【231028追記】獣人服《ケモバーサルウェア》の尻尾事情あれこれ ~「獣人服の尻尾穴問題」より
という発端から、獣人たちが衣服を身に着けて文化的に生活していくための「尻尾と衣服に関わる諸問題」の解決を試みたい。
取り扱う問題はこちら。
「獣人服問題」 尻尾と衣服の干渉の克服
「獣人着衣論」 獣人たちが服を着る理由
「獣人服尻尾要件」 尻尾回りの獣人服設計に欠かせないこと
「尻尾露出論」 獣人たちはどうして尻尾を露出するのか
「Qラインの羞恥」 低ケモ度の着衣獣人特有の慎みと恥じらい
「獣人服の尻尾穴問題」 窮屈な尻尾穴の弊害
「ふわもふ危機」 毛並みを衣服が逆撫でするんだよ
1. 尻尾の逃げ道は?「獣人服問題」
SFやファンタジー作品では、獣人(界隈では広くは「ケモノ」と云うらしい)のような言葉で括られる獣の耳と尻尾の生えた人物が登場する。
その形状はさまざまで、実在する動物の尻尾だけでは足りず、悪魔やドラゴンなど伝説や空想上の存在までもが想定される。
彼らに私たちと同じ服を着せようとすると、服の種類によってはどうしても尻尾と衣服が干渉してしまう。
この尻尾と衣服の干渉をいかに解消するかという問題を「獣人服問題」として、後に続く諸問題に先立って解決へのアプローチを試みる。
2. アプローチ1「拡張」
元々の機能を維持したまま、対応領域を広げようとするアプローチ。
元々の機能を喪失したりすると、転用、流用、改造とも。
服が元々あって、そこに獣人がやってくる、服ありきの考え。
この発想は、私たちの衣服を獣人用に拡張しようというもの。
これは犬や馬の衣装製作も同じ延長線上にあるかも知れない。
2-1. 尻尾穴とスリットがあればいいじゃない
この問題の解決に用いられたのが尻尾穴とスリット。
尻尾穴は衣服の尾骨に当たる位置に尻尾を通すために開けた穴。
スリットでは尾骨に当たる位置まで切れ込みを作ってそこに尻尾を通す。
既存の概念で着せたい衣装を獣人キャラクターに着てもらうには尻尾穴が一番簡単。ちょうど尻尾を通すのに都合のいい穴が開いている。
2-2. 尻尾穴の不都合、だって尻尾は悪くないから
尻尾が細かったり、短かったりする獣人ならそれでいい。
ところが狐のように中間がもふもふ太かったり、馬のようにふさふさだったり、鰐や恐竜のように太くて曲がりにくかったり、猿のように長かったり、オスの孔雀の飾り羽のように羽毛自体は直接動かせなかったりすると不都合が生じる。
どう不都合かというと、まず尻尾穴に尻尾を通すのが容易でなくなる。
また、尻尾穴に尻尾を通してからでないと服が着れない。
あるいは、尻尾を通したら服を着られない、服を着たら尻尾が通らないなど、構造的に着られなくなってしまう。
2-3. これで解決! 「後留め式尻尾穴」
これを解決するのが、尻尾穴をスリットに寄せて後から留める「後留め式尻尾穴」。
構造的にスリットと同じ開いた尻尾穴に尻尾を通した後で、ボタンやバンドなどで留めるというもの。
首を尻尾に見立てた場合の、セーターのプルオーバーとカーディガンの違いを思い浮かべればいい。いや別にブラのホックの有無でもいいけどさ。
これで実質閉じた尻尾穴とほぼ同じシルエットになる。
2-4. どうしてそのまま着られる服を着ないの?
当然だけれど、尻尾穴もスリットも無いのに着られる服もある。
丈が短かったり、尾骨よりもローライズだったり、布地がゆったりたっぷり十分で尻尾を覆ってしまっても苦しくないやつとか。
それはもう未拡張だよ。拡張済みと言ってもいいくらいに。
重要なのは着られるかどうかじゃなくて、着せたいか、(その獣人が)着たいかだから。
3. アプローチ2「考証」
獣人の実在を想定して、衣服を構築するアプローチ。
元々獣人がいたら、どんな服を着ているだろうかという考え。
その世界にどう獣人が存在しているかはそれぞれの作品の作者に委ねて、オーダーメイドでも成立する「拡張」に対してレディメイド(既製服)を考えてみたい。
3-1. そもそもどうして服を着るの?
裸で事足りるなら、私たちでも服を着ない。服を発明しない。
服を着るには理由があるのだ。理由がなければ服を着ないのだ。
端的に着衣の理由は生存に有利だから。
それが環境に適応するために必要だったから。
つまり目的は防護にある。
どんな環境から身を守るのかと言えば、それは自然環境と社会環境。
自然環境に身を置けば、暑いし、寒いし、熱いし、冷たいし、濡れるし、乾くし、汚れるし、痛いし、傷つくから。
社会環境に身を置けば、恥ずかしいし、どこの誰だか分からないし、仲間意識を持てないし、役割が一目で分からないし、違いをアピールしづらいから。
他にもあるかも知れないけれど、これだけでも服を着る優位性を主張するには十分だと思う。
服を着るだけで、生きていくのに、生き残るのに、共同体を存続させるのに有利になるのだ。不要なときは脱げばいい。
それは獣人であっても同じだろう。
3-2. 獣人たちが服を着る理由は?「獣人着衣論」
彼らには毛皮が、鱗がある。
さっき挙げた服を着る理由の大体は、それらが何とかしてくれる。
例えば毛皮で私たちより困るのは、汚れたときと、濡れたときくらい?
下手したら汚れた毛をカットしなきゃいけなくなるかも知れないし、洗うのにも乾かすのにも時間がかかる。
そんな彼らが服を着るのは、私たちだったら作業着で臨むような、毛皮や鱗でも防護を要する作業や仕事に関わるときがまず一つ。
つまり、防塵、防燃、防汚、防寒、防風、防犯などなど。
もう一つは、共同体に毛皮や鱗が無い個体がいる場合。
例えば、猫(長毛、短毛、無毛っているでしょ?)や象(あるけどまばら)やイルカ(体毛がない)みたいな個体。
あるいは、耳と尻尾にしか毛皮が無いような、↓ のケモ度指標に照らせば、ケモ度が1の個体。
私たちと同様の皮膚を多く共有する個体をある程度含んだ社会は、着衣の動機が私たちのそれと大きく変わることはないだろう。
これらを前提にすることで、獣人たちは服を着てくれる。
でも、毛皮を含む革製品は生理的に忌避される傾向があるだろうなあ。
3-3. ケモノ服のユニバーサル「獣人服尻尾要件」
獣人を含む社会の既製服は、ユニバーサルデザインの前提よりも多様な気がする。
尻尾事情に限定すれば、尻尾の有無や形状に関わりなく、安心して着られる設計。
けれど実際問題として、私たちの社会同様、極端なサイズは専門店にカバーしてもらうしかない。
対象になる衣服は、尻尾の始まりの尾骨に干渉する下着を含むボトムス、ワンピース、丈長のトップスあたりかな。
きっとそれぞれ尻尾を迂回するようなデザインになるんだろう。
3-4. 獣人下着「ケモパン」の必要条件を浚う
下着の歴史に立ち返れば、始まりは私たちが湯上りにタオルを巻くが如く布を巻いたことだろう。
私たち同様、腰布を尾骨を覆うように巻くのは尻尾を選ぶし、尻尾を動かすたびに布は緩むし捲れるしお尻が丸出し。やっぱり尻尾の下で巻くだろうか。
これでも動き回るにはとても心許ないので、固定する手段が望まれる。
紐、ベルト、ボタン。ベルトが尻尾の下で不安なら、ガーター方式で尻尾の上で腰に巻いて尻尾の下を通した布を吊って留めてみてもいい。一種の後留め式尻尾穴。
あるいは股を通した布の前後の角を左右でそれぞれ結んでみてもいい。
角の代わりに、取り付けた紐で結べば紐パンが生まれる。スブリガークルムや越中褌だ。
同じように、帯状の布地の両端を筒状に縫って紐を通したのが畚褌(もっこふんどし)。布地と紐を自由に選べる紐パン。
どれも尻尾の下から着けられる。
テクノロジーを現代に進めてみると、少なくとも尻尾の部分だけは股上を浅く取ったローライズなデザインが主流だろうか。
尻尾を避けるようなUやV形状のバックシルエットはきっと尻尾を選ばない。
尻尾を選べば、尻尾穴の下着も人気がありそうだ。それは自身の個性を肯定するものだから。
さらに未来ケモパンに目を向けてみれば、ナノマシンを集めて作った粘菌のようなスライムデバイスを貼り付けてたりするんだろうか。
ここにはもはや尻尾の有無など関係なくて、装着者の任意のデザイン、形状、質感に変化する。いっそダミー尻尾にまでなってくれそうな勢いがある。
こんな未来ケモパンなら、さまざまな機能拡張を可能にするスマートな前貼りやCストリングに似た形状をしているのだろう。
分泌物や体温などをセンシングすることで健康管理もお手の物。
着けたときにひんやりしそうな装着感は、ヒーターを搭載するか事前に温めておけば何とかなるにして、貼り付くぺったり感はどうなんだろう。
用を足すときは捲って留めたりするのかな?
縮んで邪魔にならない場所に収まってたりするのかな?
それともおむつよろしく、全部引き受けてくれた上で処理までしてくれたり?
拡張機能に広がる夢が止め処ない。変化機能がエラーを起こして、装着者の意図しない変化、例えば自身の感情に反応したり、他人のものと混線を起こしたりすると妄想が捗るけれど、もう下着とは関係ない。
まとめると、獣人の腰布は、股を潜って紐パンになり、Vバックを経由してスマートなCストリングになった。
尻尾を意識してデザインされたケモパンは、装着者に嫌が応にも尻尾の存在を意識させるものなるだろう。
願わくは、彼らが自身の尻尾をもっと誇りに思えるような下着であって欲しいと思う。
だけどこれって、獣人に下着を穿く文化がないと成立しないのよね。
3-5. ボトムスは腰布式に回帰する?
続いてボトムス。ローライズならそのまま穿くか、ベルト固定。ガーター方式なら、サスペンダーやウエストベルトから吊って固定ができるだろう。
ウエストよりも上の位置で吊る場合は、屈んだときに上方向に引っ張られる分、股上の浅さやスリットの深さ、尻尾穴のサイズには余裕を持ちたい。
尻尾穴のあるパンツなら、上方向に開放した後留め式。
スカートは尻尾よりも上で穿くデザインでも選択肢が多い。
スリットも尻尾穴も無いゆったりタイプ。丈と尻尾の兼ね合いでお尻や下着が見えたりするから、見えてもいいインナーウェア、オーバーパンツやペティコートを併用する。
上方向にスリットを入れたタイプは、布地やスリットの長さでいかに形状を維持させるかがポイント。
下方向にスリットを入れたタイプは、スリットの隙間がちらちら落ち着かない場合は、見えてもいいインナーの出番。
開放の無い尻尾穴タイプは尻尾を選ぶ。
上方向に開放した後留め式尻尾穴タイプは上のパンツと同じ。
下方向に開放した後留め式尻尾穴タイプは、開放部をどこまで閉じるかもデザインの余地。
着るときに尻尾が干渉して穿けなかったり、被れなかったりすることもあるだろうから、巻いて留める腰布式が安定しそう。腰布式はファスナーや複数のボタンを使って留めてもいい。
となると、上下開放した後留め式尻尾穴タイプなんかも考えられる。
3-6. 丈長トップスはスリットでもなきゃ穿いて着る
基本はボトムスと同じ。ウエストよりも上で吊る形なので、屈んだときに尻尾に干渉しないようにスリットの深さや尻尾穴の大きさには余裕を持ちたい。
ジャケットやチュニックなら、わざわざ尻尾を穴で括るようなデザインはよほど尻尾を選ぶ。
安定の、スリットも尻尾穴も無いゆったりタイプ。
下方向にスリットを入れるなら、シンプルなIライン、燕尾服のようなΛライン、あとは尻尾回りにゆとりを持たせたΩラインとか。
ワンピースやジャンパースカートなら、上と同じくゆったりも下方向スリットも上下開放した後留め式も。
いっそ尻尾穴を大きく広げて、そこから着ぐるみのように背中側から穿いて着るタイプもあるかも知れない。背中がばっくり開いたドレスみたいな。尻尾回りを残して、ファスナーで閉じてもいいし。
オーバーオールやワンピース水着も、上と同じく背中側から穿いて着るタイプかな。さすがに尻尾の逃げ場がないと着られないと思う。
3-7. どうして服を着た獣人たちが尻尾を露出させるのか?「尻尾露出論」
ここに来て卓袱台返しを決めるわけでもないのだけれど、一応押さえてはおきたいところ。
まず単純に窮屈だし、尻尾にはバランスを取ったり、物を掴んだり、殴ったり、虫を払ったり、舵を取ったり、感情を示したり、囮にしたり、栄養を蓄えたりする機能がある。
露出しておかないと、これらの機能は失われてしまう。
次に、着衣によって隠されてしまった情報を補う目的も考えられる。
いろんな種族の獣人が入り乱れて暮らす社会では、種族が一目で分かった方がトラブルが少ない。性質を把握して対応できるから。
ところが、それを示す情報が着衣によって多く隠されてしまっている。
また、種族で差異はあるものの、尻尾からは性別、成熟、健康とその意識、また美意識を読み取ることができる。
となると、隠すと却って疑われることになりかねない。
当然、尻尾を人目から伏せたくて隠したり偽装したりが必要な場面もあるかも知れない。
それは後ろめたかろう不審者として職務質問の優先度も必然的に高まってしまうだろう。
尻尾を積極的に露出させていく方がメリットが多いとなれば、どうせだったらおしゃれをして、毛並み、毛艶、センスの良さ、美意識などをアピールしたくもなるだろう。
ヘアサロンと並んで尻尾サロンでもトリミングや刈り込み、染色やスタイリング、アクセサリの装着も含めたセットなどを請け負ったりもするだろう。
これは一体型の店舗の方が多いかも。
このように尻尾の露出は獣人社会の価値観に強く影響を受ける。
衣服と生活スタイルの関係は切っても切り離せないのだ。
こうして獣人服は尻尾を露出させるスタイルが一般化される。
4. 獣人服の諸問題
こうして今回は二つのアプローチから「獣人服問題」の解決を試み、私たちが見知って望んだ獣人(けものびと)たちの住まう世界「ケモバース」にやって来られた。
これで彼らは、私たち並みに服を身に纏いながらも恥じらうことなく尻尾を晒してくれる。
ありがとう、けものびとたち。待っていたよ。
そしてここで浮かび上がってくる諸問題がこれら。
「Qラインの羞恥」 低ケモ度の着衣獣人特有の慎みと恥じらい
「獣人服の尻尾穴問題」 窮屈な尻尾穴の弊害
「ふわもふ危機」 毛並みを衣服が逆撫でするんだよ
4-1. それはケモ度が1の毛深さの話
『3-2. 獣人たちが服を着る理由は?』で触れた、着衣の動機が私たちのそれと大きく変わることがない彼らのケモ度が1。
彼らは尻尾こそ毛皮だけれど、そこを除けば私たちと同じくほとんど野晒しの皮膚に若干の体毛や産毛が生える程度。
すると尻尾の付け根の部分のどこかに、肌と毛皮の境界である生え際が存在するはずなのだ。
当然、全員がぴったり尻尾の始まりが生え際になっているなんてことはないだろう。
標準的には尻尾の付け根の尾骨の周囲、お尻の谷の入口から仙骨周辺までの楕円形に生え際が形成されると考える。
このエリアの広さや毛深さ、形状に個人差があって尻尾穴問題が形成される。
4-2. 「Qラインの羞恥」だって後ろのギャランドゥ
このエリアの体毛となれば当然プライベートでデリケートなのは想像に難くない。だって後ろのギャランドゥだもの。
広くても狭くても、毛深くても薄くても気になってしまうもの。
私たちでも、生え際なんてギャランドゥは当然として、おでこだってうなじだって自信が無ければおいそれと晒したがるようなものでもないでしょう?
お尻の谷にまで生え続いてる毛なんてあんまり見られたくないでしょう?
ここはデリケートなVIOに因んで、便宜的に「Qライン」とでもしておこう。若干Oと紛らわしいけれど、尻尾の付け根とその周囲のエリアをよく象徴していると思う。
自分一人で整えるのは難しいだろうし、VIOQと一纏めにしてそういうサロンとかのお世話になったりするんだろう。
生えていればこそ幾らでも綺麗に整えられようけれど、生えていないと禿げていると認識されてしまうかも知れない。
だからQラインは勝負のときは別として、積極的に衆目に晒すようなものではないだろう。
彼らからしてみれば、私たちの「尻尾もないのにローライズを穿き散らして憚らず、Qラインを臆面もなく見せびらかすさま」は、さぞ破廉恥に映ることだろう。
それに何より、きっと敏感なところだから……
そう考えたらQライン、エッチに見えてきませんか?
4-3. なるべくQラインは隠したい、だけど尻尾は露出したい
そんな要望に応えるケモノ服を、ここまで話を進めてきた私たちは既に知っている。
「尻尾穴」と「丈長ゆったりトップス」、「ゆったりスカート」そして「下方向スリットとインナーの組み合わせ」だ。
最もシンプルで手間なく、尻尾にも快適に解決してくれるのが尻尾穴。
穴のサイズを尻尾の径に合わせて極限まで絞れば、Qラインはほぼ見えないだろう。尻尾の付け根が窮屈なのは致し方ない。
ゆったりタイプは尻尾が嵩張らないなら手軽。
トップスは極端に丈長でもなければ尻尾を選ぶことはないだろう。
スカートはどうしても尻尾を選ぶ。丈を詰めてインナーと組み合わせるのは二度手間か。
下方向スリットとインナーの組み合わせは安定感がある。
組み合わせるだけあって、尻尾の付け根の窮屈さも自分でコントロールできる。
4-4. Qラインを隠しながら、どうしてもローライズが穿きたいの!
「要はQラインだけ隠せればいい」と突き詰めれば、パレオなど腰布をアウターに用いるオーバースカートの丈を詰めるのも一つの回答になる。
外から隠すオーバースカートは、内から隠すオーバーパンツと対の発想。
ローライズに限らなくても色々な服装に合わせることができるポテンシャルも強み。
4-5. 窮屈な尻尾穴の弊害「獣人服の尻尾穴問題」
Qラインを隠しながら尻尾を自由にする尻尾穴の欠点は、穴を絞ったせいで尻尾の付け根が窮屈になること。
尻尾が動けば動くほど、尻尾穴と尻尾の付け根が擦れてしまう。
これが「獣人服の尻尾穴問題」。
毛皮の毛足がそれなりにあれば、擦れの刺激を緩和してくれる。
毛足が長すぎる場合は、毛並みが少しずつ尻尾穴に巻き込まれてしまうし、絡まったりしてしまうかも知れない。
どちらも擦れる頻度が多ければ、毛の傷みが増えていく。
適度にトリートメントの必要はあるだろう。
一方で、生まれつきだったり、剃ってしまったりして尻尾が始まった辺りまでも毛が薄い場合は、ほとんど剥き出しの皮膚が直接擦れることになる。
かといって、尻尾穴を広げてQラインを晒しては本末転倒。根本的に狭い尻尾穴とは相性が悪い。
苦肉策で、尻尾に包帯やサポーターのようなものを着ける。
外見をリボンとか装飾的なものにすればあり? 蒸れそうだけど。
逆に尻尾穴側を毛皮とかでふわふわにしてみる。
やっぱり蒸れそうだし、くすぐったくてむずむずしそう。
なら、接触面積を増やした上で布地をサラサラツルツルにして圧力と摩擦力を分散させるか。
袖みたいに尻尾穴を筒型にして線じゃなくて面で受けるってこと? 生えてないってばれるんじゃね? だって、生えてたら毛並みぐちゃぐちゃになるか、筒が毛並みに流されて行くよ。しかも蒸れそうだし。
いずれにしても狭い尻尾穴のままでは解決が難しいと思う。
4-6. 精霊幻想記の回答「フリル2段or2枚重ね、尻尾は間に通す」
そしてこちらが精霊幻想記の回答。
フリル二段or二枚重ね、尻尾は間に通す。
実はフリルじゃなくてギャザーかも……
これは『4-4. Qラインを隠しながら、どうしてもローライズが穿きたいの!』で触れたスカートにオーバースカートを重ねる構造。
ここでは、二枚のスカートのデザインを統一することでオーバースカートの「あからさまな上物感」を感じさせない一体型の仕上がりになっている。とてもかわいい!
これでたとえ尻尾を振り上げても、下のスカートは捲れないからパンチラもしない。
ゆったりギャザーのオーバースカートでQラインをカバー。
さらには下のスカートは尻尾穴も大きく取れるから、干渉が減って擦れも少ない。Qラインの毛が薄くても安心。すごく機能的!
精霊幻想記はスカートとオーバースカートを一体型にデザインするアイデアでこの問題に解決案を示してくれた。
かわいくて機能的で無駄のない洗練されたデザイン。
このアイデアは原作小説イラストレーターのRiv先生のものかしら。
獣人女子のおしゃれと健康を救ってくれてありがとう。
4-7. 【210912追記】できれば一着で完結させたい!「捲り窓」
なんとリプライからアイデアをご提案頂いた。ありがたい!
丁寧に写真まで添えて説明してくれた。本当にありがとうございます。
「オーバーパンツとか、オーバースカートとか、正直めんどくさいし、できれば無い方がいいんだけど!」なんて期待に応えてくれるのが「捲り窓」。
構造をイメージしやすいように順を追って説明すると、尻尾の付け根やや下のQラインが隠れる位置に閉じた横スリットを入れる。
この段階では少し広めの尻尾穴。
スリットの中心から、上または下方向にスリットを入れて開放するとこれまでの尻尾穴の形状。
そうはせずに、横スリットの両端から2本のスリットで開放する。
そこで分離した布地を、尻尾穴になる部分を残して両開きファスナーやボタンなどで留める、分離型の開放した後留め式尻尾穴。
厳密には開放しないパターンもあるけれど、とりあえず措いておく。
両端2本スリットで上方向に開放すれば、分離した布地は最小サイズのオーバースカートに、同様に2本スリットで下方向に開放すれば、分離した布地は最小サイズのアンダースカートになる。
今の説明では、Π型または凵型に布地を分離したけれど、角を丸めて∩型やU型に分離してもいい。その辺の形状は自由に。
提案してくれた開放・分離のない∩型も尻尾を選ぶものの、ある程度の尻尾まで対応できるだろう。そこはデザインの余地。
尻尾穴になって捲れたベロ部分の布地は、素直に裏側に留めたり、あえて表側で留めて裏地を見せたりアレンジ幅がある。
また、尻尾に合わせて尻尾穴のサイズを任意に調整できるのが強み。いっそ尻尾がなくてもいい。とってもケモバーサル!
尻尾に合わせて開閉が自在で捲れる尻尾穴。だから「捲り窓」。
捲り窓はQライン周りの干渉も抑えながら、オーバースカートやオーバーパンツを必要としないように設計できるので、一着で済んで着替えが楽。
ただ、尻尾穴を残して布地を留めるのが少し手間になるかも。
重ね重ねわざわざのご提案、本当にありがとうございました。
4-8. ゆったりがもふもふを逆撫でするんだ「ふわもふ危機」
無事に獣人たちを窮屈な尻尾穴から解放できたから、個人的に本懐は遂げたのだけど、ゆったりのトップスやボトムス、オーバースカートで気になった問題を最後に一つ。それが「ふわもふ危機」。
尻尾が動くとそこに触れる布地が毛並みを逆撫でして、乱れたり絡まったり傷んだりしてしまう。ふわふわもふもふであるほどに。
おまけに静電気で「もふもふ」が「ぼわぼわ」になってしまう。ふわふわもふもふであるほどに!
私たちだって、髪が逆撫でされぐしゃぐしゃになったら嫌でしょう?
静電気でぼわぼわになったら嫌でしょう?
二次三次問わず好きな人がそれで困っていたら、……ちょっと眺めてるのもいいか。……よし、嫌でしょう?
せっかく諸々時間を掛けてスタイルをキープしてるってのに。
ふわもふキープは余計に大変だってのに。
そして遡れば、ケモ度が高くなると毛深くなって、ふわもふまではいかなくとも、全身若干「ふわもふ危機」だってことに今さら気付く。
そこで干渉する布地を減らすってのは身も蓋もない。極論にして裸になれってことだから。
4-9. 【231028改訂追記】ふわもふ危機に立ち向かう衣服へのアプローチ「低減加工」「テールラインプロップ」
代わりに布地の摩擦と静電気を低減する方向で考えると、筒状尻尾穴で触れた毛皮に触れる部分の布地を「静電気対策をしてサラサラツルツル」にする「低減加工」を施すのが現実的な落とし所だろうか。
つまり、アウターの尻尾が触れる部分の布地と、獣人肌着の裏地は摩擦と静電気低減のサラツル仕様になっているんだろう。
私たちのジャケットの裏地とウェストコートの背中側とか、スカートの裏地とかみたいに。
尻尾穴部分の布地だけなら、金属や石など、固い素材で尻尾穴の縁を覆っての対策も考えられる。あまり大きいとごつごつ痛そうだけれど。
また、尻尾に限って接触を減らす方向で考えると、尻尾とそこに被さるアウターやスカートの裾を浮かす「テールラインプロップ」も現実的か。
布地を持ち上げて、尻尾の動きを妨げない程度に遊びを持った空間を確保する。尻尾が遊べるトンネル構造。
支持材は、パニエやバッスルのように間に挟んでもいいし、裏地に組み込むタイプでもいい。
構造は、キャップのつばのようなシンプルな板構造から始まり、尻尾の動きに追従するように伸縮可動性を持たせた、ヘルメットやアーメットのバイザーのような板スライド構造。それを複数備えた、エビやダンゴムシの多節甲殻や多段式スライドドアのような多段スライド構造。提灯や扇のような蛇腹構造など用途によってさまざま。それらの複合型があってもいい。
テールラインプロップは、ケモバースの種族に始まる尻尾の個性、性別や世代、ある程度の身分や立場に関係なく、尻尾の保護や、尻尾に掛かる布地のシルエットを整えたい需要を思えば、私たちの世界のパニエやバッスルよりも重宝されていることだろう。
そして尻尾の個性や、合わせるファッションの用途、さまざまな身分や立場で異なるそれぞれの要求に応えて、形状もデザインもとても豊富な種類の製品が開発されているに違いない。
4-10. 【231028追記】ふわもふ危機に立ち向かう尻尾へのアプローチ「テールガード」「テールカフス」「テーレット」
布地と干渉する部分の尻尾の毛並みを保護するなら、「尻尾の撓やかな動作を妨げない柔軟性」、「毛並みに押し流されない安定性」、「快感な装着性」、「毛並みや地肌をの傷めない着脱性」を満たしたい。
「テールガード」は、「尻尾の毛並みそのもの」へのアプローチ。
干渉部の毛並みをクリームやワックスなどで纏めたり、静電気対策や摩擦低減を図る。
毛足が長ければいっそ編んでしまったり、エクステで補強することもできる。補強エクステは、対静電気・耐摩耗加工を施された製品が普及するだろうか。
被服なら、脚絆やブレスレットのような物で覆うのもいいかも知れない。「テールカフス」「テーレット」は、「干渉部の尻尾を被服する」アプローチ。
条件を満たした機構や素材で、コームティアラやヘアピンのように挿して固定する。
尻尾の動きを妨げない程度に柔らかく歯が短めのコーム(横櫛)を尻尾に巻き付けて留めるイメージ。コームの長さ(幅)は尻尾の太さにも依るので、ある程度長めのフリーサイズ。円周方向か、角度を付けて螺旋に巻き留める。
袖状のものが「テールカフス」、ブレスレット状のものが「テーレット」。
柔らかい帯に複数の歯を幅方向に貼り付ける構造なら、帯は柔軟素材なら無段階、腕時計のバンドのような多節、ブレスレットのように分離独立したユニットをジョイントで繋いでも、またそれらの複合でもいい。
歯の長さを短くし、多段に並べ、数を増やした「面で固定する」面ファスナーにも期待したい。
しっかり貼りついてずれず外れず、剥がしたい時には毛並みにも地肌にも負担なく外せるON/OFF自在のひっつき虫構造や、粘着系の素材もおもしろい。
粘着式なら毛足の長さも選ばない。極端な話、無毛でも。
伸縮性に富んで尻尾にフィットしてストレスなく、布地側も傷めない要求を満たす素材があれば、尻尾を守る「ずれないリボン」が実現する!
装飾された「巻き付けて挿す押櫛」、「ずれないリボン」は装身具となり、ふわもふ危機を退けながら、例えば干渉部だけ極端に毛足の短い、あるいは薄いか無毛のQラインをテールカフスで隠しながら尻尾露出の高い服を楽しむことができるし、動作で揺れる裾や尻尾穴の前後で異なる彩りを放つテーレットはチラリズムを演出する。
さらには、本来の装着部位である干渉部付近ではない、尻尾の「先端部」に身に付ける「尻尾アクセサリ」としての役割を担うのは想像に難くない。それらは様々な形状や材質の意匠を凝らしたチャームなどがあしらわれているだろう。
ただ換毛期は、ずれたり取れたりがしやすくなって、ちょっと気が抜けなさそう。
5. おわりに 衝動が向くままに燃やしてみた結果
アニメを見て、あのスカートに感動して書き殴った7tweetから始まって、それを説明しようと纏め始めたらこんな量になるなんて思ってなかった。
こんなに言葉を弄さないと説明できない文章力が恨めしい。
それだけの情報をたった一枚の画面に込めてしまえるのだから、イラストレーションというのは本当に凄いのだ。
個人的な収穫は、「ケモバース」や「Qライン」を名も無きの概念から言語化できたこと。整理しやすくなった。
服飾専門でもないし、コスプレもしないし、見るのや構造知るのは楽しいけれど、さらには別段ケモノ系特化ってわけでもない。
専門領域の方々からしてみれば鼻で笑うような戯言かも知れないけれど、そこはほっこり見守ってもらう感じで。
まあ、もう書いちゃったし、きっと誰かの暇つぶしくらいには役立てるだろうと信じて。
そしてすべては彼らに楽しく快適に服を着て、より良い日々を過ごしてもらうために。
ケモバースに栄えあれ!
6. 最後に謝辞を。
まず、精霊幻想記には予想外の衝撃的感動をありがとう。
引用先ページの制作者様方に助かりましたし、勉強になりました。本当に感謝しかありません。
また、リプライでアイデアを寄せてくださったおまえモナさん、ありがとうございました。
そして読んでくださった方、長々お付き合いいただきありがとうございました。
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