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Pilot's note NZ在住Ashの飛行士論

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NZ在住のパイロットAshによる飛行士論です。パイロットの就職、海外への転職、訓練のこと、海外エアラインの運航の舞台裏などを、主に個人的な経験に基づいて事実と意見を織り交ぜ、毎回…
自分が訓練生だった時に、こんなレポートがあったらよかったな!と思えるような内容を意識しています。自…
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2021年8月の記事一覧

日本の管制官は英語ができない、は本当か 後編

前話はこちら 前回は、Yotuubeに上がってきた貨物便と日本の管制官のやりとりについて、「日本人管制官は英語ができない」と評する言説に疑問を投げかけました。 今回は「管制官はよくやった」という前提に立ちつつも、現実として明らかに発生している「無駄なやりとり」をどう見るか、どうしたらより効率的にできたかを、Youtube上の経過時間と出来事を並べて検証してみましょう。 Maydayを言わなかったパイロット1:05  National Cargo 891(以下NA891)

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日本の管制官は英語ができない、は本当か

先日、貨物便の火災警報が鳴って成田空港に引き返すインシデントがあったようで、その無線のやりとりがYoutubeに上がってきていました。 私は、ツイッターでこれを知り、こんな風に感想を書きました。 ごく自然に、この事例から何が学べるのかな、自分が同じ状況だったらどうしようかな、相手がいるコミュニケーションの話だから、自分が与える情報と相手が欲しい情報にどんな違いがあるのかな、という観点でこの事例を眺めていました。 しかし、他の反応を見ていると「日本人の管制官が英語のやりと

VFRクロスカントリー考 倍角修正を解説します

前回の記事で、A地点からB地点に向けてナビゲーションを開始する「発動」手順として、3Tチェックを紹介しました。 今回は、その後どのようにナビゲーションを維持するのか、また、ズレが発生した場合にどのように修正するのかを解説します。 本稿を含めたマガジンの収録記事は、著者の私見であり、あくまで参考情報の提供が目的です。実際の訓練にあたっては、それぞれの国の法律を尊守し、担当インストラクターの指示を優先してください。 倍角修正3Tチェックで発動したあと、パイロットは保速、保針

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VFRクロスカントリー考 パイロットによるナビゲーションの実際「3Tチェック」

前回の話で、飛行機のナビゲーションの成り立ちをざっくりと解説しました。 黎明期に飛行士が道路地図を見ながら行った地文航法があり、航法士の登場で推測航法が発達し、それが今日の操縦士訓練における航法訓練の基礎となったと言う話でした。 また、推測航法には必ず誤差が含まれるため、これを地文をはじめとした補助航法でリセットしながら飛ぶことが航法の基本だ、と言う話をしました。 今回は、その実践をお話ししたいと思います。 本稿を含めたマガジンの収録記事は、著者の私見であり、あくまで

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VFRクロスカントリー考 ゼロから始める航法

飛行機は、A地点から離れたB地点に早く移動したい人間の欲望を叶えるために生まれた乗り物です。したがって、これを運航する操縦者には、AからBに正確にたどりつくための技術「航法」が求められます。しかし、言うだけなら容易いもの。実際にやるとなると、一筋縄ではいかないのが航法です。 地文航法大昔、パイロットが飛行機を飛ばしながら目視で目的地にたどり着くには、道路地図をそのままコクピットに持ち込んで海岸線や道路に沿って飛ぶしかありませんでした。 地上物標を飛び石のようにして飛んでい