コンサルよ、その刃で横文字を断ち斬れ
マイクロマネジメントの悪夢が去り、ようやく平常運転に戻りつつあるヒルズオフィス。しかし次の災難は無情にもふりかかるのであったーー。(前回)
最近、疲れがひどくてね。あぁもう深夜2時じゃないか、リモートワークは終業時間が決めづらいねぇ。では寝ますか、、、
◆目覚め
眠りから覚める時の浮遊感が嫌いだ。まだ潜っていたいのに無理やり光をあてられ、吊るし上げられるような、、そんな鬱陶しさを今日も感じる。いや、今日はいつも以上にうざい気がするが。
(、、、ここは?)
見慣れない天井が広がる。
不安に飛び起き、周りを見渡す。
「病院、か?」
私は、、、病室にいるようだ。にしては静かだな。記憶があやふやだが確か昨夜は普段通りに2時ごろベッドに入り、それから、、、
ツタツタツタツタ、、、、
む?軽快なビートが外から聞こえて来る。
意を決して外に出る。ふと昨夜の服のままなことに気がつく。寝ている間にサイボーグにされた的な展開はなさそうだが、何らかの治療を受けたなら部屋着な訳もなく。
「どうなってんだよ、、、」
誰もいない受付を通り抜け、外に踏み出す。
これは、、、
がらんとした街を前に茫然とする。愛石神社の近くか?ここで人間ドック受けたことあったな。通りに見覚えがあるのはそのためか。
誰もいない街に出る。
遠くに人影を発見。何やらステップを踏みながらぶつぶつと呟いているようだ。一体何を、、、
ゴッ!
次の瞬間、横殴りの衝撃を受け倒れ込んだ。
◆汚染
「いってぇ、、、」
思いきりぶつけた頭を庇い、目を開け、ドン引きする。
ギャ、ギャル氏?
な、なんだ?どこから出てきた?いやその前にだ、私はギャル氏に公道で押し倒された形になってるんだが?これはセクハ...
「兎に角、事情は後で説明する!」
「このイヤホンをつけて!あの音楽を聞いちゃダメ!」
何を言ってるんだ?
「ヒルズさんが寝ている一か月、世界は汚染されちゃったんだよ!」
一か月?汚染?
混乱のままイヤホンをつけようとする。
「フレキシビリティが、、、」
遠くの人影の声が聞こえる。
「早くイヤホンを!」
さっきからギャル氏め、ワットをユーは言ってるんだYo,,,,,,,wait? マイ頭脳のメカニズムがサドンリィ, ルー小柴的なサムシングにシフトぉ!ディスシチュエーションはワットはぷんド!おい誰か、アイニードヘルプ!アイニードヘルプ!!!
「はっっっっ!」
ゆ、夢....か?
妙に明るい窓を眺め、自然な
流れでスマホの時刻を確認する。
「は、はぃ、、、?」
◆現実こそが
ヒルズ砂漠にログインしたのは10時半を過ぎていた。
「いやー、死んでるのかと思ったよ!」
ニヤニヤと笑うギャル氏の顔が画面に映し出され、押し倒された夢を見たことは墓場まで持っていこうと決意する。奴のことだ、聞いたら#generalチャンネル(*)に流しかねない。
「じゃ、マネージャーさん、始めますか!」
呼び名で思い出したが、
読者諸君、祝ってくれ。
ついに私はマネージャーになった。
とはいえ権限は殆ど変わらず、売上への責任は増し、社長報告の頻度が上がった。給料もかなり上がったのだが、ネガティブ要素を補えているかと言われると分からない。社長報告の頻度が減るならアソシエイトの方がいい、と思ってしまう意識低い系の自分がいるのも事実だ。角刈り氏はコンサルタントに降格したが、前より楽しそうだしな。
「ーーというわけで進捗は順調、先方の体制変更によるインパクト分析の結果は、、、」
サクサクと状況報告するお嬢氏。この有能さはもはや癒し、でも転職活動中なんだよなぁあぁぁぁぁぁ。
「えっと、僕の方は、ちょっと議事録の進捗が遅れてまして、えっと、、」
残ってほしくないやつが残るのは世の常だよなぁぁぁ、、、
じゃなくてだ。
「は?議事録ぐらいさっさと書けよ」(*2)
呆れ顔を見せるギャル氏を「ちょっと待て」と制止する。
そうだ、
夢の理由を思い出した。
「新人Boyくん、なぜ書きづらいか共有してくれ」
「これは大きなリスクとなる要素だ」
困惑の表情を浮かべるメンバー
新人Boy氏がおずおずと話す。
「日本語が、理解できないのです、、、」
(続く)
(*) Slackなどのビジネスチャットツールで「全社員」向けに共有するチャンネルに付けられがちな名前。内密なチャットをここに誤爆すると恥ずかしいことになるぞ!
(*2) 議事録はできれば当日その場で、遅くとも翌日午前中。これ、コンサル界隈だけでなく全世界の常識だと思ってたんだ。が、最近気が付いたが3日ほどかかる者もいるようだ。コンサルは生き急いでいるのかもしれん。
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