彼のオートバイ、彼女の島
『彼のオートバイ、彼女の島』
片岡義男 1977
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高原の涼しい風が、いろんな方向から吹きぬけた。
遠く浅間山のうしろに、入道雲がそびえはじめていた。空は、まっ青だ。
浅間のずっと左手に、菅平が一望できた。
ぼくは、そのとき、千曲川をはさんで反対側、別所温泉の高原にいた。
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僕(橋本功)は一人旅をしていた。信州の高原の道路脇で休憩していると、彼女(白石美代子)と出会う。彼女が僕のオートバイ(カワサキ650RS-W3)に興味を持ったことがきっかけで親しくなり、旅から帰った後手紙や電話でやり取りを始める。彼女は瀬戸内海の離島(岡山県笠岡からフェリーで四〇分くらい、とあるのみで島の名前は不明)出身で今は西宮に住んでいる。お盆が近づきミーヨは僕に実家がある瀬戸内海の島に遊びに来るよう誘った。後日島に憧れた僕はオートバイで訪れる。フェリーから防波堤を眺めると灯台の台座で誰かがこちらに向かって手を振っている。美代子が「コオ!」と叫んでいる。島で僕は美代子のことを「ミーヨ」と呼ぶようになった。三日間の間、夕方になるとミーヨはバイクに乗りたがった。大型のオートバイを運転してみたいという気持ちが芽生え始めたように見えた。ミーヨには素質がある・・・。
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「彼のオートバイ、彼女の島」
信州の各地域が舞台となっていて、季節を合わせた風景がすぐに浮かびます。(そして、瀬戸内海の海を感じることも出来ます。)もし僕がバイク乗りだったら、この本はかけがえのないものに・・・もし、の話で空想です。
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片岡義男さんの作品の大半は絶版となっています。書店で見つけるのも難しくなり、長野県立図書館では書架におさまっています。見知らぬ人が出会うのは難しい。ですが、公式サイト(片岡義男.com)において全著作の電子化計画が進められています。また、著作権者自らの意思により、一部の作品は「青空文庫」にて公開されています。
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