sori
検証、考察、まとめなど、中の文章を読み飛ばしても内容把握に差し支えないもの。 また、小説は掌編以下が目安。
それなりに腰を据えて読む分量。 短編以上が目安。
「見つけてくれてありがとう」慕っている配信者が時に嬉しそうに、時に畏まって口にしていた言葉。 クリエイターにはきっと身に染みる感慨。 だって、スマホひとつでもはや誰もが表現者。 好きを気軽に晒せるようになったことは、それを強く押し支えてくれている。 好きを気軽に探せるようになったことは、やっぱりそれを強く押し支えてくれている。 好きなものを好きと言えるのは幸せなことだし、好きな人に好きを伝えられるのも幸せなこと。 その意味なら、幸せはわりと気軽な距離まで近づいてきて
「トイレで飲食は叶うものか」 「適か不適なら不適だ」 「だよな。俺なら食べる間も無く戻すぞ」 「実現性を問うなら余程清潔な空間だろう。新設未使用のトイレで厠神と客人を抹茶と茶菓子で持て成して諸々の弥栄を願う風習はあるそうだが」 「儀式級便所飯か」 「だがまあ便所飯の口実には叶うまい」
「トイレ行ってくる」 「その必要はない」 「代わりに行ってくれるのか?」 「いや、トイレが来るからだ。俺がトイレだ!」 「まさか便器アバターだと?」 「さあ、心ゆくまで致すが良い」 「猫砂かよ。いくら俺がケモノだからって!」 「おや、ペットシーツがお好みか?」 「いや違う、そうじゃない」
「ねえ。確認なのだけれど、これが読書感想文なの?」 「はい。何か問題でも?」 「私にはこれが絵日記にしか見えないのだけれど」 「はい。絵本の読書感想文でしたので、絵本形式にしました!」 「ほう?」 「絵双紙や文人画に倣って、こういうのもありかなと」 「ならばそれを明記して再提出なさい」
「この絵本、正直おもしろくないぞ」 「お前向けじゃないしな」 「俺も大人になっちまったか」 「人工知能向けなんだと」 「俺は人工知能ではないようだな」 「これで学んだ人工知能が絵本を描くんだそうだ」 「それは人間が読んでおもしろいのか?」 「あるいはおもしろく感じるように育つのかだな」
「色んな仕掛け絵本があるだろ」 「動く、ポップアップ、扉が開くとかあるな」 「とにかく巨大なのを考えたんだ」 「ページが捲れないだろ」 「だからページを巡るんだ。それぞれのページに足を運んで触って遊べるんだ」 「怖くないお化け屋敷みたいだな」 「いや怖いぞ」 「お化け屋敷じゃないか!」
「刎頸、水魚、管鮑、断琴、断金、金石、金蘭、莫逆。さて俺たちはどれだろうか」 「何だそれ」 「友人関係の称号だよ。まあこれらはみんな最上位級の、将棋のタイトルみたいなものだが」 「なら俺たちは月極だな」 「サブスクフレンドかよ」 「そこそこの金を貸してやれる程度のな。それも無利子で」
「こんなこと白うのさ、変かもなんだけど。私、あなたのこと凄く大切な友達だと思ってる。なのにね、なのに、友達なのに、おいしそうって思っちゃったの」 「それ私に伝える意味ある?」 「秘密にしておけなくて」 「……はあ。で、それは食欲的な? それとも性欲的な?」 「えっと、……お笑い的な」
「『機械で友達を作るなんて、かわいそうだね』。そうクラスメイトに言い放った少年は、親友がロボットだったんだ」 「何それ。かわいそうはかわいいってやつ? むしろ一切機械に頼らず育って出会うなんて今の文明でありえるの?」 「神のみぞ知る」 「その神、デウスエクスマキナだったりしない?」
「みんな私一人を残して結婚しちゃった。未婚同盟の友情は永遠って誓ってたのに」 「急な呼び出しはそういう。……まあでもさ、その友情こそみんなの努力の原動力になったんじゃないのか? そして彼女たちは勝利を掴んだ。今度はお前が努力する番だよ」 「私はその友情が信じられなくなってるの!」
「オーケー。フレンドシップが友軍の船、フレンドリーファイアが援護射撃なんだな?」 「ああ、その通りだ」 「助かったよ。この手のゲームは不慣れでさ」 「癖の強いゲームなんだ」 「やっぱり気の置ける友を持つと頼もしいな」 「気の置けないの間違いじゃないか?」 「気の置けるで間違いないぞ?」
「じゃあ告白だってことがそもそも伝わってないわけか。ならリハーサルも済んで、あとは本番で決めるだけだろ」 「その科白、一度でも告白してきてから言ってもらえます?」 「すればいいのか? じゃあするわ」 「へっ? 今?!」 「えっ?!」 「……あー。何か、ごめん」 「……あー。こちらこそ」
「ふえぇ」 「どした?」 「デート中につい彼を押し倒しちゃって」 「攻めるね」 「で、キスしたら彼が発作起こしちゃって。……男性アレルギーとか」 「そこまで男勝り極めなくても」 「アバターだってかわいい女の子だったのに!」 「メタバースで?! あんたの彼氏のファントムセンスも相当だわ」
「病み上がりが鼻が利かなくて」 「なことで来んな。私はあんたの恋人に恨まれたかない」 「彼女はそんなことしないよ。それよりこのままじゃ彼女がどんな匂いか分からない」 「逆に考えたら? 匂わなくていいの。いざ臭かった時、思わず傷付けなくて済むと」 「臭いの?」 「そこは否定しないのか」
「あんた一年中半袖だけど、寒くないの?」 「たまに寒い。だが俺の童心は屈しない。冬にミニスカートを穿く心意気にだって負けない!」 「その癖、シーズンイベントとかの飾りつけにはやたら熱心よね」 「自らの行動に因って実感するんだ。豊かに巡る季節の中で生きているんだと」 「一年中半袖でね」
「衣替えを年に一度だけするって人が居てさ」 「一年で季節が一巡しきってないの?」 「それか地下とか極地とかみたいなところとを行ったり来たりしてたとかかな」 「あー、普段は海に出っぱなしの船乗りとかもか」 「まあどちらにせよ昔の話なんだけど」 「季節が巡ってたなんてさ、本当なのかなあ」