恋愛ショートストーリー『翔んで、咲いて』
2021年 2月21日 23時55分
半額になった唐揚げ弁当を温めている翔
電子レンジから弁当を取り出す
翔『あっつ!』
熱さのあまり弁当を床にこぼす
翔『ティッシュ切らしてんだよなぁ…』
唐揚げを1つ拾い、からあげに息を吹きかけ食べる
2021年 2月22日 0時17分
床に落ちた唐揚げ弁当の掃除を終えた翔
冷蔵庫から缶ビールを取り出し飲み始める。
翔、スマホを手に取り、時刻を見て悲しげな表情をする
翔『ツルツル床と格闘してたら26歳になりました堂島 翔さんです!』
隣人の騒いでる声が部屋に鳴り響く
翔『お前んちも床ツルツルになれよ…』
LINEを開くが、誰からもメッセージは来てない
翔『腹減ったな…』
冷凍庫から冷凍パスタを取り出し温める
電子レンジを見つめる翔
スマホに1件のLINE通知が来る
美咲『ハッピーバースデイ』
美咲『お互い26歳になっちゃったね笑』
翔 『誕生日おめでと』
翔 『アラサーおじさんとおばさんの誕生ですね』
美咲『アラサーって表現古っ』
翔『じゃあ、アラサーを迎えてぴえんからのぱおんᏊ˘ ꈊ ˘ Ꮚ』
美咲『あなた、ほんとにおじさんになっちゃったね』
翔、缶ビールを一気に飲み干す
スマホのギャラリーにある美咲との写真を見つめる
2015年 2月21日 23時55分
サークルの飲み会が行なわれ、その帰り道を二人で歩く翔と美咲。
翔 『あー吐きそう あのチェホンマンみたいな先輩の絡みが辛すぎたわ』
美咲『翔くん、ずっとチェホンマン先輩に飲まされてたもんね』
翔 『美咲は気持ち悪くない?』
美咲『うーーん まぁ少し酔ったくらいで全然大丈夫かな』
美咲、足元をふらつかせながら歩いてる。
美咲『そんなことよりさ、もう少しで何の日になるかわかってるよね?』
美咲、冷えた手を温めるように手に息を吹きかける。
翔『狩野英孝の誕生日でしょ?』
美咲『違うよ!違くないけど!それじゃない!クロちゃんみたいな喋り方になっちゃったじゃん』
翔 『良い返しじゃん』
美咲『そんなふざけるならもういいです…』
美咲怒った表情を見せ、翔の背中を叩く
翔 『痛っー!』
翔、叩かれた勢いで咳き込み、近くにあった電信柱に向けて嘔吐する。
美咲『うわっさいてー だから居酒屋で吐いてくれば良かったのに、もう!』
美咲、翔の背中をさすりながらバックの中を漁り始める。
美咲『水あるけど飲む?』
翔『チェホンマンの呪いだきっと、水頼むわ』
美咲、バックから水を取り出し、翔に水を渡す。
美咲スマホをポケットから取り出し時間を見る
2月22日 0時1分
美咲『ねぇ、翔くん… 大事な20歳の誕生日をゲロと共に迎えさせられたんですけど… これがチェホンマンの呪いってやつですか?』
翔、笑いながら
翔『チェホンマンの呪い本物だな あー吐いてスッキリスッキリ』
美咲ムッとした顔をする
翔、突然ポケットから小さな箱を取り出す
翔 『はい、これ水のお礼』
美咲『何これ?』
翔 『開けてみ』
美咲、箱を開ける
箱の中には星型のネックレスが入っている。
美咲『あーーー!ずっと欲しかったサマンサのネックレスじゃん!なにこれ貰っていいの?』
翔 『あげないと後々文句言われそうだったし』
美咲、微笑みながら
美咲『やっぱりダサいね翔くんは』
美咲、バックから小さな箱を取り出す
美咲『じゃあ、私からもこれあげる。私は翔くんにあげたいと思って買ったんだからね』
翔、箱を開けるとその中には、美咲にあげた物と似た星型のネックレスが入ってる。
翔、笑いながら
翔 『えっ!ほぼ同じネックレスじゃんか!』
美咲、微笑みながら頷く
翔 『やっぱり運命なのかもな、誕生日も同じで考えてることも一緒で、もしかするとこのまま付き合っちゃったりな』
美咲、翔の顔に近づき
美咲『ここまでして告白しないの?』
翔、驚いた表情をする
翔 『えっ… なんか面食らった… ちょっと一回深呼吸させて』
美咲、翔を見てニヤニヤしている。
翔、大きく息を吸い込む
翔 『美咲、自分と付き合ってください。いつもの冗談じゃなくて、本気で言ってるから、どう…かな?』
美咲、微笑みながら
美咲『大事な瞬間なんだから一人称を自分っていうの今くらいやめなよ』
美咲『やっぱり翔くんダサい』
翔 『わかったわかった!それは自分の人生の最大の悩みなんだよ… それで返事は?』
美咲、翔にネックレスを着けてあげる
美咲『宜しくお願いします』
2021年2月22日 1時5分
翔、スマホのギャラリーにある美咲との写真を見ている。
冷蔵庫から3本目の缶ビールを取り出し飲み始め、美咲のLINEを開く。
翔 『最近どう?仕事はうまく行ってる?』
数分後、美咲からLINEが返ってくる
美咲『順調かは分からないけど、楽しくやってるよ!後輩もできて色々任せてもらう立場になってきたしね』
美咲『翔くんはどんな感じ?』
翔、一瞬ためらう
翔 『営業の成績で1位になって、社長から美味しいフグ鍋をご馳走になったくらいかな』
美咲『何その、さりげない自慢!』
美咲『でも、本当に凄いじゃん!一年前まで、毎日辞めたいやめたいって言ってたのに』
美咲『変わったんだね』
机の上には今月の営業成績の順位の紙が置いてある。
翔の名前は30位中27位の所に書いてある。
翔 『お互い順調そうで良かったね』
翔 『お互いが大人になろって言って別れてから一年経つけど、あの時の選択はあってたのかもね』
美咲『そうかもね』
美咲『付き合ってたときはお互いに甘かったし、依存してたし、二人で毎日一緒に入れるだけで幸せだって思ってたっけ』
美咲『って、今更話すことじゃないか』
翔『つまりお互い成長できて『win-win』って事でおーけー?』
美咲『win-winは違うと思うけど…』
美咲『相変わらずおばか?笑』
翔、たばこに火をつける
翔 『そういえば、付き合ってた時さ、毎年誕生日にやってた事覚えてる?』
2015年 2月22日 4時55分
翔と美咲、公園のベンチでおでんを食べている
翔『もう少しで始発の時間かぁ〜 どうする?今日はひとまず家に帰る?』
美咲、大根を口に頬張りながら
美咲『翔くんち行っちゃだめなの?』
翔 『俺んちは無理無理!本当に家汚いから今度にしよ』
美咲『ふーん 意外とチキンなんだ』
翔 『付き合って初日から家は、そこらへんの大学生と一緒にされそうで嫌なんだよ』
美咲『ふーーん まぁ良いけど〜』
無言の時間が少しの間続く
翔、突然立ち上がり
翔 『そうだ!始発までまだ時間あるし、朝日でも見に行かない?近くにあるなっがーーい階段の上から綺麗に見れるんだよ』
美咲『朝日?朝日なんて初日の出くらいしか興味ないけど…まぁせっかくだしいいよ!』
翔 『朝日は男のロマンだぜ美咲ちゃんよ、朝早く起きて、朝日見てる自分に酔うのが良いんだよ』
美咲『(苦笑いで)私はそのロマン知らなくていいかな』
翔 『じゃあ行きますか』
翔、美咲の手を掴む。
美咲、翔の手を握り返す。
2015年 2月22日 5時40分
階段を登っている美咲と翔
美咲『この階段長すぎだよ〜 もう無理〜』
翔 『もう少しだから頑張って!』
翔 『よし、到着〜』
美咲、階段上からの景色を見て唖然とする。
美咲『なにここ、景色めっちゃいいじゃん!』
翔 『だろ〜 唯一自慢できるオススメスポットですから』
美咲『(うきうきしながら)日の出もうすぐかな?』
翔 『どうだろ、時間的にはもう少しだと思うんだけどな』
数分待っていると朝日が少し出てくる。
美咲『あっ、ちょっと出てきた!早くちゃんと見せて朝日ちゃん!頑張れ朝日ちゃん!ほら翔くんも応援して!』
翔『フレーフレーあっさっひ!頑張れ頑張れあっさっひ!』
美咲『応援の仕方ダサすぎて、朝日ちゃん隠れちゃうよ』
徐々に朝日が雲に隠れる
美咲『あっー、翔くんの応援のせいでほんとに隠れちゃったじゃんか』
翔 『くそ…俺のパワーがまだ足りなかったか…』
美咲『あーあ… 見たかったなぁ』
翔 『じゃあ、来年も同じ日に朝日見に行こうよ』
美咲『そんときも見れなかったら?』
翔 『見れるまで続けよ』
美咲『毎年見れなかったらうけるね』
翔 『さすがにそれはないでしょ』
美咲『それはどうかな〜 まっとりあえず今日は帰りますか!』
翔 『俺ももう眠さ限界だよ』
美咲『では、翔くんの家にレッツゴー』
美咲、走って階段を駆け降りていく
翔 『だから俺んちはだめだってーーー!』
2021年 2月22日 2時30分
美咲『あれでしょ、朝日一回も見れてない問題』
翔 『そうそう、5年連続で見れないとか本当に運なかったよな』
美咲『一回くらい見たかったなぁ』
翔 『一回くらいみせたかったなぁ』
既読が付くが美咲から返事は来ない
2021年 2月22日 3時27分
翔『美咲もう寝たのかな、俺もそろそろ寝るか』
翔、スーツのままベットに入り美咲との写真を眺めている。
翔 『やっぱり言うだけ言ってみるか』
美咲のLINE開く
翔 『ちなみに今年は晴れるらしいよ』
翔、頭を書きながら
翔 『あー、やっぱ恥ずいこと送ってしまったー!』
翔『ここまで来たら、この勢いで言ってみるか…』
美咲のLINE開く
翔『もし良かったら、今から見に行ってみる?』
2021年 2月22日 4時27分
美咲のラインを何度も確認するが既読も付かない
翔『もう寝たのかな、こんな時間だもんな』
翔『俺一人でも朝日行ってみるか』
翔、星型のネックレスを着け、部屋を出る。
2021年2月22日 5時20分
翔、セブンで買ったおでんの大根を頬張りながら階段に座っている。
翔『ほんと冷えるな今日』
美咲のLINEを開くが既読は未だ付かない。
2021年2月22日 5時35分
翔、スマホで日の出の時間を調べている
翔『あと、5分か…』
2021年2月22日 5時40分
朝日が徐々に出てくる。
翔『本当に今年は晴れるんだな、ほんと皮肉な朝日ちゃんだな』
朝日が登りきりギラギラと輝いて翔を照らしている。
翔『綺麗だなぁほんと』
翔『美咲にも見せてやりたかったなぁ』
翔『男はこうやって後悔し続ける生き物なのかねぇ』
翔、最後の大根を食べ立ち上がる
翔『帰るか…』
?『おーいおーい!翔くん聞こえる〜?』
遠くから聞き馴染みのある声が聴こえる。
翔『美咲?』
翔、美咲の方に走り寄る。
美咲『ストッーーープ!それ以上近づいたらだめだよ!』
翔と美咲の距離は10メートルほど離れている
翔 『(大きな声で)なんでここにいるのさ!』
美咲『あさひー!見に来たーー!』
翔 『来てたなら一緒に見ればよかったじゃん』
美咲『もう付き合ってないから、去年ここで別れたんだよ!翔くんバカだから忘れちゃった?』
翔、一歩美咲に近づく
翔『じゃあ、また付き合えば良いじゃん!今の俺達なら上手くやれるよ!もう俺達大人になったろ?』
美咲、一歩下がる
美咲『1つ翔くんに謝らないと行けないことがありまーーす』
美咲『私、実は… 仕事上手くなんかいってません! 他にも、毎日毎日嫌なことばっかで今にでも逃げ出したい毎日を過ごしています!』
翔、一歩進む
翔『そしたら俺も美咲に謝らないといけないことがありまーす!』
翔『俺だって、営業の成績ほぼ最下位だし、後輩にはバカにされてるし、毎日酒飲んで愚痴言って生きてます!』
翔『それでも、大人になろうって二人で約束したから、もがきながらも大人になろうとしてるよ』
美咲『私だって、別れる時に大人になろって言ったのを守る為に今必死に大人になろうとしてるよ!』
翔と美咲、一歩近づく。
翔&美咲『結局大人ってなんだよ』
二人とも笑っている。
美咲『じゃあさ、朝日に向かってお互いの目標を叫んでさ、その目標をお互いが達成したときに、一緒に朝日を見るってのはどう?ロマンチストでしょ私』
翔『良いじゃん、やろう』
翔『じゃあ俺から!』
『営業の成績で本当に一番になって社長にふぐ鍋ごちそうしてもらう!』
美咲『じゃあ私の番ね』
『私は嫌なことは嫌ってはっきり上司に言う!そんで、部屋の掃除こまめにする!』
翔 『部屋の掃除いる?』
美咲『私からしたら大事なことなの』
二人、笑い合う。
二人、反対の方を向く
翔 『じゃあ、またいつか』
美咲『じゃあ、またいつか』
美咲と翔、お互い違う方向に歩いてく
美咲の首元で星型のネックレスが揺れている。
2022年2月22日 5時40分
翔、朝日の見える階段で大根を食べている
翔『昨日のふぐ鍋うまくなかったなぁ… セブンの大根のほうがよっぽどうまいわ』
朝日が徐々に出てくる。
階段の下のほうから髪が伸びてより綺麗になった、美咲が登ってくる。
美咲『こんにちわ、アラサーおじさん』
翔 『こんにちわ、アラサーおばさん』
朝日が二人を照らしている。
二人の首元で星型のネックレスが揺れている
翔 『やっと見れたね』
美咲、微笑みながら
美咲『人生で一番綺麗な朝日かも』
翔と美咲、朝日を見ながら二人でセブンの大根を食べている。