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なぜ働いていると本が読めなくなるのか
「今日も残業で疲れて、結局本を開く気力もないまま寝てしまった…」
「休日に読もうと思っても、仕事の疲れが抜けなくて」
「気がつけば、またSNSでだらだら時間を過ごしていた」
こんな経験、心当たりはありませんか?
この本は、そんな「読めない」悩みを抱える私たちに、大切な気づきを投げかけてくれます。
それは、私たちの「読めない」は、個人の意志の問題ではなく、実は日本の労働文化が生み出した構造的な問題だという指摘です。
本書の核心:「全身全霊の呪い」からの解放
著者の三宅香帆さんは、明治から令和まで、日本人の「働き方」と「読書」の関係を丹念に紐解きながら、私たちが気づかないうちに背負わされていた「重荷」の正体を明らかにしていきます。
その重荷とは、「仕事には全身全霊を捧げるべき」という、近代以降に作られた価値観です。
歴史が教えてくれること
私たちの働き方と読書の関係は、時代とともに大きく変化してきました。
明治時代には「時は金なり」という西洋の価値観が輸入され、「勤勉」が国策として推進されました。
それに伴い、読書は「実益」のためのものへと変質していきます。
高度経済成長期に入ると、「企業戦士」という理想像が生まれ、仕事以外の活動は「余暇」として軽視される傾向が強まりました。
そして現代では、「自己啓発」の名のもと、余暇までもが生産性向上の時間となり、SNSやスマートフォンの普及で、わずかな「すきま時間」さえも奪われていく状況が生まれています。
著者からの提案:「半身の仕事」という生き方
本書が提案するのは、「半身の仕事」という新しい働き方です。
これは決して「手を抜く」ということではありません。
むしろ、人生という長い旅路のために、適切な距離感を保ちながら働くという賢明な選択です。
新しい働き方と読書の実践
「半身の仕事」を実現するために、まずは時間の境界線を引くことから始めましょう。
平日は19時までと決めて必ず帰る、土日のうち最低1日は完全な休養日にするなど、明確なラインを設定します。
そして、通勤電車では必ず本を読む習慣をつけていきます。
読書をより自然な形で生活に取り入れるために、環境づくりも大切です。
リビングの一角に本専用の場所を作る、昼休みは喫茶店で短時間でも読書の時間を作る、寝室にはスマートフォンの代わりに本を置くといった工夫を重ねていきましょう。
何より大切なのは、読書から「効率」という価値観を取り除くことです。
読書に「役立つか」という物差しを持ち込まず、気になる本は分野を問わず手に取ってみる。
「積読」を罪悪視せず、本との自然な付き合い方を見つけていくのです。
明日からの新しい一歩
本書の実践で目指すのは、仕事も読書も、どちらも楽しめる豊かな人生です。
今夜、寝室に持ち込む本を1冊選ぶところから始めてみませんか。
明日の通勤バッグに気になっていた本を入れ、次の休日には本屋さんでゆっくり過ごす時間を作ってみる。
そんな小さな一歩から、あなたの新しい生活は始まります。
「全身全霊」の重圧から解放されれば、仕事も読書も、もっと自然に楽しめるはずです。
その第一歩を、今日から始めてみませんか?