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第296話:🟡置き手紙:詩

「置き手紙」

家に帰ると
灯りが消えていた
鍵で玄関を開けるが
中には人気がない

とりあえず俺をさがす

と言っても
2DKの小さなアパートだ
こっちの部屋にいなければ
あっちの部屋しかない

だが、あっちの部屋にも
俺はいない

トイレかもしれない

しかしトイレには白い便座が鎮座しているだけで
俺がいた形跡はない

こたつの中か?
押し入れか?
まさか冷蔵庫?

せっかく帰ってきたのに
俺がいないのでは話にならない

はて、俺はどこに行ったものか?
ちゃぶ台に肘をついて考えてみる
しかし
わからない
カーペットをめくってみるが
いるはずもない

ふと机の上を見ると
手紙が置いてあるのが見えた
手に取ってみると
お袋からの手紙である

俺はすばやくそれに目を通す

ひとこと、ちいさく
「ごめんね」と、書いてある


ははあ
さては、お袋のやつ
どうやら俺を
生み忘れちまったらしい


■土竜のひとりごと:第296話

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