気は優しくて力持ち、そんな文部科学省をつくっていってください
これは、文部科学省の前川喜平元事務次官が辞職時に全職員にあてて送ったメールの一文だ。わたしは、前川さんのことを個人的に知っているわけではないし、世の中に出回っている記事や、証言の真偽を知ることのできる立場にもいないので、本当のことは分からない。また、そのことについて何か言おうとも思わない。
ただ、教育の一端にかかわる仕事をする人間として、このメールに綴られた前川さんの「教育」への祈りのような誠実さを感じ取ることはできるし、それは、わたしが抱いている、こうあってほしいと願う「教育」の在り方に似ている。「教育」は、「どのようなこどもに育ってほしいか」という、願いだ。こちらが何を思おうと、子どもたちは自分自身で学んでいくしかないのだから。ただ、子どもたちが憂いなく学べるように環境を整えたり、励ましたり、支えたりしながら、願うのだ、切実に。
母国の教育を司る人たちが、そうであってほしいと、心から思う。
「文部科学省の皆さんへ」
本日、私は大臣から辞職を承認する辞令を頂戴しました。
文部科学省の皆さんが元気いっぱい仕事に打ち込めるようリードすべき立場の私が、このような形で退職することは、誠に残念であり申し訳なく思っています。…(中略)…しかし皆さん、動揺したり意気消沈したりしている暇はありません。一日たりともおろそかにできない大事な仕事があるからです。…(中略)…私が考える文部科学省職員の仕事は、子どもたち、教師、研究者、技術者、芸術家、アスリートなど、それぞれの現場でがんばっている人たちを助け、励まし、支えていくことです。特に、弱い立場、つらい境遇にある人たちに手を差し伸べることは、行政官の第一の使命だと思います。あとは皆さんで力を合わせてがんばってください。…(中略)…気は優しくて力持ち、そんな文部科学省をつくっていってください。いろいろ書いているうちに長くなってしまいました。最後まで読んでくれてありがとう。それでは皆さんさようなら。 2017年1月20日 前川喜平
*Artwork: Gyula Varnai ”Rainbow”, 2013-2017, Approximately 8000 pieces of metal pins, Courtesy of the artist and acb gallery