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私の卑しさすら包み込んでくれる、1人ディズニーシー探訪記

今回のエッセイでは、ディズニーシーのショー「ビリーヴ!~シー・オブ・ドリームス~」の内容をちょっとだけ話すので、まだ知りたくない人は注意してね。


 前から、なんとなく1人でディズニーリゾートに行ってみたいという気持ちがあった。

 もちろんグループで行くのも楽しいんだけど、作りこまれた世界観をひたひたに味わったり、同じアトラクションだけを乗り回したりという楽しみ方もきっとあるかと思いましてね。

 というわけで、一昨年はランドだったので、今回は1人ディズニーシーを味わうことにしました。

 メイン目標は、夜のアラビアンコーストの写真を撮りまくること! アラジンの風景がすごく好きだから~!

 それと、テディ・ルーズヴェルト・ラウンジというパーク内のバーにも行ってみます。

 春休みとGWの間という閑散期を狙って訪れたのだけど、もともと休止期間に入っているアトラクションがあるのと、いくつかのアトラクションが強風で運転見合わせになってしまったのとで、ショップやアトラクションは思いのほか混雑。

「1人ディズニー、待ち時間どうするの?」問題は、延々とディズニーソングを聞き流すことで解消! この世界に、より溶け込めた気がして割と楽しかった。

 ほら、なんか宇宙と一体化するのを目指すのを美とする思想体系と同じよ。

 各エリアを注意深く観察しつつ、いくつかアトラクションに乗ると、アッという間にお昼を過ぎた。

 カレーをおいしくいただいた後は、レイジング・スピリッツにスタンバイ。

 そういえば、レイジング・スピリッツにはシングルライダーという、1人だとかなり短めの待ち時間で乗れる制度があるのだが、これは相席前提。

 例えば、奇数グループで来た人の1人になってしまった人と乗ることになる。

 知らない人の隣で叫びたくないので、今回はあえてシングルライダーを使わず通常の列に並んだ。

 70分ほど待って順番が回ってきたのだが、乗車時に人数を1人と伝えると、「シングルライダーのお客様と一緒に乗っていただきます!」とのこと。

 いやーー、それならわっしもシングルライダーでよかったじゃんか!!

 なんとも言えない気分でトロッコに揺られたわけだが……。

 まあ、よく考えればそうでないと回転率は悪くなってしまうわけで、通常列なら1人(隣空席)で乗れるはずという自分の勝手な思い込みが良くない!

 気を取り直してテディ・ルーズヴェルト・ラウンジに向かう。予約はできていたのだが、案内されたのはテーブル席のほう。

 うーん、できればカクテルを作っているところが見たかったし、1人ならカウンターの方に案内してもらえるかなーと、またもや勝手に期待してしまった!!

 もちろんお酒はおいしかった。だけど、急に1人でテーマパークに来ていることが恥ずかしく感じられた。

 今まで全くそんなことなかった。むしろ、1人旅を嬉々として楽しみ、周りの目が気にならない体質だったのに。 

 普段ならウキウキで参加していたであろうジャンボリミッキー!も、遠くで眺めることしかできなかった。

 タートル・トークでは、クラッシュへの質問が思いつかず、手を挙げることができなかった。

 日も落ち、アラビアンコーストの散策を終えると、もう19:30を過ぎている。

 一応、メインとサブの目標は達成したわけだし、アトラクションにも乗れたのだけど、なんだか自分の勝手な思い込みのせいで途中盛り下がってしまったのが残念。

 ……自分はちょっと傲慢な「おひとり様」になってしまったんじゃないか?

 他人に気を遣わず遊べるから楽しい!という気持ちが、いつの間にか、1人で何でも楽しめている自分すごい!になってしまったんじゃないか?

 だから、ちょっと思い通りにいかないことがあっただけで、楽しさが半減してしまった。

 腹黒い人間は、こんな素敵な場所には似合わない。

 虹色にきらめくキング・トリトン・キャッスルをよそ目に、私は出口を目指した。

 メディテレーニアンハーバーまで戻ってくると、パーク内の海を囲うようにして、ずらりと人だかりができている。

 そっか、そろそろ夜のショー「ビリーヴ!~シー・オブ・ドリームス~」の時間だ。

 存在は知っていたけど、良い位置で見るためには数時間前からの場所取りが必須だし、有料席も設けられているくらい人気なショーだから、帰りに見かけられればいいか、くらいの気持ちだった。

 だけど、アクアダクトブリッジ(ソアリン入口)周辺の岩場に、1人なら入り込めそう、それでいて既に場所を確保している人の迷惑にならなそうな、非常に小さなスペースが空いていた。

 せっかくなのでその小さなスペースに入り込んでみると、ちょうど私の身長が僅かに岩を超えていて、何にも遮られることなく海上を眺めることができた。

 本当に人がびっしり、子供を肩車している人もたくさんいる中で、その岩場前のスペースだけは偶然空いていて(岩が高くて子供や団体では海上を見渡しにくい場所だから、だろうけど)、こんな私にも「ぜひショーを見てから帰ってよ!」とミッキーが用意してくれたような気分がした。

 そういえば、小さい頃はミッキーとミニーが大好きだったな。

 もはや物心つく前の記憶だが、保育園の先生がディズニーの話をしてくれたり、ディズニーキャラクターたちがクリスマスソングを歌うビデオを、ずっと見ていたりしたのを思い出した。

 それからも、高校の文化祭ではラプンツェルの演劇をやったり、カーズやズートピアにのめりこんだりした時期が、確かにあった。

 ショーはすぐに始まった。

 正直、話の展開が結構スピーディーで追えない部分もあったが、そんなことは全く問題ではなかった。

「夢を叶える」がテーマで、前半はアラジン・ラプンツェル・アリエルがメインで登場。

 彼らの夢を思い描くシーンが、海上の塔とミラコスタに投影されるとともに、アレンジされた劇中歌がプレイバックされる。

 次に、リトルマーメイドのヴィラン、アースラの登場。

 原作を見たときはそこまで感情移入しなかったが、今回はアースラに対してものすごい憤りを覚えた。

 彼女は、アリエルの「人間の世界へ行きたい」という願いを利用して、アリエルの声を手に入れるのだが、一時的にアリエルの願いを叶える部分が本当に極悪!!

 現実にもいるよな!他人の純粋な願いや気持ちを利用して金儲けをする奴ら!!高額な情報商材を売りつけたり、劣悪な留学セミナーを開催したりする奴ら!!

 その後、ピーターパンの語りなどがなんやかんやあって、前半のクライマックスへ。

 アリエルの「パート・オブ・ユア・ワールド」、アラジンの「ホール・ニュー・ワールド」、ラプンツェルの「輝く未来」が、1フレーズごとに切り替わるマッシュアップだ。

 ぐっと引き込まれた。だって、1曲ずつだってとても感動的なのに。

 すると突然セバスチャンが現れて、「一緒に歌って?」と言うのだ。え、俺たちが歌うのか?と思ったがそうではなく。

 アリエル、アラジン、ラプンツェルがサビを一度に歌い始めた!トゥッティ!!!

 3曲が同時に歌われていても不自然さは全くなく、むしろ彼らの根底にはディズニー・スピリッツが共通しているからこそ、壮大に調和していた。

 アリエルもアラジンもラプンツェルも、わっしより年下で苦しい環境にいたのに、ちゃーんと自分の夢を叶えてるもんなぁ。

 アラジンはオクターブ上で歌っていたし、前半は大感動で締めくくられる。

 後半ももちろんよかったのだが、やっぱり自分のよく知っている3キャラで歌唱するシーンが特に印象的だった。

 1人で来たからこそ、見ることができたショー。

 さっきまで自分の行動を恥じかけていたのに、今回のディズニーはまあまあ楽しかったなで止まっていたのに、

 そんな適当な気持ちでは絶対に終わらせない、ディズニー・スピリッツの底力を感じた。

 周りの目を気にしてしまった今回の旅も、色々あって休学することになった今の自分の現状も、アラジンやラプンツェルが乗り越えてきた試練に比べれば大したことなかった。

 素晴らしいコンテンツを生み出せる人間になろう、と今一度決心できた最高の旅になった。

 帰路の電車内で見直してみると、アラビアンコーストの写真はほとんどピンボケしていた。

 それで十分だ。

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