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嫌な話をしよう。薬の話。
さあ、嫌な話をしよう。きっと人から目を背けられる話。それは薬の話。
僕は精神疾患、双極性障害の診断をもらって早10数年。途中でADHD、自閉症スペクトラムの診断もいただいた。どうやら双極性障害はあとで判った発達障害たちの二次障害だと思われている。興味がある人は「大人のADHD」で検索するといい。
そんなわけで僕はこれらの発達障害と精神疾患のために服薬している。今飲んでいる薬の数を数えてみた。胸が締め付けられる中、一個一個と数えてみた。いつも飲んではいるけど、数をちゃんと数えたことはなかった。知りたくなかったからだ。
朝起きて飲む薬は7錠、夜寝る前に飲む薬は12錠。一日に19錠、僕は薬を飲んでいることになる。でもご安心を。10年の間でこれでもだいぶ減ったほう。少しずつ改善をしているなかにある。でも19錠。
たまに友だちに聞かれる。「基似はどのくらい薬を飲んでいるの?」──、「ん?たくさんだよ。ご飯を食べてから『もう一食』って感じかな」と冗談っぽく言うと、みんな笑ってくれる。
そうやって聞いてくれる人はまだ有難い。でも、食事中に薬を飲み始めると目を背けられるのは、それは辛いものがある。
「薬」って「嫌なもの」と認識されているのかもしれない。でも、僕はこれを飲んでいかないと生きていけない。これがなくては生きていけないものから目を背けられる時、僕の心は張り裂けそうになる。
「じゃあ、どうしたらいいの?」って思われると思う。だからあえて答えるけど、素朴に尋ねてほしい。「薬いっぱいだね、体調どう?」って。
もちろん、目を背けたくなる気持ちも分かるし、咄嗟にそうする気持ちや「どうしたらいいか分からない」気持ちも分かる。でも、目を背けないでほしい。
こういうことを書いたのには理由がある。誰か特定の人を思い浮かべているのではない。ただ僕の中では、誰かまではもちろん記憶していないが、目を背けられた瞬間、あの空気感を思い出すだけで、苦しくなるのだ。決してこの文章で誰かを裁いたり、断罪したいわけではない。
ただこうして書くことで僕の気持ちは少し整理ができるし、この文章を読んで「ああ、薬を飲んでいる人ってこんな気持ちなんだな」って分かってもらえるだけで僕は何だか救われる。だから書いてみた。
お願いである。「薬を飲む」ことを「ないもの」にしないでほしい。自分でも薬を飲むことがネガティブなイメージを抱かせることはよく分かっている。でも、これを「ないもの」にする空気感は僕の心を壊していく。だって、薬がないとやっていけない、これがないと生きていけない僕なのだから。