ハイパフォーマー=イノベーション人材への大いなる違和感
いままで、組織発酵学の開発動機を色々な角度で書いて来ました。発酵の世界と育成の関連性、自分のキャリアを紐解いてのヒストリー、そんな事を中心にお伝えして参りました。
今回は、少し見方を変えて、組織発酵学の中身、コンテンツや実施方法に関連するお話をして参りたいと思います。
その1つが、タイトルにも掲げた「ハイパフォーマー=イノベーション人材」という一見当たり前に捉えられがちな公式への”大いなる違和感”でした。
以前、こんな記事を書かせて頂きました。
とある企業での、新規事業開発プロジェクトにおいて、ヤル気がない、悪態をついていた方々が、変容した、というお話でした。
実はこの時に、この時にnoteに書いたこととは別に、2つの疑問が生じたのです。
(1)プロジェクトに集められるぐらいだから、優秀人材(ハイパフォーマー)であるはずなのに、なぜヤル気がなかったのだろうか?
(2)もしくは、とある面では優秀人材(ハイパフォーマー)だけど、別の場面、例えばこういった新規のプロジェクト開発には向かない人材だったのだろうか?
こう感じた、疑問を持った私は、早速調べたり、実際のプロジェクトで観察をしてみることにしたのです。
まず調べてみると、一般社団法人 Japan Innovation Network 代表理事 西口尚宏氏がこんな事を語っていました。
「経営を2階建てにしよう」
つまり、1階とは既存事業を回す部分、2階は新規事業などの実験を行う場にして、管理や目標はそれぞれ全く異なるものを適用すべきである、と。
なるほど、私の立てた仮説の(2)のように、1Fに向いている人材と2Fに向いている人材は一緒ではない、とも読み取れますね。
そこで、実際の目の前のプロジェクトにおいても、プロジェクト参加中のメンバーの意識や活動だけでなく、普段の業務や評価についても調べてみると、意外な事が分かってきたのです。
・普段の業務で優秀な人でも、こういった新規プロジェクトで同じように活動し成果を出せる人と、一方で全く動けない、機能しない人がいる
・普段の業務で現状では目覚ましい活躍はしていない、あるいは評価されてい状態であっても、こういった新規プロジェクトでは、水を得た魚のように活動しリードする人材がいる
なるほど、やはり、新規プロジェクトなどの、創造性や既存のスキームへの問題意識、失敗を恐れない挑戦心などが必要となる業務においては、既存の評価軸が万全ではなく、適性が異なるものなのかもしれない・・・
であるならば、こうしたプロジェクトにおける、メンバー選出、アサインは、優秀人材(ハイパフォーマー)だけをピックアップすることは、入り口を間違えている可能性が高いのでは?と益々感じてきたのです。
ここで、さらに実験を重ねてみました。
プロジェクトスタートの前に、「優秀人材を各部から集めるような人選を辞めませんか?」と主催者をいざなってみたり、もっとはっきりと「既存事業における2:6:2のようなハイパフォーマー:ミドルパフォーマー:ローパフォーマーの各レベルから一定割合でメンバー選出してみませんか?」と切り出してみたのである。ただ、そうは言ってもなかなかこの方式は採用されませんでした。主催側であるプロジェクト本部では合意され「やってみようか!」となっても、人材をプロジェクトに送り込む現場の長からは、なかなか理解されなかったからです。
しかし、ひょんなところでこれを実証する機会に出会います。たまたま、ある企業で数年間に渡って、何本もプロジェクトが同時並行で実施されていて、自然と先にスタートしたプロジェクトから優秀人材がアサインされていた。すると、後からスタートするプロジェクトでは自ずと、レベル感がごちゃまぜのチーム編成がされることになったのです。「このメンバーで大丈夫かな?」なんて声も社内にはあった。
このごちゃまぜメンバーのプロジェクトが、私も見ていてとても痛快だったのです。最初こそ、メンバーの中でも優秀人材がプロジェクトを引っ張っていたが、途中からこの場での発言の安全性を理解したのか、ここがチャンス!とばかりに優秀人材以外の方も着火されたように意欲的、創造的に言動を始めたのです。それも1人だけではなく、2人、3人と後に続いたのです。
このシーンを見ていて、私は組織発酵学につながるキーワード、とそして共通点を見出したのである。
1つは、発酵する現場は、最初からクリーンな無菌状態ではなく、善玉も悪玉(雑菌)もある状態から発酵していくことがあること
もう1つは、菌は厳しい環境を勝ち残った菌が自然発火的に発酵を続け、そこに日和見菌が加わり加速する。
そし、その思いをもって、この組織発酵学を研究・開発している最中にまたこの思いを支えるご意見に出会うことになった。
「起業の科学」という著書でも有名な、ユニコーンファーム 代表取締役社長 田所雅之氏が語っている「3階建て経営」である。前述の西口氏の2階建ての間にもう1フロア有る形を提唱しておられました。
やはり、創造的に新規事業などの開発に取り組むためには、環境やKPI、マネジメントが異なるように、そこでのコンピテンシー、適性などは異なるのであろう。
こうして、イノベーションに関する専門家の意見と、自信が担当・伴走したプロジェクトの経験から、組織発酵学に対する3つの視点が完成したのです。
(1)ハイパフォーマー(優秀人材)=イノベーション人材ではない
(2)プロジェクトを行う際は、ハイパフォーマーだけに偏らないこと
(3)既存事業でなかなか目が出ていない、ミドルパフォーマー、ローパフォーマーの中にも、目が出る可能性がある!
この3つの視点は、企業にはなかなか理解されにくい点かもしれない。しかし、とても重要なヒントが隠されていると強く思う。いままで、企業が着目していなかった、どうしても盲目的に思い込んでいた部分、視点。これこそが、組織発酵学において一番大事にしている想い「今まで隠れていた、隠してきた、思い込んでいたものを取り外して、新たな視点、意識、アプローチでイノベーションを!」に繋がっているからです。
組織発酵学では、この3つのポリシー、そして実施方法を提唱、推奨、実施し、組織の発酵やイノベーション人材の創出を目指しております。
組織発酵学プロデューサー
Brew株式会社
原 佳弘
※組織発酵学はBrew株式会社の登録商標です
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