Agui

考える人。人生の指針は、好きな仕事、暑い国、ネコ、ここちよいソファ、本、コーヒーと、アート。

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ことばのうみ

日々の生活のなかで、たくさんの「ことば」に出会う。 日本語の「ことば」も、英語の「ことば」も、しらない言語の「ことば」も。 それぞれの「ことば」には、色がついていたりいなかったり、太かったり細かったり、手書きだったりそうじゃなかったり。 好きな人の「ことば」だったり、そうじゃない人の「ことば」だったり、しらない人の「ことば」だったり、自分の「ことば」だったり、する。 毎日、毎日、そんな「ことば」のうみのなかで、流されたり、泳いだり、まどろんだりしながら、「ことば」は、

    • 続けてもいいから嘘は歌わないで

      「続けてもいいから嘘は歌わないで」 思い出野郎Aチームの「週末はソウルバンド」の歌詞にこんな一節がある。売れないソウルバンドに週末を浪費する彼氏に向けて彼女が言うのだ。 続けてもいいから嘘は歌わないで、と。 デートはタワレコかユニオンで、家賃は溜めるが、CDとビールは買う。そんな彼氏。 自分の大学時代を思い出す。デートはタワレコかレコード屋、古着屋とライブだった。家賃は溜めなかったが、音楽とビール、煙草、古着に散財した。昼から飲むビールのrudeなかっこよさと、ダンス

      • わたしは、この世の中心を自ら選ぶことができる

        (抜粋) どんなささやかなことだって、終生あなたを支えてくれるしなやかな杖となりうる。ひとりで生きることと孤立とは違う。金魚鉢でも画布でも、あなたはこの世の中心を自ら選ぶことができる。その中心から、あなた自身のいのちを、ふくよかに伸ばしていくことができる。 いしいしんじ 2021年5月16日 読売新聞 人生案内 わたしには、だいすきなものがたくさんある。 そのことを考えるだけで、ワクワクしたり、嬉しくなったり、興奮したり、ドキドキしたり、悲しくなったり、心が動いたりする

        • いろいろなことに覚悟をして生きていくこと

          たまたまニュース記事を流し読みしていたら、元バレーボール選手で、セクシャルマイノリティであることをカミングアウトした滝沢ななえさんという方のインタビュー記事が目に止まった。記事そのものは、ハフィントンポストなどのLGBTQ関連の記事にありそうな、日々のニュースサーフィンでひとまず読んでおくか、と思って読んで、そのあと日常に上書きされていく数多の記事の一つだったと思う(個人的には、こういうニュースがありふれた記事になっていくのは、悪いことではないと思う)。インタビュアーの質問も

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        ことばのうみ

          俺、家行ってでも止めるわ

          こどもの頃から、自分が出っ歯なことには気づいていた。歯並びの悪さは父から、出っ歯は母から受け継いだらしい。 姉妹の中でも、歯並びが一番悪かった姉2が小学生の頃から歯の矯正を始めて、成人した姉1もその後を追った。姉二人が矯正したからか、自分の出っ歯を色濃く受け継いだままの末の娘を不憫に思ったのか、大学生になって恋人もでき色気づいたわたしに、母は「矯正したかったらしてもいいよ」と言った。 それまであんまり深く考えたことがなかったのに、そんなことを言われると、しといた方がいいん

          俺、家行ってでも止めるわ

          I love you の訳し方

          夏目漱石が「I love you」を「月が綺麗ですね」と訳したのは有名な話だ。二葉亭四迷は「死んでもいいわ」と訳したらしい。 あなたなら何と訳すか、と問う記事を見つけた。 わたしなら何と訳すか、と自分に問うた。 わたしの「I love you」は、 「いいうんこ出てよかったねえ」 ではないかと思う。 家族であれ、こどもであれ、友人であれ、パートナーであれ、猫であれ。 誰かが気持ちの良い排泄ができたことを、心からよかったねえと思えたら、きっと、それは、愛。 Ar

          I love you の訳し方

          気は優しくて力持ち、そんな文部科学省をつくっていってください

          これは、文部科学省の前川喜平元事務次官が辞職時に全職員にあてて送ったメールの一文だ。わたしは、前川さんのことを個人的に知っているわけではないし、世の中に出回っている記事や、証言の真偽を知ることのできる立場にもいないので、本当のことは分からない。また、そのことについて何か言おうとも思わない。 ただ、教育の一端にかかわる仕事をする人間として、このメールに綴られた前川さんの「教育」への祈りのような誠実さを感じ取ることはできるし、それは、わたしが抱いている、こうあってほしいと願う「

          気は優しくて力持ち、そんな文部科学省をつくっていってください

          マヨネーズのように哀しい

          これは別役実さんの童話集「風の研究」にはいった童話のタイトルだ。個人的には、これ以上に哀しさを表現している言葉を知らない。 許嫁を街に残し、ミミズの文章修飾法について人里離れた小屋で研究に没頭するアネノイド・ハネノイド博士。特殊な器械を発明してミミズとの対話が可能である博士は、許嫁から届いた電報をきっかけに、ミミズが高度な文章修飾法を身につけていることにも気づかずに、ミミズとの会話に没頭していく。 この会話のなかで、自身のかなしさについて問われたミミズが「マヨネーズノヨウ

          マヨネーズのように哀しい

          人は同じにしようとしてくんだよ

          感覚を通すと絶対同じものはない。でも、現代社会に生きていると、世界は同じになってくる。それがグローバリゼーションの根本でしょ。人は同じにしようとしてくんだよ。 NHK.「養老センセイとまる」.『ネコメンタリー 猫も、杓子も。』. 養老孟司 個人的に常々かっこいい人だと思っている養老先生のことば。途上国でNGO駐在なんて仕事をしているわたしにとっては頬をは張られているとしか思えない。グローバリゼーションという巨大な旗の下でわたしがしていることは、結局は「同じにしようとしてる

          人は同じにしようとしてくんだよ

          BLA BLA BLA...

          この英語でいうところの「Bla Bla Bla...」は、日本語でいうところの「なんとかかんとか...」である。細かく説明するのが面倒くさいとき、繰り返しになるときなどに、「ね、詳しく言わなくてもわかるでしょ」というニュアンスで使われる。 このことばをみつけたのは、2017年にドイツのミュンスターでおこなわれた彫刻プロジェクトのとある作品を訪問したときだ。 「アートと公共空間の関係を問うこと」をテーマとして10年置きに街ぐるみでおこなわれるこの彫刻プロジェクトでは、10年

          BLA BLA BLA...

          婿は日本人がよか

          農夫だった祖父の骨は、がっしりと大きく、生前の祖父の骨太の手を思い出させた。骨は、なんとも言えないきれいな色をしていた。乾いていて、温かみのある、白味の強い、空気を孕んだようなオフホワイト。その骨を見た時、ああ、きれいな色だなあ、と思って、ああ、おじいちゃんはもういないんだなあ、と思った。 その日、火葬場で、祖母から祖父との結婚当時の話を聞いた。祖母の兄の友人だった祖父とお見合いをし、農家に嫁いで、舅・姑と小姑に囲まれて暮らしていたこと。生まれてから少しして亡くなってしまっ

          婿は日本人がよか

          鼻毛じゃないんだよ、神なんだよ

          私の敬愛する先生のおはなし。 かいつまんで言うと、とある宗教の法王に謁見した友人からその法王の鼻毛をもらった先生が、それを知り合いの研究者に見せたら、ペッと手のひらに出して、パクッと一口に食べられてしまった、という話だった。 途中までフンフンと聞いていて、”食べられた”のくだりでつい、「鼻毛をですか?」と聞き返したら、「鼻毛じゃないんだよ、神なんだよ」と言われて、大いにたじろいだ。 ・・・ハナゲジャナインダヨ、カミナンダヨ。 それ以上でも、それ以下でもないけれど、信心

          鼻毛じゃないんだよ、神なんだよ

          自由に窒息する

          このことばに出会ったのは、高校生のときだったと思う。橋口譲二さんという写真家の『疾走』という写真集にでてきたことばだ。 中学生のときに、九州の地方都市から、高層ビルの立ち並ぶ東京の埋め立て地に引っ越した。昼と夜で人の流入と流出が逆転するドーナツの穴の中心のような街で、東京のひとのふりをすることにも慣れた頃、近所にあったオフィスビルに入っていたシュッとした本屋の奥の美術本の並ぶ一角で、わたしは初めて、写真集を買った。 最初に手にした写真集は、この『疾走』と、藤原新也さんの『

          自由に窒息する

          nonsenseは世界の肌触り

          これは、谷川俊太郎さんのインタビューのなかで、哲学者の鶴見俊輔さんが言ったとして紹介されたことばだ。 無意味なことも、意味あることと同じように大事だって思えると、僕はいいと思う。(哲学者の)鶴見俊輔さんが、nonsenseは世界の肌触りだって言うんです。人間は世界の意味を一所懸命つけようとしてるけど、意味だけでは追求しきれないものが世界であって、それを肌触りって言ってるんだと思うんだけど。 谷川俊太郎(インタビュー記事より抜粋) Mammoth, Inc. マンモス株式会

          nonsenseは世界の肌触り

          ソレデハ マコトニ ツマナラナイ

          この「ソレデハ マコトニ ツマラナイ」は、「ないた赤おに」という絵本のなかに出てくる手紙の一節だ。 おはなしの主人公は、村の人間たちと仲良くなりたい赤おにと、その友達の青おにである。赤おにが人間たちと仲良くなれるように、悪いおにを演じて手助けした青おには、そのあとの赤おにと人間たちとの仲を慮り、赤おにへの置き手紙を残して、ひとり、旅にでる。 アカオニクン  ニンゲンタチトハ ドコマデモ ナカヨク マジメニ ツキアッテ タノシク クラシテイッテクダサイ。 ボクハ シバラク

          ソレデハ マコトニ ツマナラナイ