食の風景「天麩羅に秋を綴じる」
朝晩はすっかり冷え込むようになり、家から望むお山がみるみる赤味を帯びました。秋ですね。
以前おはぎに使った九重栗南瓜に再会しましたので、天麩羅にしようと思います。今日の相棒には、こちらも奇麗な蓮根です。熊本産です。
早速衣纏わせて揚げて参ります。小麦粉と水で作るシンプルな衣ですが、この割合と混ぜ方で、衣の仕上がりが変わって来ます。
また、油の温度にも気を付けたいです。しっかり熱された所へ種を入れれば天麩羅の表面がさくっと仕上がります。
以前天麩羅をお届けした時も語りましたけれど、揚げ物も中々に奥深い料理だと思います。美味く揚がれば嬉しいです。
さあ、先ずは蓮根が揚がって参りました。第一便を御覧下さい。
なんて優しい色でしょうか。
あとはひたすら順番に揚げていきます。火傷と火事には十分お気を付けください。油に火が付くという万が一の危険に備えて、揚げ物鍋を覆う事の出来る蓋をコンロの傍へ用意しておくのが安心です。
蓮根は全部でこれだけ揚がりました。そのまま食べられる様に塩を振っています。
お行儀よく盛り付けますとこのような仕上がりになりました。南瓜のお皿を撮影していませんでしたが、冒頭の南瓜をほぼ全部天麩羅にしましたから、二十個くらいは揚がったでしょうか。
今日の汁物は板昆布と柚子のすまし汁です。白菜、大根、人参、蓮根、平茸、刻み柚子が入っています。天麩羅のアレンジに果実酢(シークワーサー&八朔味)と七味を食卓へ並べました。それでは、
「いただきます」
揚げたての天麩羅の、サクサクとした食感、旬野菜の旨味が詰まった一品に思わず唸りました。シンプルに塩で頂いた後、蓮根に果実酢をかけて食べてみます。途端に爽やかな香りが広がって、揚げ物だという事を忘れそうな程軽やかなお味になります。まるでサラダ感覚です。箸がすすんで何枚でも食べられそうでした。
秋の夜のはじまりは早く、わが家の居間ではそろそろ石油ストーブが活躍しています。じわり暖まって来た室内で、美味しい番茶と美味しいごはんを囲む。もしもこの先、場所や集まる人が変わっても、そんな穏やかな夜がいつまでも続けられますように――なんて思いながら美味しい秋を噛み締めます。
「ごちそうさまでした」
文と料理と写真・いち
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