読書感想文:キッチン常夜灯
読んだよ!
『キッチン常夜灯』
(著:長月天音)
(出:角川文庫)
街の路地裏で夜から朝にかけてオープンする「キッチン常夜灯」。チェーン系レストラン店長のみもざにとって、昼間の戦闘モードをオフにし、素の自分に戻れる大切な場所だ。店の常連になってから不眠症も怖くない。農夫風ポタージュ、白ワインと楽しむシャルキュトリー、アップルパイなど心から食べたい物だけ味わう至福。寡黙なシェフが作る一皿は、疲れた心をほぐして、明日への元気をくれる──共感と美味しさ溢れる温かな物語。
わたしがこの本を選んだ理由は、インスタグラムでよく見かけていたからです。『キッチン常夜灯』というタイトルから、きっと美味しい料理が登場するに違いない!と思いました。
読み終わったとき、みもざの未来や、みもざを取り巻く環境に思いを巡らせて、心が温かくなるのを感じました。
この小説の主人公は、南雲みもざという女性です。「ファミリーグリル・シリウス浅草雷門通り店」というチェーン系のファミリーレストランの店長を務めています。
ある夜、みもざの住んでいるマンションで火事が起こり、みもざの部屋が水浸しになってしまいました。その後、会社が倉庫として使用しているビルに、みもざは一時的に身を寄せることになります。そして、ひょんなことから「キッチン常夜灯」という、夜通し開店しているレストランの存在を知り、たびたび訪れることに。
『キッチン常夜灯』を読んで、とくに印象に残ったところは、3つあります。
1つ目は、みもざが、無理やり店長という責任を押しつけられているところです。「ファミリーグリル・シリウス」の本社にあたる会社が、女性を活躍させよう!という方針を一方的に決めてしまいます。そのせいで、みもざは、やりたくもないのに、店長という肩書きを押しつけられてしまいました。
わたしは、ずいぶん乱暴なことをする会社だなぁ、と思いました。「わたし、店長をやりたいです!」と女性が手を挙げたのならまだしも、「わたしは、店長なんてやりたくありません!」と拒否している女性を「会社の方針だから」と無理やり肩書きを押しつけるなんて、パワハラ人事です!腹が立ちます!
2つ目は、そんなみもざが、「キッチン常夜灯」で出会った人たちと、穏やかに交流することで、前向きになっていったところです。みもざは、「キッチン常夜灯」に通ううちに、他の常連客と顔なじみになっていきます。そうして過ごしていくうちに、常連客の抱えている想いや、生き方を、みもざは知ることに。
3つ目は、「キッチン常夜灯」で提供される、とても美味しそうな料理の数々です。中でも「これ、絶対、美味しいやつ、わかる!」と胸が弾んだのは、「第1話 眠れぬ夜のジャガイモグラタン」に登場した、ジャガイモのグラタンです!
グラタンといってもチーズもベシャメルソースもなかった。スライスされたジャガイモがこんがりと色づいていて、香ばしい香りがする。フォークを入れるとジャガイモの下にはクタクタになったタマネギと細かく刻んだベーコンが隠れていた。タマネギはすっかりトロトロになっている。
ねっ!これ、絶対、美味しいやつですよね!わたしはグラタンに目がないのですが、外食が苦手で、あまり食べられず・・・。あぁっ!「キッチン常夜灯」のジャガイモグラタン!食べてみたいっ!ジャガイモとグラタンは正義ですっ!
わたしは、この本から、美味しい料理は人を元気にする力があること、そして、自分から行動することの大切さを、あらためて学んだような気がします。臆病なわたしには、一人で外食するなんてハードルが高すぎますが、とりあえず、店の前まで行くことから、初めてみたいと思います。いつか、美味しいジャガイモグラタンを食べるために!
※表紙を撮影した画像を消してしまっていたので、画像はありません。うっかりしました😅