見出し画像

3、致死率100%の生

 【99匹のうちの1匹】

心躍ることがある。

ヒトという生物は、死ぬということ。

ぼくらの、普遍と恐怖と不変が、あわさっている。母体の中のような安心感があるのは、それが、胎児の記憶だからだろうか。いつの間にか埋め込まれた、当たり前への恐怖が、どこからかモリモリやってくる時、ぼくは本当は安心しなきゃいけない。涙が出てくるのを、不安だとかストレスだとか、そんなもので片付けたくない。一生分の涙でお湯が沸かせること。自分が特別だなんて妄想でにやついていられるほど、子どもじゃなかった。子どもだと、誰も思わない。思ってくれない。いつまでも人間は人間のまま赤ちゃんなのに、
(逆にどこまで遡っても人間は人間だし、
赤ちゃんだって人間なのだ)
それをヒトは認めない。

そんなことが悲しくなって、「悲しい」と言ったらぼくは「それな」が欲しい。
同情より同調の方が、すきだ。
共感なんてできるわけないのに、
した気になって、夜の海にダイブする。
安心する。

夜の海は、ぼくらを胎児に戻す。
精一杯の愚騃を集めて。


明日の夜、浜辺にて。