護師)が淹れて下さったコーヒーが美味しく感動。
ドリップセットを即日購入して持ち帰り自分で淹れるも、激不味く撃沈したため、「世界一のバリスタさんを探せば何か情報が得られるだろう」と検索。

⇒粕谷バリスタ
のTwitterより「Ca、Mg、pH」というキーワードが。

妖「水はあくまで溶媒であって味や香りを出すメインはコーヒー豆なんじゃないの?
…と疑問に思い、「水とコーヒーの関係」を探すことにしました。


2023年1月中旬頃(コーヒーが飲めるようになって約2か月)から
「抽出技術が無くても、コーヒーを美味しくできるか」という研究をTwitterで始め、フォロワーさんから反響を頂きました。
※noteではツイートのツリーの順序が前後・省略しますがご了承下さい。


①TDS(濃度)と収率


コーヒーには誰もが美味しいと感じる適正な抽出がある。
未抽出と過抽出の間で抽出されたコーヒーを「適正抽出」と言う


■ SCAが定める適正抽出

TDS  1.15〜1.35%
収率  18〜22%


■ 未抽出とは?
⇒コーヒーの成分を出し切れていない状態。

■ 過抽出とは?
⇒コーヒーの成分を出しすぎてしまった状態。

成分を出し切れていない未抽出のコーヒーや、成分を出しすぎてしまった過抽出のコーヒーは美味しくない。

コーヒーリテラシー

収率が高すぎるとコーヒー粉からたくさんの成分が抽出されていることになるので「過抽出」となり、
収率が低すぎるとコーヒー粉からあまり成分が抽出されなかったことになるので「未抽出」ということになります。

コーヒー手帖

TDS(濃度)とは?【適正:1.15〜1.35%
⇒抽出後のコーヒーの中にあるコーヒー成分の割合

収率とは?【適正:18〜22%
⇒粉に対し液に抽出されたコーヒーの成分の割合



つまり、「コーヒー抽出液の中身の割合」は…
水が99%、コーヒーが1%=コーヒーのほとんどが「水!!」


粕谷バリスタのこちらのツイートへの理解が一気に進みました。

「コーヒー豆の勉強より先に、成分のほとんどを占めている水の追求をしよう」



②美味しい水の要件

では、日本における「美味しい水」とは?
「日本人が好む美味しい水の条件」がまとめになるので、クリックして読み飛ばして構いません。

【厚生省PDF】

https://izumi-suido.com/swsa/05suisitukennsakoumoku/oisiimizu.pdf

厚生省(当時)は昭和59年、おいしい水の水質要件を検討し、安全でおいしい水道水を供給することを目的として、「おいしい水研究会」を設立しました。

「おいしい水の要件」7項目の内容
「おいしい水研究会」によって発表された要件は以下の通りです。
※「項目」/【基準値】/⇒概要・味への影響

①「蒸発残留物」:【30~200mg/L】
⇒水が蒸発したあとに残る物質で、主にミネラル(マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウムなど)のこと。
 適量含まれるとまろやかな水になりますが、多すぎると苦味や渋味が生じます。

②「硬度」:【10~100mg/L】
ミネラルの中でも、特にマグネシウムとカルシウムの合計含有量を示すものです。
 硬度が低いものはまろやかで飲みやすく、高いものはややクセがあります。

③「
遊離炭酸」:【3~30mg/L】
⇒水中に溶けている炭酸ガスのことです。
 適度に含まれていると清涼感が生まれますが、多すぎると飲みづらく感じられます。

④「過マンガン酸カリウム消費量」:【3mg/L以下】
⇒水に含まれる有機物のことで、多すぎると渋味やにおいが生じます。

⑤「臭気強度」:【3以下】
⇒カビ臭などのにおいは、味を損ねる原因になります。
 この値が大きいほどにおいが強いということです。

⑥「残留塩素」:【0.4mg/L以下】
水道法では蛇口時点で0.1mg/L以上の塩素が保持されるよう定められていますが、多すぎるとカルキ臭の原因になります。

⑦「水温」:【 最高20℃以下】
⇒適度に冷やすことで清涼感が得られるほか、不快なにおいも感じにくくなります。

日本の水道水は水道法に基づいて水質基準が定められており、水質が非常によいことで知られています。
水道水を生涯にわたって飲み続けても、健康上問題はありません。

ただし地域や季節によっては、この基準値に当てはまらない項目もあります。
特に残留塩素は、消毒効果を保つために0.4mg/L以上になることも少なくありません。
もし水道水のカルキ臭などが気になる場合には、しっかりと煮沸をしたり、浄水器に通したりする方法もあります。

トリムミズラボ

水の種類は大きく分けると、硬水と軟水があります。
日本の狭い陸地では、水が地層に浸透する時間が短く、さらに河川も短いため、流水にカルシウムやマグネシウム等のミネラルが十分に溶け込む間がありません。

そのため、沖縄を除く日本列島の多くの水が、軟水となっています。昔から、日本では硬水より軟水が身近だったため、現在でも馴染みのある軟水を好む日本人が多いです。

大陸の場合は、地中に長い時間を掛けて水が染み込みますので、
ミネラルの浸透が多く、硬度の高い硬水ができます。
海外のミネラルウォーターの多くが硬水となっているのはこのためです。
硬水もミネラル補給のためには大事なものですし、水の硬さはしっかりとした飲みごたえにもつながります。

株式会社ムラオ

日本人が好む美味しい水の条件

(上記までのまとめ)

・厚生省(当時)は昭和59年
安全でおいしい水道水を供給することを目的として、「おいしい水研究会」を設立。

「硬度」:【基準値:10~100mg/L】
ミネラルの特にマグネシウムとカルシウムの合計含有量を示す
 硬度が低いものはまろやかで飲みやすい。高いものはややクセがある。

「残留塩素」:【基準値:0.4mg/L以下】
0.1mg/L以上の塩素が保持されるよう定められている。
 多すぎるとカルキ臭の原因
になる。

消毒効果を保つために0.4mg/L以上になることも少なくない。
カルキ臭などが気になる場合、煮沸をや浄水器に通す方法で軽減。

・日本の狭い陸地では、ミネラルが十分に溶け込む間が無い。
沖縄を除く日本列島の多くの水が、「軟水」で馴染みがある。


大ざっぱに言うと…
「硬度」が10~100mg/Lで、①カルキ臭が無い水道水 or ②天然水 が「日本人が好む美味しい水」ということになります。



では、硬度の区分を見ていきましょう。

WHOが定める硬度の基準

WHO(世界保健機関)の基準では、
硬度が0~60mg/l 未満を「軟水」
60~120mg/l 未満を「中程度の軟水」
120~180mg/l 未満を「硬水」
180mg/l以上を「非常な硬水」といいます。

evian

粕谷バリスタ考案の「4:6メゾット」では
「硬度30~50がおすすめ」と記載されており、
世界一のバリスタがコーヒーにオススメする水は
「硬度30~50mg/l の軟水」ということになります!!



③ミネラル(CaとMg)の意味

残るは、水に含まれるCaとMg(ミネラル)の意味
色々な水で実験をしてみました。

妖店長、狂ってるので病棟でも使われている
「精製水」:硬度0=ミネラル0でコーヒーを淹れました

例えるなら好きな音楽を聴いていたらイントロで終わってサビ(盛り上がり)なく、曲が終了するような感じ味、何処消えた?

「水の味はCaとMgの量で作り出されていた」ことが分かりました。
(何故美味しくないのかは、後述)


「南アルプスの天然水/サントリー」
pH7(中性)、硬度30(軟水)
カルシウム0.1〜2.4 、マグネシウム0.02〜1.1

自販機、コンビニ、スーパーとどこでも売っている比較的安価な天然水です。
粕谷バリスタと井崎バリスタがコーヒーにオススメする「硬度30~50mg/l の軟水」を満たしています。

精製水の後飲んだら「オアシス来た~~!!」って感じでした。
浅煎り~深煎りまで万能なので、妖店長がオススメする天然水です。


「クリスタルガイザー/大塚食品(アメリカから輸入)」
pH6(中性)、 硬度38(軟水)
カルシウム0.64 、マグネシウム0.54


「エビアン/伊藤園(フランスから輸入)」
pH7.2(中性)、 硬度304(非常な硬水/WHO)
カルシウム8.0 、マグネシウム2.6(理想の比率)

硬水であり、ずしっとした味になります。
深煎りの味を引き出したい時にオススメします。



コーヒーに合う科学的に正しい水

「第15代ワールド・バリスタ・チャンピオン」で、株式会社QAHWA代表取締役社長の、井崎 英典【イザキ ヒデノリ】バリスタが分かりやすい答えを教えて下さいました。

「ワールド・バリスタ・チャンピオンが教える 世界一美味しいコーヒーの淹れ方」
2019年12月出版より。

Maxwellは、味の違いを生み出している要因は「水」ではないか、という仮説を立てて、バース大学との共同研究に乗り出したのです。
彼らは、どのミネラルがどのようにコーヒーの味わいに影響を与えるのか、徹底的に分析し、その因果関係を明らかにしています。主要なミネラルの味わいへの影響を記しておきましょう。

【カルシウム】主に質感(ボディやマウスフィール)を引き出す
【マグネシウム】主に酸味(フルーティーさ)を引き出す


カルシウムは抽出力の強いミネラルで、コーヒーの濃度を引き出すために重要な役割を果たします。
またマグネシウムは、コーヒーのフレーバーを引き出すために欠かせないミネラルです。

カルシウム、マグネシウム共にコーヒーの抽出において重要なミネラルで、それぞれの役割を解明できたのは、非常に大きな成果と言えます。

しかし、最も重要な発見は「炭酸塩硬度」の役割を解明したこと、と言えるでしょう。
炭酸塩硬度は、緩衝材のような役割を果たし、pH(ペーハー)の変化に対応する優秀な成分です。
コーヒーの味わいをバランス良くまとめてくれる、抽出に欠かせない存在と言えます。

DIAMOND online/井崎英典

TDS値がたとえ許容範囲に収まっていたとしても、炭酸塩硬度に大きな差が生まれれば、コーヒーの味わいを根本から覆してしまいます

硬度がゼロか限りなくゼロに近い水(蒸留水やRO水)が、コーヒーの抽出に向いていないのは、こうした理由です。
したがって、「コーヒーの抽出には蒸留水を!」という広告を見かけますが、ミネラルがなければ、コーヒーの味わいは引き出されませんので、注意が必要です。

では、硬度は高ければ高いほどコーヒーの抽出に好ましいのでしょうか? 実は、硬度が高すぎても、コーヒーの味わいは効率良く抽出されません。

コーヒーの成分を引き出すための水中のスペースが、ミネラルに占拠されてしまうから
です。
硬度が高過ぎると必然的に炭酸塩硬度も上がり、結果として起伏のない味わいになるため、こちらもおすすめできません。

DIAMOND online/井崎英典



【結論】コーヒーに合う美味しい水とは


○「硬度:10~100mg/Lで、カルキ臭が無い水道水」
・煮沸した後に適切な温度にするか、浄水器使用。

◎「硬度:30~50mg/l の軟水の非加熱ボトリング天然水」
⇒「南アルプスの天然水」(どの焙煎度にも向く)
⇒「クリスタルガイザー」(浅煎り向け/Mg↑)
・軟水は日本人に馴染みがある。

加熱ボトリングすると「pHの緩衝能」がある炭酸塩(炭酸水素イオン/HCO₃-)が飛ぶため、非加熱ボトリング天然水が良い。
粕谷バリスタと井崎バリスタが(経験的に)推奨。

深煎りでオススメの水は、「エビアン」
pH7.2(中性)
硬度304(非常な硬水/WHO)であるが、
カルシウム8.0 、マグネシウム2.6(理想値)
⇒↑約2~3:1で摂取することが望ましい。
比較的手に入りやすい。

☆【Ca】:質感(ボディやマウスフィール)を引き出す
☆【Mg】:酸味(フルーティーさ)を引き出す
☆GH(総硬度):KH(炭酸塩硬度)=2:1が理想
⇒コーヒーの風味や抽出力、腐食の防止に最適である。


珈琲沼に入って2か月で妖店長「水」に関してはほぼ網羅しておりました☆

今日はここまで!
お読み頂き、ありがとうございました。

次回は、妖店長が「美味しいコーヒーの淹れ方を探す話」になります。

2023年5月19日
「自家成分焙煎 妖珈琲店」店長:外堀 妖

いいなと思ったら応援しよう!