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空寝ひつじ
2021年12月18日 19:48
はじめに戦前から戦後にかけてできた、“大衆”や“我々”といった羊の群れのような概念がある。そこからこぼれ落ちてしまったその一匹は、群れに溶け込めず、怠惰な生を続けるには文学に縋るしかなかったと思う。文学は異端者を受け止めてくれる。どんな人間でも、変幻自在に受け入れてくれる。そう思う。令和。僕は異端ではなかった。別に、ごく普通の、よくいる、いい感じの家庭で生まれ育って、そこそこ
2021年12月31日 20:02
【99匹のうちの1匹】一度僕が死んだとして、それは正常でいわゆる正義なのだと思った。悲しいのも、さみしいのも、全部、死人のものじゃなかった。感情を抱えるのは現世の特権。死んでゆく夜を捕まえて、お前はまだ死ぬなと叫んだ日、代わりに僕が少しずつ死んでいるような気がして、だんだん、だんだん、季節の狭間の溝に、浸かっていった。僕がこのまま夜に浸かって消えて無くなってしまっても、僕は僕のことを
2022年1月14日 22:26
【99匹のうちの1匹】心躍ることがある。ヒトという生物は、死ぬということ。ぼくらの、普遍と恐怖と不変が、あわさっている。母体の中のような安心感があるのは、それが、胎児の記憶だからだろうか。いつの間にか埋め込まれた、当たり前への恐怖が、どこからかモリモリやってくる時、ぼくは本当は安心しなきゃいけない。涙が出てくるのを、不安だとかストレスだとか、そんなもので片付けたくない。一生分の涙でお
2023年7月26日 15:02
99匹のうちの1匹きみの明日が素晴らしいものになれば、それは僕の自由とイコールで、回り続ける東西の輪が、明日を連れてくる。文字を知らない回転木馬。夢だけを見て、僕の正気を疑った。ここには何もないことを、何も考えていない無機質な無意識が蔓延っているだけなことを、ハイヒールの裏側に隠している。踏み潰している。頭蓋骨を、何もないと踏み潰している。きみは素晴らしいと言う代わりに、踏み