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モデル美女が教えるコンサル基礎スキル

突如現れた謎のモデル美女、佳乃2号。社長から歓迎会ランチを押し付けられたヒルズ氏達は、レストランでモデルポーズを披露する佳乃2号を前に、ヨイショの連続でなんとか乗り切るのであった。(前回


ランチでランウェイーー。最近、不可解なことが多すぎてな。体調が芳しくないのだが、そうは言ってられない。さっさとオフィスに戻って仕事をこなすぞ!

◆お嬢の調教

歓迎会は無事完了、お会計も済ませタクシーを呼ぶか、、、という時だ。

「もしもしぃー」

2号が携帯をとった。
はい、はい、、、はーい。

「あのぉ、社長から今日はもう帰っていいって言われましたぁ」

は?

あ、、、そう。明日は来るのかな?うん、じゃ細かい話はまたね。
キレかかる思いを必死で抑える。コンサルたるもの、アンガーコントロールは必修科目だ(*)。

「じゃぁ、お疲れ様でーす」

「「「 ええ、お疲れ様です 」」」


、、、、、、


「あのものは、なんなのでしょうか?」
車内でサラサラの髪をはねのけるお嬢。2号去りし後、妙な疲れの残った我々は結局タクシーで帰路についている。

おっとりして見えるお嬢だが、彼女の攻撃力は抜群だ。この雰囲気は即ち「あいつ、いつかぶっ潰す」レベル。

お、お嬢氏さん、僕チョコレート持ってます!どうですか?
媚を売るのは、お嬢氏のスパルタ教育で調教されつつある新人Boy氏。意気揚々と合コンパーティーを語っていたのが既に懐かしい。

お嬢氏に新人Boy氏の育成を押し付けたのは、他でもない私だ。
だが、新人Boy氏渾身のプレゼンに、

「日本語、話してくださる?」

と笑顔でコメントした時は私も凍りついた。

あの時と同じ笑顔を見せ、マカダミアチョコを口に運ぶお嬢氏。ペコペコする新人Boyを見るに、これはこれでうまくいっているのかもしれない。

やれやれ。
ため息をつき目を落としたスマホが、静かに振動する。

◆秘密のコーヒータイム

ギャル氏からのメッセージだ。

"お茶しませんか?"

珍しいな。
というか、お茶しませんか、ってなんだ?
ただでさえ2号ランチに随分時間を取られたのだ、お茶する暇などないのだが、、、

"角刈りマネージャーも来ます"

!?
チーム全体の打ち合わせ?しかもわざわざ社外で? スケジュールに入っていなかったはずだが、、、

嫌な予感がする。

ソフトSMプレイを繰り広げるお嬢&新人コンビにも告げ、トリーズコーヒーで降りる。


「お疲れ様、、、でした」

トリーズコーヒーに並ぶは、虚ろな目で我々を見つめる角刈り氏とギャル氏のコンビ。

いや、そちらこそ、、、HPがほぼ残っていないようだが大丈夫だろうか。
時間が勿体無いと思ったのか、全員分のコーヒーが既に注文されている。

「では、手短に」

ギャル氏がぽつりぽつりと話し出す。

◆2号の特殊スキル

それは私たちがランチに出かけてすぐのこと。

忙しいメディカルチームは、デリバリーしたサンドウィッチ+カフェラテの軽いランチを頬張りながら仕事を続けていた。

「全員、手を止めて聞いてくれ!」
突然オフィスに響く社長の声。
華麗にスルーする社員達。

「手を止めろと言ってるんだぁ!」
うるせぇな。苛立ちの表情を浮かべる我が社の猛者たち。みな正直者だ。自分のキャリアにプラスのことしか考えない。

「今日からインターンに来てもらった由乃2号くんだが、皆にもぜひ見習ってほしい!」

見習って、ほしい?
コンサルが、モデルから?
歓迎会での一部始終を思い出す。彼女の得意技「どこでもランウェイ」の度胸は確かに見習う点もありそうだが、、、

「私はね、君たちの効率の悪さに辟易としているんだよ」

社長からの急なディスりに、ついに手を止め話を聞き出す社員たち。

「いいか?」

「彼女は、」

一歩前に出る社長。

「君たちより圧倒的に!仕事ができる!」

チーン、アップ!

「なぜかわかるか?」

顎を上げたまま右手の手の平を上に向ける。
コンサル必殺、リンゴを持つポーズだ(*2)。

「彼女はな、」


ごくり、、、


「ブラインドタッチが、できる!」


な、、、んだと?

「ぶはぁぁぁぁああーーーーっ!?」

新人Boy氏が、盛大に崩壊。

「あのギャル氏さんすいませんブラインドタッチという言葉の定義を確認させてください即ちつまりなんでしたっけ?」
動揺する新人Boy氏には目もくれず、同じく動揺したお嬢が切り込む。

私も同じ疑問を抱いた。
"ブラインドタッチ"といえば、キーボードをガン見せずタイピングする現代社会に生きる人々のアクロバティックな基礎能力のことだと思っていたが、私は間違っていたか?

新人Boyはコーヒーを拭くと即座に「ブラインドタッチ  別の意味」を検索。お嬢から「ググりなさい!カスなの!?」と叩き込まれた成果だろう。

ここで混乱する我々を見つめていた角刈り氏、
神妙に頷き、ここではないどこかへ目線を移す。

「あの時、フロアにも同じ動揺が走ったのだよ」


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(*)感情的にキレるコンサルタントもいるにはいる。が、感情をあらわにすることは成熟していないとみなされるため、傾向としては理詰め&皮肉が得意な方が多い。だからと言って怖くないわけではない、むしろ超絶怖い。お嬢氏がよい例だろう。

(*2)プレゼン中のポージングもコンサル必修科目。しかし、お手本とばかりにTED Talksを見すぎたせいか、プレゼン中にウロウロし過ぎ、クライアントを情緒不安定にさせるコンサルタントも近年増加している。

Twitter: @soremaide

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