【感想】ドラマ「最愛」感想。「最愛」のカタチは。
※個人の感想です。
※最終回のネタバレを含みます
「最愛」見てる?
それは突如として届いたラインだった。
「最愛」見てる?
父上からである。父上と僕は、趣味が割と近く(というか父上に教育されてエンタメが好きになったので)、最近見た映画とかドラマとか漫画の話をよく良くするのだ。そして、父上におすすめされたものは大体見ることにしている。
で、である。
僕は答えるわけだ。「見てない」と。
このときすでに放送は8回まで行われていた。とても話題になっているのは知ってたし、プロデュースしてるのが僕の大好きなアンナチュラルの新井さんであることも知っていた。正直、見ないと言う選択肢はなかったのだ。
それでも見てなかったのは、理由があった。
吉高由里子の演技が、苦手なのだ。
まず勘違いしないでほしいのが、吉高由里子自体は好きだと言うことである。可愛いし、性格はいいし、友達になりたいとさえ思う。
だが、演技には過去に2度ほど裏切られてしまってるのだ。勝手に。
忘れもしない。
最初は、「ガリレオ2」だ。
当時、ガリレオ1を見逃してあとから見ていた僕としては、リアルタイムで続編を追える最高のタイミングだった。そして、あの1話を見たのである。
…2話は、見なかった。
吉高由里子の演技が、耐えられなかったのだ。
おそらくあれは、キャラ上仕方なかったのだと思う。それでも僕には見ていられなかった。そして、泣く泣く見るのを辞めたのである。以来、吉高の出るドラマは、見ないと誓ったのだ。
次は、「危険なビーナス」だ。
backnumberの曲がかっこよすぎて、原作も東野圭吾だし、見てみようと思ったのだ。そして、これを機に吉高をもう一度見ようと。
何を隠そう僕は特撮が大好きだ。戦隊モノや仮面ライダーを毎年ずっと見ている。
そのとき、大体は新人さんが主演を務めることが多い。だから、棒読みだったりする演技には慣れている。
そう。だからこそ、もう吉高が出てきても大丈夫だと思った。彼女の演技は下手ではない。ただ僕の感性が見れないと言っていただけ。しかも大昔のものだ。いつまでそれを引きずるのか。今こそ、その殻を破るのだ!僕は、1話をみたのだ。
…2話は、見なかった。
「お兄様」と彼女が発した瞬間。僕はダメだと悟った。きちんと言語化できずに申し訳ないが、なぜかダメだと思ってしまったのだ。
だから、「最愛」は見るつもりはなかった。話題になっても見なかった。僕は吉高由里子の演技とは、反りが合わない人間であると過去が証明していたから。
二度あることは三度あるという。その三度を見たら、僕は吉高由里子を嫌いになるかもしれない。そんなのは嫌だった。
…ここまで読んでくださった吉高ファンの皆様、あるいは吉高由里子さん。ありがとうございました。不快な表現等あったと思います。
でも、です。
僕は意を決してこの「最愛」を見て、土下座することになるのです。
吉高由里子が、素晴らしかったから。
土下座した
結局、見ることにした。
僕の信条の一つに”見ずして語るな”というモノがあるからだ。
食わず嫌いで、面白いと思えるかもしれない可能性を捨てるわけにはいかない。
だから見たのだ。
そして。
僕は世界に土下座をして、後悔した。
なぜ見ていなかったのか、と。
もちろん、初手の吉高のセーラー服は大丈夫かとは思った。
が。
全然そんなこと大丈夫だった。
むしろ、嵌り役だった。
血に濡れた手で髪をかき分けて、歩く。
完璧なワンシーンだった。これが、これまでの”二度”を吹き飛ばした。
何も考えず、2話3話と見て最新まで追いついたのだ。
走る事件に徐々に明らかになる真相。
少しずつ顔を出すそれぞれの最愛のカタチ。
絶妙に変化していく関係性。
熱演する演者たちの覇気。
どれをとっても素晴らしかった。特に吉高の覚悟を決めて夢を追うために仕事をする姿と、大ちゃんの前での姿のギャップ。優への愛情など、感情の表現がとても良かった。
見て良かったと痛感している。
ちなみに本記事は、最終回を待って書いている。
酒とポテチを用意し、金スマからテレビをつけて書いている。
もっと最初から追えば良かったと後悔しながら、でもリアタイで最終回を見れることを喜んで書いている。
濃厚なサスペンス&ストーリー
さて、本編の話をします。
その前に概要を一応。
タイトル:「最愛」
ストーリー:
「真田ウェルネス」の社長・真田梨央(吉高由里子)は、“世界を変える100人の30代”に選ばれる気鋭の実業家。その彼女が、かつて心を通わせた宮崎大輝(松下洸平)と15年ぶりに再会した時、大輝は刑事、梨央は殺人事件の重要参考人だった――。
15年前の2006年、岐阜県。梨央は東京の大学の薬学部に進学を希望する高校3年生。白山大学陸上部男子寮の寮夫として忙しく働く父・朝宮達雄(光石研)に代わり、弟・優(柊木陽太)の面倒をよく見る、寮の看板娘だった。その梨央が恋心を抱いていたのが、陸上部のエースである大輝。彼が出場する駅伝の地区選考会に駆けつけ、精一杯声援を送る梨央。大輝もまた梨央に思いを寄せており、彼女の推薦入試が終わったら告白しようと決めていた。そんなある日の夜、達雄が留守にしていた寮で“事件”が起こる…。梨央を心配した母・真田梓(薬師丸ひろ子)は、弁護士の加瀬賢一郎(井浦新)を梨央の元へと向かわせる。(第一話のあらすじ)※HPより転載
過去。眩しい日々から壊される日常。当時の人生の最愛同士だった二人。
そして現代。事件が始まり、二人はまた出会う。刑事と容疑者として。
最愛の物語の始まりは、運命的だ。
昔好きだった人に、ただ再会するわけではないのだ。
圧倒的な一線の引かれた状態から始まる。何しろ、疑う人と疑われる人だ。最初は互いに他人の振りをしている。
視聴者は、この二人の動向を恋愛的な要素だけではなくミステリ的にも見なくてはならない。それが二人の関係をより魅力的にしているのだろう。
そして。
過去に、誰が、何をしたのか。
だから。
現代で、誰が、それをするのか。
それらが如実に絡み合う。
キャラを関係性で見せるサスペンスの最強の演出だ。そして、演者の一人ひとりの表情がそれらに応える。
最初僕は、最愛と聞くだけあって、ただの恋愛モノだと思っていた。だが、予想以上にサスペンスとして、あるいはミステリーとして、先述の通り魅力的だったと感じた。
そして何より、メインたる大ちゃんと梨央の”最愛”。
15年前の、初々しい煌めくようなそのとき全ての感情を乗せた最愛。
現在の、たくさんの枷を背負った上で絞り出している最愛。
これを演じて魅せる吉高と松下がすごい。
いや、吉高さんと松下さんがすごい。
なんで吉高さんの演技が苦手だったのかわからないレベルだ。
メインの二人の、距離感と表情の切ない雰囲気がもう”最愛”なのだ。
↓以下、本格的にネタバレを含みます。
他の演者の凄さ
優役の高橋くん
それでいて僕がさらに推したいのは、優の高橋くんだ。
彼は仮面ライダーゼロワンで主人公・飛電或人を演じており。リアルタイムで見ていた僕としては、この枠のドラマにレギュラーで出てくれて嬉しい限りだった。
彼の演技がすごい。
ゼロワン時代もかなり凄かったのだが、哀愁というか、陰の表情の切なさが半端なくすごくなっている。
明るい未来を壊す敵に叫んでたあの演技から、自身の罪と向き合うために絞り出す表情の演技へ。
梨央の家に居候を始めてからの、改めて明るい未来を目指す姿。調理師免許を持ってるだけあって、料理の描写が一際かっこいい。
記憶に障害があるために、いつも翳りがあるような雰囲気の出し方。
もはや親感覚で、拍手をしてしまうレベルだ。
今後の活躍にも熱い期待が生まれる。
刑事たち
桑子と大ちゃんのコンビっぷりが、とても良かったと感じている。少し猪突猛進気味な桑子とちょっと引目で見ながら、それでいてここ一番は感情で動いてしまう大ちゃん。ベストコンビだ。この二人オンリーの事件者も見たいぐらいである。
それでいて、癖の強すぎる山尾係長。二人を見守り、というか監視しながら美味しいとこを持っていくキャラの立ちよう。
警察も魅力的なキャラの宝庫だった。
家族
母の梓は、私は母親に向いていないと言いながら、それでも背伸びで母親を頑張り、社長としても筋を通す愛を見せる。
兄貴は、何も考えてないが会社と家には存外愛は深く、一番何も知らなくて、一番状況に右往左往していたのかもしれない。
加瀬は…。別途後述する。
父の達雄は、子供を守るために必死になって支え続けた素敵な父親だ。宝石のように子供たちを磨き育ててきた愛の深さが窺える。
最愛の名に恥じず、家族各々の愛の形とそれゆえの行動が物語を回していく。歪な形の愛ではなく不器用な愛がそこにあるだけだったと感じた。
他の最愛
後藤さんの会社への最愛。ゆえの不正と抱えすぎる秘密。黙認する社長のあずさとの関係性。本当はとても弱いのだと思う。でも、気丈に首の皮一枚で仕事をしてきた。最後には自分も筋を通したいと申し出る。これも最愛のカタチだ。
橘のある種の自己への最愛。傷つけられた自分の価値を問うために、自分を最愛するための仕事へ打ち込んで、自分にも何かできると証明したいと懸命になる。とても共感した。報われない最後でとても悲しかった。僕は、ここだけは加瀬を許せない。
渡辺の父親の子への愛。許されることではないし、物語が狂ったのはこいつのせいでもある。それでも真摯な姿には思うところがあった。もちろん、ちょっとイタズラしようとしただけじゃないかとか言ったときは、巫山戯んなよと思ったが。
総じて、弱いけど最愛のためにどうにか気を張って、虚勢で生きている人たちばかりだったように思う。人類皆そうなのかも知れないが。
事件の真相
迎えた最終回で明かされた真相は、全てに加瀬が関与していたという事実であった。
もちろん、彼のあの家族への愛の深さは何か異様な気配を感じていた。達雄の葬式のあの頼りない感じからどんどんと頼り甲斐のある、最強の番犬へと変わっていく。そして、梨央と優にとって本当にかけがえのない家族の一部になる。
井浦新の見せる演技には、罪を重ねる度に後戻りできなくなっていったその強迫観念のようなものを感じた。
二人が幸せになる日まで、たとえ一線を何度越えようとも、最愛に生き、人生を尽くす。
それこそ、薬が承認される日であり、梨央がこんな幸せな日はないと言った、大ちゃんが真相に気付いたあの日だったのだ。
あの日を境に彼は消える。最愛に生きた時間に別れを告げて、二人の幸せを大ちゃんに預けて、去るのだ。
僕が思うに、あの日渡辺を埋めたときに最愛のカタチを見たのだと思う。襲われる姉を助ける弟と全てを助けようとする父親。梓からも子への愛は聞いているだろう。最愛を体現した想い合う家族の姿。
加瀬の過去はわからないが、それは彼の中で守るに値するものだった。
だからその、達雄の最愛ゆえの行動の共犯になった。
そしてのちに、達雄は死に、姉弟は離れ離れになる。共犯者として片棒を担いで繋ぎ止めたはずの最愛の危機。彼はそれを守ろうと誓ったのだと思う。そして、16年間精魂を費やしてきた。そして紡がれた、新しい最愛で繋がる家族の一員に、名実共になったのだ。
アンナチュラルの井浦新は、一線を超えなかった。最愛ゆえに。
最愛の井浦新は、一線を超えた。最愛ゆえに。
最愛のカタチとは
このドラマを見て最後に考えたのは、最愛のカタチとはなんだろうということだ。
「愛 意味」で検索すると、「そのものの価値を認め、強く引きつけられる気持。」と出る。
それの最たるものだというのだから、最も価値を感じて強く引き付けられるがゆえの行動の発露だろう。
このドラマのキーとなる加瀬の最愛は、そうしてもたらされ、罪と引き換えに具現化される。
ただ二人が幸せならばと。
許す許さない許されないではなく、正しい正しくない間違ってるではなく。
これは最愛のカタチを見せつける物語だった。
きっと、それぞれがそれぞれの発露の仕方があるだろう。もちろん、ドラマの登場人物のように。
素敵な物語の中で、いつか僕が誰かにする最愛のカタチはなんだろうな、あるいは、既に気付いてないカタチがあるのかもな、と感じた。
いつかそれを知れたらいいし、何かこうしてアウトプットできたらいいなと思う次第である。
終わりに
楽しくドラマを見させていただきました。吉高さんの演技素晴らしかったです。食わず嫌いしなくて良かった。
是非皆さんも見ていただければと思います。
それでは。
そらさき