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美味礼賛
📙『美味礼讃』
1825
ブリア・サヴァラン
🍽️「鰻の御馳走」 より
(この時分各教区の神父たちは、月に一度お互い同士のだれかの家に順ぐりに集まって、宗教問題について会議をしあうことになっていた。最初にミサを行ない、それから会議、それから晩食ということになっていた。)
パリはショセーダンタン街にプリゲと称する男がいた。…かつてはパリじゅうの人からスペートのエースというあだ名で知られていたテヴナン嬢(当時の女優)の料理人で、当時利子食いの一婦人と結婚した。
さて、タリシューの主任司祭が当番の時のことである。たまたま檀家の者のひとりがスランの清流でつかまえた長さ三フィート(約98cm)にあまる大鰻を献上した。司祭はこのようなすばらしい魚を手に入れて大喜びはしたものの、自分の家の料理女にはこんな大物はとうてい料理しきれないのではないかと心配になった。そこでとうとうプリゲ夫人へ頼み込んだ。
👩🍳
「喜んでお役に立ちますわ」
鰻は心をこめて調理された。いかにも見事な出来上がり。何とも言われない香気…味わってみると褒め言葉に窮するというありさま。皿は綺麗になった。ところが…
・・・
司祭たちの話題は七つの大罪のひとつ「艶なるもの」に集中した。…翌日、あれは鰻の御馳走のせいでは、と皆が恥ずかしがった。鰻が美味しかったのはみんなして認めたが、ブリゲ夫人に腕をふるわせることは用心した方がよい、となった。
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