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ユリシーズ

ジェイムス・ジョイス 1922

舞台はダブリンの街の通り、家、店、新聞社、パブ、病院、売春宿、学校などであり、時は1904/06/16の1日の出来事を扱っている。この日はジョイスが生涯を共にすることになるノラ・バーナクルと初めてデートした日を記念して設定されたが、研究者の間では「ブルームズデイ」として知られる。

主要登場人物
「スティーブン」22歳作家志望の青年。
「マリガン」25歳の医学生、スティーブンの友人。
「ブルーム」38歳。「フリーマン」紙の広告取り。
「モリー」33歳。ブルームの妻。
「ボイラン」モリーの愛人。

小説は大きく3部に分けられ「テレマキア」(1〜3挿話)「ユリシーズの放浪」(4〜15挿話)「ノストス」(16〜18挿話)の全18挿話から成り、「オデュッセイア」(ホメロス)の3部構成と平行関係にある。

「1」テレマコス
「2」ネストル
「3」プロテウス
「4」カリュプソ
「5」食蓮人たち
「6」ハデス
「7」アイオロス
「8」ライストリュゴネス族
「9」スキュレとカリュプディス
「10」さまよう岩々
「11」セイレン
「12」キュクロプス
「13」ナウシカア
「14」太陽神の牛
「15」キルケ
「16」エウマイオス
「17」イタケ
「18」ペネロペイア

1904/06/16
この非常に限られた時間の中に、ジョイスは様々な事柄を詰め込みました。この作品の難解たる所以です。ジョイスはアイルランドに生まれました。国を出てヨーロッパ中を転々と彷徨い、その途中で英語の教師をしています。スイスやイタリアで英語の教師をしながら、頭の中では英語とアイルランド語で思索をし、話す相手の各国の言葉を受け入れるという多言語的状況を生きていました。
1904/06/16
この1日のなかに、各章ごとに違う文体で、およそありとあらゆる文学的な手法を駆使して書き上げています。神話的な人の心の言葉と動き。ヨーロッパ全ての思想の言葉と動き。
アイルランドという特別な国。(ヨーロッパの1番隅っこにあって、隣のイギリスにずっと虐められてきて、アイルランド語という母国語も殆ど失ってしまった国。)

物語や小説で大切なことは「場」「世界」「登場人物」です。
そこに過去の再考と未来への予想を汲む時間の経過、所謂「ストーリー」が構造を支えます。

この「ユリシーズ」は「ストーリー」を大事にしていない。
1904/06/16 ジョイスはこの1日だけに全てを詰め込んだ。「場」も「世界」も「登場人物」もはっきりとしている。ですが、たった1日の事ながら、それが逆に「ストーリー」を不明なものとしている。何もかも書き尽くしているようで、小さな時間の空白をあえて作って重大な事柄を描いていない。読み手側にはわざと隠されているように感じさせている。

この小説を理解するには、時空を越えなければならない。
1904/06/16 たった1日の世界へ。


・・・・・

最終挿話
「18」ペネロペイア
・・・
モリーの意識の流れを、ピリオドが2つあるだけの8つの長い節と混乱した文法で表現する。唐突に「Yes」で始まり、「Yes」がしばしば差し挟まれ、「Yes」で終わる。
・・・

僕にもそんな1日があったのだろうか。
僕を成り立たせている特別な、
「Yes」で終わった1日が。
(and yes I said yes I will Yes.)

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